第6話 未来を変える力
「鬼ごっこしようぜ。豚野郎。お前が鬼な。」
ハルタは花豚に伝わるはずのない安い挑発をし、走りだす。
それに気を取られた花豚は計画通りハルタを追い始める。
「っ!結構速いな。」
体が軽くなり、速さも上がったハルタについて行ける程の速さだった。ハルタが体力切れで倒れるか、花豚が先に倒れるかの賭けだ。
「こうなったら、ハルタの為に早く倒しましょう!」
「…………はい。そうですね!」
アリルは花豚に向かって手を伸ばし、炎を飛ばす。
エレナは杖を構え、魔法を唱える。
「フラ・ブレイ!!」
アリルの炎。エレナの風の刃が花豚を襲うが、特に反応を変えず、今もハルタを追う。
「くそっ!ギリギリの賭けだが、俺も走りながら戦うか!」
そう言い、ハルタは火と闇のマジックリングを使用する。
すると、花豚の下に闇の沼が現れ、周りには炎が覆い尽くす。
これは以前ハルタが考えたマジックリングの組み合わせ技。ハルタはこれを『インフェルノパルス』と名付けていた。
ほんの少し、花豚の足を遅くする事に成功したが、すぐにインフェルノパルスを抜け出し、ハルタを追跡する。
「……やっぱり、こういうやばい奴にはあんま通用しないか………っ!」
息を切らしながらも、走り続け、次の技を考える。
「アル・ドライド!!」
アリルは大きな火の球を花豚にぶつけ、エレナは弓を構える。
「はっ!!」
エレナは矢に風の魔法を纏わせて放つと、神速の勢いで飛び、花豚の右目を貫いた。
『ッ–––––––––!!!』
流石に今の攻撃は聞いたらしく、花豚は足を止め、吠え始める。
それを逃さず、三人は一気に攻撃を始め、追い詰めたとそう思っていた。
「––––––まずい!」
花豚はハルタからアリル達がいる馬車へと体を向け変えたのだ。
頭が足りなかった。自分を傷つける者が現れたんだ。先にそっちを排除するのが当然だろっ!
「逃げろっ!!」
ハルタは叫ぶがその声は二人には届かない。
「ドーラ!ドーラ!ドーラッ!!」
何度も魔法を唱え、走り続ける。
そのおかげもあって花豚を追い越す事に成功し、ハルタは前に立ちはだかる。
「例え死んでも、俺がお前らを守るっ!!」
闇のマジックリングを何度も使い、花豚の足止めをする。だが、花豚は止まらず、とうとう花豚はハルタの目の前に立つ。
「ひっ。」
死を覚悟していたはずなのに、こうして前に立たれると恐怖で声が漏れてしまう。
結局は死ぬのが怖い。
『ッ––––––!!』
花豚は雄叫びを上げ、ハルタを押し潰そうとしたその時。
「フラ・ジレイド」
どこからか声が聞こえた。その声は聴き馴染みがあり、それと何故か懐かしく感じた。
その瞬間、花豚はバラバラに斬り刻まれ、地面に落ちる。それを間近に見たハルタは吐き気を覚え、再び胃液をぶちまける。
「––––––ぶっ、な、何とかなったのか?」
辺りを見渡す。どこかに声の正体があるはずだと、ハルタは考えた。
だが、声の正体は見つからなかった。
「ハルタ!」「ハルタ君!」
アリルとエレナがハルタのもとに駆けつけ、手を握る。
二人とも手が震えていた。
「怖かった……っ。ハルタが死んでしまうんじゃないかって。」
「そうですよ……っ。例え、以前みたいにハルタ君が回復するからって傷ついていいいわけじゃないんですよ?」
「ご、ごめん。」
自然と謝罪の言葉が出た。ハルタ自身も、簡単に命を投げ出す事にどこかで罪悪感があったのだろう。
「でもこれで……。未来は変わったんだ。」
だが、これは俺の力じゃない。
どこかの誰かのおかげで、未来は変わったんだ。
その人に未来を変えれるほどの力があった。
結局俺は何も出来なかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます