第25話 仲里 紗綾1

 午後の最後の授業中、私は凛のことを考えていた。


 早く会いたいなぁ……。


 あとはこの授業が終われば、凛のところに行ける。

 お家でも一緒にいて、学校でも一緒にいたいって思うなんて凛にゾッコン過ぎかな? とも思う。

 でも今は、すごく凛にくっついていたい。


 確かにお昼休みに私がしたことは、あの男子たちに見せつけるような行為だった。

 今思うと、あれはあまりいいことだったとは思えない。


 でもでも、あの男子たちだって悪いと思う!

 私たちが一緒にいるのを止めろなんて酷い。


 凛は悪いことなんてしていなかった。

 でも凛は、あの男子たちのことも考えて謝ってた。


 あの大人な対応はなに?

 あれもレストランで身につけたもの?

 謝る行為が格好良く見えるなんて、なんかすごくない?

 格好良過ぎるよ。


 それに、私にくっつかれるのがイヤってわけじゃないって言ってた凛……。

 ちょっと恥ずかしがりながら言ってた。


 大人な対応をしたすぐあとのあのギャップは反則過ぎるよ。

 胸がキュンキュンしちゃって、頭が真っ白になっちゃった。

 あんなの見ちゃったら、私じゃなくってもキュンキュンしちゃうんじゃないかな?


 ん? もしかして、それってピンチ?

 他の女の子も凛の格好良さに気づいちゃって、アプローチかけちゃわない?

 ダメ! それはダメよ!


 もし、凛のタイプの女の子がアプローチしてきたらどうしよう……。

 私は……私は凛のタイプだよね?

 うん。あのエッチな本のときに、私のことタイプだって言ってた!



 自分の腕や脚、ウェストや胸を確認。



 うん。スタイルだって悪くはないし、胸だってそれなりにある。

 世の中もっと胸の大きな人もいるけど……。

 凛はどのくらいの大きさの胸が好きなのかな?

 もしかして、もっと大きい女の子のほうがタイプだったりするのかな?

 だ、大丈夫よ!

 もしそうだったとしても、まだ大きくなる可能性だってあるし。

 まだ少し硬さが残ってる段階だから、成長は止まってないはず。


 早く授業終わらないかなぁ……。

 こんなときにどうして明日から二日間も撮影なんてあるの?

 嫌だなぁ……。



 授業そっちのけで考えことをしていたら、いつの間にか時間は過ぎていて放課後になった。



「紗綾? 明日から撮影なんだよね? 今日このあとどうするの? またご執心の年下くん?」


「うん、さっきの凛は本当に格好良かったの。

 もう胸がキュンキュンしちゃって、思わず抱きついちゃった」


「ねぇ? 今度その年下くんも一緒に、みんなでお茶でもしようよ?

 紗綾がそんなに乙女になっちゃってる年下くん、私も興味あるし」


「ん~、考えとく。じゃね」



 そう言い残して私は凛のクラスに向かう。

 三年生の廊下を進むと、他のクラスの女子たちから挨拶がくる。

 男子は私を見てくるだけで、声をかけてくることは殆どない。


 男子の視線でそのことに気づいた。


 あっ。凛に早く会いたくてちょっと走っちゃってた。

 胸があるのはいいんだけど、ちょっと走ると揺れちゃうのがなぁ……。


 早歩きくらいにスピードを落として、階段を降りると二年生のフロアに着く。

 二年生にお友達はいないから、殆ど話しかけられるようなことはない。

 でもモデルをやっていることは知っている人が多いみたいだから、視線はけっこう向けられる。

 凛のクラスの扉から見ると、凛が帰りの支度をしているのが見えた。

 ドクン……。


 さっきのことがあったからかな。

 見ただけでドキドキしちゃうっ。


 周りに視線を移してみると、けっこう女の子がチラチラと凛を見ているような気がする。

 なんか凛のことを意識しているように見えちゃうのは、私が凛にゾッコンになっちゃってるから?


 正しく客観的に見れてるかが自分でもわからない。

 わからないものはしょうがないから、私は考えるのを止めて凛のところに行った。



「凛」


「あ、紗綾」



 凛が私のことに気づいて視線を向けてくる。

 あ、今一瞬胸に目がいった。凜も男子だもんね。

 でも昨日凛は私の胸触ったのに、それでも目がいっちゃうんだね。

 でもなんか、そんな凜も可愛いかも。



「凛、一緒に帰ろ」


「はい。じゃぁ行きましょうか」

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