第10話

「はぁー、長かった…

安請け合いすんじゃなかったぜ。」


やっと山が無くなり大量のお菓子やご飯やアクセサリーに囲まれる私達


「取り敢えず食べよ!ランも遠慮せず食べて!」


私と骸から少し離れた所で様子を見ていた骸を呼ぶと

ススッとこちらに来て私の横…というか骸の横に座る。

定位置である、骸の膝の上に居るから…


「うまっ!」


「…こんな美味しいの初めて食べた」


ボソッとランが呟き嬉しそうにまた手を伸ばす姿を見てホッとした。


「なぁ、姫様ー。

姫様はどこに行きたい?

あの国に帰りたい?」


あの国…その言葉にビクッと体が反応した

フルフルと首を横に振る


帰りたくない。

もう、私の居場所が無いあの場所には


「そかそか。

俺は姫様とずーっと一緒だから何も怖くないよ。

姫様の居場所は俺の腕の中だからね」


思い出して泣きそうになる私を後ろからぎゅーっと抱き締める骸。


「…っ」


「姫様がここに居たいなら俺もここに居るし

他の場所を見たいって言うなら俺が連れてっちゃる。

姫様の願いは俺が全部叶えてあげる。

だから、俺に姫様の願い教えて?」


俯く私の頭に顔をのせ優しく言う骸。

いつも…骸は優しい。

甘く囁いて私をトロトロにとかすの。


「私は…色んな世界を…見てみたい…

だけどっ、怖い。あんな目を向けられるのがっ…怖いっ」


「なら、俺が姫様の願い叶えちゃる。

姫様はなぁんにも怖がる必要は無いよ。

姫様を傷つける奴はぜーんぶ俺達が壊してあげるから。ね?」


私の涙を舐めとりニヤァっと不敵に笑う骸。


「あのね、骸にお願いがあるの。

ランさえ良ければ…ランも連れていきたい

彼が居なきゃ私今頃死んでた。

それに、ランにも青空を見せてあげたいの」


「…っ!?」


ランが驚いた顔をして私を見た


「お前たちだけで…行け。

俺が居れば…青空なんて見せてやれねぇ」


悲しげに俯くラン。


「正直コイツは俺にとってどうでもいいけど

姫様からのお願いなら叶えてやらん訳にはいかんでしょっ!

姫様俺に任せとけ!」


ぎゅっと私を強く抱き締める骸

私は、骸に向き合うように体の向きを変えて骸を強く抱きしめる。


ランを置いて行けない。

あんな悲しい目を見てしまった。

私は偽善者なのかもしれないけど

それでも、彼に青空を見せてあげたい。

世界にある綺麗なものを…見せてあげたい。


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