スナイパー
頭を撃たれた。眼前の敵に気を取られていた隙に一発。すぐに視界は暗転し、ゲームオーバーの文字が白く浮かび上がる。
まただ。私はヘッドセットを乱暴に外し、再生される自キャラの死に様を見る。遠距離からの一撃、サイレンサー付きアサルトライフル。スコープも付けたフルカスタムのそれであの場にいた全員を狙撃しゲームを制したのは彼だった。
アマチュアのネトゲ賞レースにふらりと現れる彼に仕留められたのはこれで何度目だろうか。バトルロワイヤル形式のゲームや討伐系、空を駆ける戦闘機や格ゲーだったり。彼は私の前に立ちはだかり、あっさりと討ち滅ぼしていくのだ。
私は歴が長いだけのプレイヤーだが、各分野でそれなりに成績を残していた。そんな中、彗星のように現れた彼は私の得意なジャンルの頂点に足跡を残して行く。
なけなしのプライドもズタズタだ。
次の大会で勝てなかったら引退しよう。老いを理由に退くにはまだ早いけれど。心が折れる前に、まだゲームを好きでいられる内に辞めたい。
そしていつかきっと、世界的に有名になった彼の試合を見て現役時代を懐かしむようになる。そんな幕引きでいいじゃないか。
こんな私を昔から応援してくれているフォロワーに向けて、SNSで発信する。次負けたら引退します。引き止めてくれる声に涙が出た。
「辞めさせませんよ」
もしも神様がいるのなら、私に何を望んでいるのだろう。
引退宣言をした次の大会は私が昔から続けているFPSサバイバルゲーム。自分でも良い花道だと思ったのに、ランダムで選ばれた相棒のプレイヤーの名を見て愕然とする。それはまごう事なく彼の名だった。
私の引退試合だということを知っているのだろう、彼は張り詰めた様子で口を開く。
「この大会、優勝したら引退しないんですよね?」
呆然とする私をよそに淡々と準備を整える彼に、「あんたのせいで引退します」と言ってやる機を逃してしまった。
「勝ちますよ」「なんで?」
私の精一杯の問いかけに、彼はさも当たり前のような表情をして答えた。
「あんたを目指してやってきたんで。勝手に居なくなられたら困ります」
結局引退しそこねて、インタビューで勝手に相棒宣言をする彼には多分一生勝てないのだろう。
(『君は晩夏のスナイパー』の改稿前です)
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