第7話 彼女なりの優しさ

「どうしてハルタ君は魔獣駆除に?」


 目的地へ向かっている最中、エレナが突如聞いてきた。


「そうだな。俺も気になる。」


 エレナの問いにトレイタも乗っかって聞いてくる。

 ハルタは勢いあるトレイタに苦笑しながら話をする。


「俺、とある事情があってアリルって言う貴族の屋敷で居候させてもらってるんだけど………。」

「アリル………?」

「どうした?トレイタ。」


 ハルタが話している途中、トレイタの今の顔は、驚きを隠せていないと誰もが見たらそう思うような顔をしていた。


「いや……あの噂の貴族だよな?」

「天才貴族様……。」


 エレナが小さく呟くと、ハルタは苦い表情を作る。


「貴族だけじゃなく、みんなにも広まってんのかよ……。その呼び方。」

「俺達一般人は尊敬の念を抱く人がほとんどだけど、一部の貴族達がこの呼び方を広めたんだ。」

「そうなのか………。」


 歯をくいしばり、怒りが溢れないように堪える。こいつらは悪くない。悪いのは嫌味な貴族達だ。


「––––話の途中だったよな。手伝いをしているかわりに住ませてもらってるんだけど、何か買う時はアリルのお金から出すんだ。いつまでもアリルに頼ってばかりじゃいられないって事で魔獣駆除という形で金を稼ぎに来たんだ。まぁ、頼りないけどな。」


 ハルタは苦笑し、経緯を話し終える。


「それでも、何もしないより、行動しようとするのは良いと思いますよ。」

「まぁ、そうだな。例え頼りなくても、俺達がそれをカバーしてやるからよ。」

「みんな……ありがと。」

 

 嬉しさから、苦笑が照れ笑いに変わり、顔が少し熱くなる。

 初めての仲間がこいつらで良かったと心の底からそう思う。


「あっ、そうだ……。これを。」


 エレナはポケットから何かを取り出し、ハルタに渡す。

 それはクルミの殻のような物だった。


「剥いてみてください。」

「おう………。なんじゃこりゃ?」


 剥いてみると赤い実のような物が出てきた。


「力の実。これを食べると力が一時的に上がります。でも、副作用として、効果が切れるとしばらくは力が抜けるので、もしもの時に使ってください。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。」



 ハルタは力の実を受け取り、ポケットに入れ、エレナを見ると、柔らかい笑みを浮かべていた。


 俺が自虐的に頼りないって言ったのを気にしてこの実をくれたのか?

 もし、そうだったら優しいな。


 そんな彼女の優しさを感じながらも、ハルタ達は地図にある目的地へ向かう。

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