THE HEX

 巨大なトンネルを通ると大草原が広がっていた。という夢を見た。


 暗く長いトンネル内をひたすらに歩いている時は一体何の夢を見ているのか分からなかったが、ぽっかりと開く出口が現れた時にはようやく安心した。


 私は夢が夢であることを分かるタイプの人間なので、トンネルを抜けた草原に死に別れた彼が立っていてもああこれは夢だからと冷静になってしまう。


「また会いに行くよ」


 彼は笑顔を浮かべて呪いの言葉を吐いた。


 彼が現実に現れると、必ず死者が出る。


 それは私の知り合いに限定されるようで、警察には散々取り調べをされた。もはや担当の刑事とは顔見知りで、次に死ぬのではないかとさえ思う。


「今度は海を見に行こう」


 夢に彼が現れるのは死の予兆。


 開幕の合図であり、ドラマの始まり。


 それでも私は彼に別れを告げられない。




 翌日、予想どおり刑事の溺死体が砂浜に打ち上げられた。

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