第12話 笑ってろ

「…………ここは?」


 アリルは目を開け、辺りを見渡す。


 さっきまでいた草原とは違い、よく知っている自分の部屋だった。


 日差しが窓から入り込み、ベッドを温める。


「おっ、起きたか。」


 目を横に向けると、そこには青年が座っていた。

 自分を認めてくれた大切な人。


「ハルタ……」


 青年の名を呼ぶと、彼は、「ん?」とだけ言い、微笑みかける。


「あれからどうなったの?」

「おお。それならあの兜野郎が無双して解決したよ。」

「そうなんだ。」


 一安心し、アリルはほっとする。

 そしてそれと同時に、気を失う前に見たあの剣がどうしても気になった。


 英剣エルド。ローランドの家系が持つ、受け継がれし剣。


「あの兜の人の名前は?」

「さぁ?聞く前にどっか行ったよ。」

「そうなんだ……。」


 アリルは一度深呼吸をした後、窓の外を眺める。


「私、どのくらい寝てた?」

「2日ぐらい。魔法の使いすぎだな。多分。」

「ごめんね。心配かけた?」

「心配じゃなかったと言えば嘘になるけど、きっと元気になるって信じてたよ。」


 青年は照れ笑いをしながら恥ずかしそうに語る。


「そ、そう。」


 それを聞いたアリルも恥ずかしくなり、俯く。


「まっ、これで一件落着だな。明日からは俺もバリバリ働くぜ。」


 腕の力瘤見せた後、パンパン叩く。


「うん。頼りにしてるね。」

「おう。任せろ。」


 青年はキッと笑う。それに釣られアリルも笑うと青年は微笑みながら「うんうん」と頷く。


「やっぱ君は笑顔が似合う。」

「えっ?」

「いつでも素敵だけど、笑顔の時がその中でズバ抜けて最高に素敵だ。」


 そう言いった後、大きく深呼吸し、青年–––ハルタは、


「だから、笑ってろ。」


 これまでで見た中で一番の笑顔でそう言った。




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