第2話 復活の魔法

 あれ?俺。死んだのか?


 消えかけていた意識がはっきりとしていき、ハルタは遂に死んだのかと自覚する。


 だが、今の感覚により、ハルタは本当に死んだのか疑い始める。


 錆びた鉄のような匂いが、辺りに充満し、下には何か暖かい液体が広がっている。

 

 ハルタはゆっくりと目を開ける。


「あれっ?死んでない?」


 胸のポンポン触ってみる。だが。


「刺された傷が無い?」


 確かに心臓を刺された。その奇妙な感覚と激痛を味わったハルタはこれが勘違いだとは思えなかった。


「辺りは血も広がってるし…………うわああぁぁッッッ!!」


 自分の状況をまともに理解したハルタは絶叫する。


 血だ!俺の血だ!!………でもなんで俺は傷一つ無いんだ!?


 不可解な現象にハルタの頭がついていけず、なんとも言えない気持ち悪さがハルタを襲った。



「–––––生き返ったのか?」


 少し冷静になりたどり着いた結論がこれだった。

 心臓刺され、意識を失った。目が覚めると傷は無くなり痛みも無い。


ハルタは倒れたまま、力なく笑う。


「––––は、あははは。まさか、チート能力ってやつか?」


 ゆっくりと上半身のみを起こす。


「一度だけの復活か?それとも何度でも生き返れるのか?」


 辺りの血に慣れ、自分の能力を考え始める。


「何回でも復活できるか確認したいが、方法が死ぬしか無いとか、ハードだな。もし、一回きりだったらもうそこで俺の人生終了だし。」


 一度のみの蘇生能力か、それとも不死の能力か。

 どちらかわからないが、とりあえずハルタは体を起こし、深呼吸するが、血の匂いにむせる。


「–––––この景色に慣れてきた俺はサイコパスの可能性があるのか?」


 ハルタは血溜まりの中、深呼吸する自分に異常性を感じた。その事にため息をし、服を確認する。


「あれ?血がついてない?」


 ハルタの服は刺された時、血が滲んでいた。

 

「チート能力のおまけってやつか?」


 これはこれでありがたい。

 ハルタはもう一度、自分の血を見た後、急ぎ足でこの場から去る。




 人が多い道に出るとハルタはポケットにあったスマホを確認する。


「………あっ、よかった。これは無事だ。まじチート能力様々だな。」


 スマホは割れても無く、血で汚れてもいなかった。


「あぁ……俺的には異世界はコメディ展開が好きだったんだけど来て一時間も経たない内に一回死んだしな………シリアスは勘弁してほしいところなんだがな。」


 一人で呟きながら、道を歩く。


 ここに来てから独り言多くなったな。


 ハルタはそう思いながらも金を稼ぐ方法をさっきみたいに誰かに聞こうとした時。目の前にいた一人の女性に目が移る。


 綺麗な少女だった。


 美しい赤毛は腰まで伸ばし、肌は白い。そして何よりサファイアのような綺麗な瞳にハルタは目を奪われる。


「–––ちょっとそこお姉さん。」

「………何?」


 少し怯えた様子で少女はハルタを見つめる。


「俺、記憶喪失ってやつかわからんけど、何にも覚えて無くてよ……。更に無一文で今後の生活がまずいわけなんだ。悪いけど今すぐ金を稼げる方法知ってねーか?」


 ハルタはわざとらしく頭を掻き、記憶喪失を演じる。


「……魔獣駆除なら今すぐにでもお金を稼げるけどその格好じゃあ………。」


 少女はハルタの制服姿を見つめる。


「そうか。 …………まさかのホームレス生活か?」


 困ったハルタを見た少女は少しの間を開け、ポケットに手を突っ込む。


「一レラなら。」


 一レラ。日本円ど言うと10000円の価値がある金貨だ。

 

「そ、そんな大金貰えないよ!」

「でも困ってるみたいだし……」

「それはそうだけど……」


 受け取るべきか困っていた時。事態は急変する。




「ま、魔獣が町に現れた!!」


 住民の声が町に響き渡った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この世界の通貨


1メラ=1円

1セラ=100円

1ネラ=1000円

1レラ=10000円

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