裏の気持ちから始まる恋

雨宮夏姫

第1話 私と夏姫

 白色の新築の家から出て私は近所の公立高校に向かってた。高校は家から歩いて行ける距離だ。自分が住んでる住宅街の先に位置している。今日は春にしては寒い、三寒四温だっけ?暖かな日差しがあたるなか、前方から肌に突き刺ささるような緊張感がただよう風が吹いてきた。今日は新二年になる私のクラスが決まる日、始業式だ。はっきりって今は不安と緊張に押しつぶれそうな心境で、顔は徹夜した後のようなただれた顔だ。


 そうこうしてるうちに校門についた。校門の前には少し時間が遅いということもあり人の数は少ない。校門から昇降口までは一本道となっていてだいたい50メーターぐらいの桜並木になっており、満面に咲いてるが気にもせずにずかずか進んでく。それほど焦ってるということだ。ぎこちなく緊張した歩きで進んでいき、ただれた顔がさらに不機嫌そうになっている。


「おはよー」


「何組だったー?」


「お!一緒じゃん、最悪ー」


 なんて会話が聞こえてくる。


 余計に不安がられた、外野は黙ってなさい!なんですかその「お!」のビックリマークは喜んでるじゃないですか!


 ……うらやましいなぁ


 なんて不安で荒ぶり、さっきまでの顔はもっとひどく暗くなり、首は小さな頭を支えることができずにいて、頭は首振り人形のようにだらしなく垂れさがってる。


 しばらく歩き大体25メーター当たりの地点で


「おはよーふーちゃん」


 と、明るく幼さを残した甘い声が。


 振り返るとそこには綺麗なウェーブがかかったブロンドの髪を肩まで伸ばし、前髪はセンター分けとなっていて、髪と同じ色をしたくりくりした垂れ目、服装はカッターシャツに赤のリボン、スカートはふんわりとした赤のサーキュラースカートになっているゆるふわ系癒しお姉さんがいた。


 少し右に傾きながら覗くように笑顔で挨拶してきた。あざといやつめ、私はこれが計算だと知ってる。


 名前は姫坂夏姫、私とは正反対の人気者。


 ちなみに私の名前は大原まふゆ、髪は姫カットのロングで黒、あまりしゃべることが得意ではない。いやむしろ苦手か、、というか友達は夏姫しかいない。

 まぁそんなありきたりなモブ少女。悪目立ちはしてないと思う、多分。


 それから横に並び並走する。


「おはよ」


 そっけなく返す。


「元気ないねー?クラス替えが心配なのかなー?」


 煽るような口調で言ってくる。図星だ。


「そうよ」


 またそっけなく返す。


「そっかー私となれるか心配なんだー?」


 また煽るような口調だ。分かりきったことを言ってくる。本当に失礼で相手の心に踏み込んでくる。


「まぁ別にそこまで心配じゃないけど」


 これは強がり、どうせ煽られるとわかってるから。悔しいが夏姫と同じクラスになりたいと強く希望してる。


「そっかー私はふーちゃんと一緒がいいなー」


 すごく思わせぶりに言ってきた。どうせ計算だろう。だってこいつの交友関係は計り知れないから。いっつも取り巻きさんたちに囲まれ、確実に陽キャグループのトップ。にもかかわらず誰にでも優しくできるのでクラス全員からも好かれている。そんな奴が陰キャぼっちと同じクラスになりたいなんてねぇー、

 流石に私は卑屈すぎるだろうか?


「はいはい」


 また軽くあしらう。


「もう!いつになったら私にデレルのよ!」


 ちょっと頬を赤らめながら言う。


 なに赤くしてんの、かわいい くそ、しかし私が人にデレルるか、ない。

 第一こいつにはいつも取り巻きがいてちやほやされてるだろう、そういえば女子にも告白されてたっけ、あとはペットにしてくださいとか。

 意味は分かんなかったけど。

 そしてなによりとは好きな人に対しての行動だという、なのでそれはない。私は夏姫は友達としていたいと思ってる。


「夏姫がもっと私を甘やかしてくれたらね」


 実は私は意外にも甘えん坊だと自覚がある。長年友達がいず、親も共働きで仕事に明け暮れていた。しゃべり相手がいず、家に帰っても「おかえり」を言うのは最近口をきいてくれない中学3年の妹しかいない。ご飯は作り置きすらないし、大抵自炊だ。そのおかげで女子高生の中では料理はできる人だとは思う。まぁふるまう人がいないから誇ることはないが、、、


「もうそんなかわいい事いってー」


 頬を緩ませ、真っ白なお餅にチークを塗ったような顔をしてくる。それはいい意味で幼児退行したような、それでいてあまり人には見せないような雰囲気だ。


「かわいい?」


 え?なんなのこいつ?いつも人には見せない表情で、お姉さんに似つかない甘ロりのような表情で、しかし年相応の豊かな胸を誇示し、美人のせいか鼻孔をくすぐられるような感覚がほとばしる。


「うんかわいかわいい」


 かわいいか、人生で言われたのは初めてだな。

 めっちゃ嬉しい。もう大好きだわ夏姫。


 えへーー


 顔を上気させ、普段は冷たそーな顔をしてるのに対し、今は顔をホクホクさせてる。


 そんな私を見て、クスクス笑いながら私のだらけてる顔をスマホのカメラで連写してきた。


「くくく、こんなだらけた恥ずかしい顔の写真どうしよっかなー?私の友達ネットワークで拡散しよっかなー?(笑)」


 っつ!舐めてた、こいつはそういえばこういう

 タイプだった。

 私の人付き合いのなさを! くっ殺!


「ひどい!私の心をもてあそんで!」


「何言ってんだー?勝手にー」


「ひどい!初めてだったのに!」


「かわいいって言われんのが?そっか、、、、、ごめんね」


「なに可哀想な人を見るような目で!」


「そうだよな、今までだったもんな!」


 私は初めてできた友達だからか失うのが怖くて依存してしまってる。

 こんなこんな夏姫に!


 と、いつの間にか昇降口についたようだ。


 ええと、確か二年の昇降口は大きく三つに分かれて真ん中だったはず。

 お、あったあった。左の紙の一組から順に見てく。 夏姫は今はほかの友達を見つけてだべってる。 あ、私は4組だ。


 ん?夏姫がいない?見間違えかー。


 5分間探してもなかった。夏姫は……5組だった……


 ……終わった。


 絶望に浸りながら夏姫のもとに歩く。


 しかし何故かニヤニヤ顔で駆け寄ってきた。


「私たち違うクラスだったでしょ、どんまい!」


 なぜそれを、一緒にクラス替えの紙は見てないのに、


 するとスマホのライン画面を見せてきた。そこには私と夏姫のクラスのことについての会話がある。


「あんた最初からわかってて!!なによあの「そっかー私はふーちゃんと一緒がいいなー」って!」


 なおも顔をニヤニヤさせ


「残念だよ、でも私たちクラスは別でも友達だよ」


 私は一人で4組の教室に進んでいった。



 _________________________________

 夏姫side


 

「夏姫って大原さんのこといじりすぎじゃない?」


 陽キャのモブが言う。


「だって可愛すぎるんだもん、それに可愛い妹のように感じるんだよね、ほら!さっき撮った写真、っもうかわいすぎー!!」


 ゆるみきった顔を悲しそうな顔に変え夏姫が


「同じクラスになれなかったのはホントは悲しいよ」


 と、 そんなセリフは一人で行ったまふゆには聞こえなかった。














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