第23話 自縛電波節
ひとを怨むにゃ元手は要らぬ 舌打ち一つあればよい
日がな一日妄想するのは あの手この手の仕置きの筋書き
怨み晴らすは天下の大儀 怨みもろとも皿まで喰らい
皮ひん剥いて塩擦り込んで 真綿で絞めて生かさず殺さず
のたうち回る相手を眺め 大丈夫? と差しのべた手は
さかむけあかぎれ復讐鬼
儚い命を量りにかけて 与えた痛苦と受けた痛苦が
いってこいなら万々歳の 天寿を全うした鬼の
屍のある四畳半
大家は面倒臭がって 葬儀も出さず寺送り
寺でも万事面倒で 医師に告げずに無縁墓
迷惑かけてかけられて 旅の終りの無縁墓
死に水取りに来ましたと 遅れてきたのは引き籠り
よくは知らない甥一人
「全て世間が悪いのだ 伯父尊の怨みはきっちりと 俺が受け継ぎ晴らしょうぞ」
菩提弔う甥の手を 血がポタポタと滴れば
墓石赤く染め上げて 二代目襲名復讐鬼
生者と死者の怨みなら 恐ろしいのはどちらでしょ
死者の怨みを受け継いだ 代理の怨みはどうでしょう
死んだ伯父貴にかこつけて 高い利のつく怨みを借りて
怨みに縋り生きようと 決めた男の怨み節
怨まれこそすれ怨むのは ケダモノ以下と修身し
この理不尽な復讐を この身一つで受け止めて
鬼が死んだと聞いた時 喜んだのは束の間で
死んだ男に甥がいて 弐代目襲名したという
目眩耳鳴り息切れ動悸 関節痛に総白髪
目には目をだ、と 白髪鬼
怨み買わずに生きるのが 所詮叶わぬ世界なら
怨みを晴らす側になり あらん限りの知恵絞り
相手の破滅を生き甲斐に 怨みつらみを太らせて
復讐の火に薪くべて 命を賭けて地べた這う
死者の怨みを受け継いで 買った怨みを貪って
復讐するは我にあり やられたらやりかえすのみ
カネと怨みは止めてはならぬ 世間はそれで動いてる
怨む相手があればこそ 生きる甲斐ある生なれど
得体の知れぬ怨み受け 生きるこの世は地獄なり
受けた怨みを怨んで怨み 晴らした怨みにまた怨まれる
回る因果の怨み節
回る因果の怨み節
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