5/27 「棒 オンライン-2」
森で拾った、いい感じの木の棒――。
少年心を持っている、あるいは持ったことがある人間ならば、その魅力を滔々と語ることができるだろう。長さ、太さ、重さ、材質、形……様々な要素が絶妙に噛み合わさったとき、それは個々人にとっての
『棒 オンライン』(略称:ボイン)はそんな少年心を燻ることを目的として作られた、いい感じの木の棒で戦うアクションゲームである。
『棒 オンライン』のレート戦は、基本的に一回の対戦を「探索フェイズ」と「戦闘フェイズ」の2パートで構成されている。「探索フェイズ」では森の中で展開され、制限時間の中で各々が求めるいい感じの木の棒を入手することが目標となる。そしてその後の「戦闘フェイズ」にて、その拾ったいい感じの木の棒を武器としてバトルするのだ。
「これは――
鳥がさえずる深緑の森、ブナの折れ枝を拾ったNagiはステータスを瞬時に判断して投げ捨てる。
探索フェイズの森は、実世界の尺度にして500m×500mという面積で対戦ごとに生成される。しかしそれを行うAIのバイアス上多少なりのパターンというものがみられ、上位プレイヤー同士の戦いでは生成マップの迅速な把握が勝負を握っているのだ。
樹木に関しても種類だけで50種類が存在し、さらに同種の木であっても幼木・成木・老木がそれぞれ3パターン用意されている。樹種はそれぞれのプレイスタイルに、木の生育・パターン差はドロップする木の棒の排出率に影響する。
Nagiが得意とするのは細く適度な長さをもったブナの木、一撃の火力より手数で相手を打ち倒すスタイルだ。ゆえに彼女はマップを把握するやいなや、北にあるブナ林へと移動していた。
「これは……まぁ
Nagiはそれなりにいい感じの棒をリザーブに加える。
本作での木の棒は「長さ」「太さ」「重さ」から算出されるステータスと、「美しさ」から算出される加護レベルが存在する。加護というのは、本作の世界観が大きく関わってくるポイントだ。
金属資源の貴重な世界、人類は森の精霊との共生によって豊かな暮らしを手に入れていた。しかし突如、魔界より魔族達が現れ、森林を伐採し巨大なリゾートホテルを建てようと侵略してくる。人間は森を守るため精霊と結託し、その加護をいい感じの木の棒に受けて立ち向かうことにした――というのがおおまかなあらすじだ。その辺はストーリーモードに詳しいし、なんなら対戦モードでは魔族の魔の字も出てこない。
閑話休題。加護を受ける精霊というのも個人で選択するもので、精霊により加護の得意な樹種、不得意な樹種がある。Nagiが契約している精霊は、そのプレイスタイルに合わせたブナ一点特化型の精霊だった。
Nagi――モニターを見つめる草薙は、その画面の隅にきらりと輝く何かを感じた。トッププレイヤーとしての勘が、Nagiをそこに突き動かす。
そこに落ちていた木の棒を、Nagiは拾う。
そのステータスを開いた瞬間、草薙は目を見開いた。
「こ、これはっ! バリ勃ち精通前カリ高ァ!!!」
※バリ勃ち:草薙だけが使う用語。太さ長さも申し分ないことながら、見事に真っ直ぐな枝ぶりであることを指す。
※精通前:草薙だけが使う用語。落枝後の経過時間が少なく、耐久値が理想値かそれに近しいことを指す。
※カリ高:草薙だけが使う用語。美しさのステータスが高く、加護が強いことを指す。
期待以上のイチモツに思わずガッツポーズをする草薙。
時間に余裕を持って望ましい木の棒を手に入れた彼女は、探索フェイズ終了までTwitterでショタのエロ画像を漁って待つことにした。
〈続く〉
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