第12話 シルヴィの動画

シルヴィの動画につけられたコメントは、以下のようなものだった。


「すげえ、エルフに次いで獣人だ!」

「いや、これは獣耳っていうだけで、獣人とは別物だ!」

「そんなことはどうでもいい。問題なのは、むちゃくちゃカワイイってことだ」

「この可愛さ……どん〇〇ねを越えた!」

「ショウ、どっからパクってきたんだ? 昨日のエルフもまだ元ネタ見つかってないよな?」

「みんな、ちょっと冷静になれ。昨日のは画像で、今回は動画なんだぞ! まずそこを騒げっ! いいか、動画なんだぞ。これ作るの、CGだとしても画像の100倍難しいぞ!」

「お前がいちばん落ち着け。パクリなら労力は大して変わらん」

「まあ、パクリは確実だな……ただ、どこの国の言葉か全くわからん」


 そう、今回は動画だったので、シルヴィの声がばっちり入っている。

 そして意外なことに、こちらに持ち込んだ動画を見ると、俺でも何をしゃべっているのかわからないのだ。

 どうやら、言葉が分かるのは向こうにいるとき限定らしい。


「でも、彼女、『ショウ』って言ってるように聞こえないか?」

「ああ、それはそう聞こえるし、口の形もそうなっているのが分かる。でも、単なる偶然だろう?」

「そんなことより、しっぽが動いてるぞ!」

「しっぽフリフリも可愛いぞっ!」

「これ、どうやっているんだ? CGじゃなきゃこんなスムーズな動き、無理だろ?」

「お前にはこれがCGに見えるのか?」

「なら、実写だっていうのか?」

「だから、ほんものの獣人だって!」

「耳としっぽが同時に動いてる……どんなカラクリなんだ? CGじゃなくて内部に制御装置含んでるだろ?」

「てゆーか、何のコスプレだ? 着てるの、作業着にしか見えんぞ!」

「昨日誰か、エルフがメイクを何もしていないって騒いでたけど、これもしてないなあ」

「それでもむちゃくちゃかわいい……昨日のエルフよりちょっと若いな。ってゆーか、パクリ元は同じなのか?」

「ショウはなんて言ってるんだ?」

「異世界訪問中としか書いてないし、コメントに返事もない」

「どこの国だ?」

「いや、だから……」


 ……想像通り、かなりパニくったようなコメントが続いている。

 これで今日撮影した、二人が一緒に弓矢や三本爪でスライムを蹂躙している動画をアップしたらどうなるだろう。


 しかももう一人、人間の女の子が登場し、殺人級の雷魔法を使っているシーンまで撮れているのだ。

 一応、ミクにも撮影の許可を取っていたし、この世界の他に人に見せることも知っているので問題ないが……今まで静止画と動画の違いはあっても、単独でしか出演していなかったのが、一気に三人の美少女が映っている……うーん、これは単なる異世界の日常風景を紹介するものではなくなってしまうなあ。


 あと一つ問題があって、トゥイッターに投稿するには、動画が長すぎる。

 そこで思い切って、「ミーチューブ」にアカウントを申請することにした。

 若干手続きが面倒臭いけど、人気が出れば広告収入も得られるらしい。


 トゥイッターがこれだけ反響を得てるのだ、誘導すればある程度見てくれる人はいるだろう。

 ただ、それで生活できるぐらい稼ごうと思ったら、100万再生ぐらいの動画を何本も上げないといけないわけで……。


 いくらあの三人が可愛くて、戦闘シーンが凄いといっても、同じ動画じゃすぐに飽きられるし、そもそもオリジナルか疑われている。


 彼女たちと冒険の旅に出て、異世界のいろんな珍しい景色や、亜人種があふれる街の様子なんかをアップすると、たとえパクリだと思われても見に来てくれる人はいるだろうし、それで人気となれば収入も得られて、トゥエルの期待にも応えられて、人気ミーチューバーになって、俺の本も売れて……。


 この時点で、俺の期待はMAXに高まっていた。


 翌朝、申請が通っていたので、早速その動画をミーチューブにアップした。

 まだ広告を入れられるほど人気ではないので、逆に言うとみんな気軽に見れるコンテンツとなっている。


 どんな反響になるかな……と期待しながら、この日はシルヴィが近くの遺跡を案内してくれるということだったので、簡単なサバイバル用品をリュックに詰めて、また異世界へのゲートをくぐった。

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