第2話 魔法

 同居の契約が成立した後、ハルタとアリルは大広間を通り、庭に来ていた。


「もうここまで来ると草原だな。」


 お金持ち屋敷の庭園。この一言で表せる広さで、綺麗に手入れもされていて時を忘れて見入ってしまいそうな光景だ。


 ハルタは一度深呼吸をした後、ゆっくり左腕を後ろに構えた後、一気に前に押し出すと同時に雄叫びを上げる。


「はああぁッ!!」


 当然何も起きるわけも無く静寂が訪れる。


「ど、どうしたの?」


 アリルは不思議そうにハルタを見つめる。


「んや、あの時のアリーみたいにド派手な演出とかあったら魔法とか出せんのかなっと。」

「そんなじゃでないわよ。」

「ですよね。わかってました。」


 ハルタはわざと「とほほ」と言いながらガッカリ肩を落とす。その様子にアリルは、


「魔法を使えるのはまだだけど属性をみてあげようか?」

「えっ!何!?属性!?見て見て!!」


 さっきとは打って変わり興奮した様子で迫りより、アリルは苦笑する。


「確か私の部屋に属性を検査出来る魔道具があったはずだからちょっと待ってて………」


 そう言って急ぎ足でアリルは中に戻って行く。




 そして5分後、庭に戻って来たアリルは虫眼鏡のような物を取り出す。


「なぁ、そもそも属性って何があるんだ?」

「ん。そう言えば記憶喪失で覚えて無かったんだっけ。」


 アリルは「おっほん」と咳払いをした後、話しを続ける。


「まず属性は火、水、地、風、光、闇、無の7属性があるの。………基本は1人1属性なんだけど稀に複数の属性を所持している人もいるの。」

「へー。アリーは何の属性はなんなの。」

「ん………」


 言いたくないような様子だったが、アリルは何かを決意した顔をし、言葉にする。


「水と火と風と地と光。」

「…………マジか。」


 ハルタは呆気に取られていると、アリルは申し訳なさそうに言葉にする。


「これが妬まれてる原因の一つなの……。」

「……?一つってまだあるのか?」

「ま、まぁ。」


 アリルは言いづらそうにしていた為、ハルタは本題に戻る。


「……それで俺の属性は?」

「あっ、ちょっと待って。」


 アリルは虫眼鏡の様な物を通してハルタを見つめる。


「やっぱ火か?燃えるような情熱の炎とか!?それとも闇か?全てを塗り潰す漆黒の闇……とか!?」

「うーん。無属性みたい。」

「む、無!?なんの個性も無いのか!?」


 期待を裏切られたハルタはガッカリするが、アリルは慌てて「違うの!」と言う。


「無属性はサポートに特化した属性でみんなから求められてるの!」

「そ、そう?」


 ハルタは涙目と上目遣いを合わせた男がやると気持ち悪い見つめ方でアリルを見る。


「う、うん。無属性って少ないからサポート出来る人が少なくて。」

「そ、そっか……。」


 涙を拭き、落ち着きを取り戻す為深呼吸をする。


「………それでどうやって魔法を使えるの?」

「基礎魔法ならイメージしながら魔法を唱えるだけで使えるけど。」

「ん。それで、基礎魔法ってのは?」

「確か無属性の基礎魔法は『ドーラ』だったはずだけど。」


 ドーラと言う聞き覚えのない単語にハルタは首を傾げる。


「そのドーラはどうイメージするんだ?」

「効果与えたい対象をイメージしながら魔法を唱える。自分にもできるよ。」

「そか。なら試しにやってみる。」


 ハルタは目を閉じ自分を顔をイメージする。


「よし、ドーラ!」


 魔法を唱え、数秒もかからない内にハルタの体に異変が。


「…………ん!?なんか体が軽い!!」


 飛んでみたり走って見たりするが、いつもの数倍、体の調子が優れていた。


「ドーラは体を軽くして跳躍力や走る速さとかを上げられる魔法なの。」

「へー、凄いなー!」


 ぴょんぴょん跳ねながらアリルの話を聞いていたハルタは一旦落ち着きを取り戻して、


「他に使えないのか?」

「ちょっと待って。これで何の魔法に適正があるか調べるから。」

「便利な魔道具だな。それ。」


 ただの虫眼鏡だと侮ってはいけない。魔道具の便利さにハルタも感心する。


「…………今のハルタが使える魔法はフィールだけね。」

「フィール?」

「うん。人によって誤差があるんだけど未来が観れる魔法なの。」

「未来を観る魔法!すげぇじゃん!!」


 未来を観る。ハルタの厨二ここに深く突き刺さり更に興奮が高まる。


「この魔法は確か……未来を観たいと強い意志を込めた状態で魔法を唱えれば発動出来たはず。」

「なるほど……」


 アリルの言う通りにする。


 未来を観たい。どんな未来でも、観てみたい……!


「–––––フィール」

 

 その瞬間、身体と意識は切り離され、身動き出来ない状態となり、映像が流れ込む。




 –––––俺は倒れていた。






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