第19話 翠とデート①
何故翠と出かけることになったかというと、事の発端は合宿二日目の夜だ。練習を終え、夕食を済まして合宿所でストレッチをしていたときだった。電話がかかってきたのだ。翠から。
部屋の中には一年と二年がいて、話している相手が翠とバレてしまったら悲惨なことになる。なので、悠真には本当のことを話しておいて、何か聞かれたら誤魔化すように頼んで外へ出る。
「もしもし、何の用だ?」
「ふぇ?!ちょ、ちょっと待ってね!……ねぇ、本当に電話に出たんだけどどうしたらいいの?」
なんなんだ……。かけてきたのは向こうなのにちょっと待ってはないんじゃないか?
その後はなんて言ったかわからないが携帯越しから聞こえてくるキャーキャーしている声がちょっと耳障りだ。
「ごめんごめん、あのさ、GWの合宿終わったら部活ないよね?」
「ないぞ。それで?」
「じ、じゃあ、遊びに行かない?合宿お疲れ様ー!みたいな感じで」
なんだそれは。合宿終わったら休むのが普通だろ……。でも、今まではそんなことしたことがなかったので悪くないとも思っていた。
「合宿終わった次の次の日ならいいぞ。てか、そのために電話してきたのか?メッセージ送っとけばよかったろ?」
「電話の方が確実でしょ!てか、本当にいいの?!約束だからね!忘れないでね!」
電話じゃなくてもいいじゃねぇか……。普通にメッセージ送れよ。
「忘れないから。用も済んだろ?切るぞ」
「ま、待って!……おやすみ!陽輝!」
「おう、おやすみ」
という出来事があり、悠真に内容を聞かれたので答えると、「意外と乙女な部分もあるんだね……」とボソッと言っていた。乙女?意味がわからなかった。
その後、二人でメッセージを送りあって場所、集合時間を決め、待ち合わせをして今に至る……という訳だ。
目の前にいる翠はこの前の合コンとはまた違った雰囲気を
レモンイエローのトップスにジーパンという前回とは違った明るい雰囲気が出ていて、顔をよく見るとほんのりと化粧をしているようだった。
髪型も少し髪が伸びていたのもありちょっとしたポニーテールを結んでいて可愛かった。というか、見惚れていた。
「ぇ、——ねぇ!陽輝!大丈夫?」
見惚れたせいで、少しぼーっとしていたようだ。
「すまん、ちょっと見惚れていた。じゃ、行こうぜ」
とりあえず暑いのもあるので中へ入りたかったのだが、今度は翠が止まってしまった。
顔を赤くして、小声で何かを呟いていたが聞き取れなかったので肩を揺すって呼びかける。
「おい、翠?早くいくぞ?」
「っ!ご、ごめんね。行こっか!」
俺の右手を掴んで翠は進み出した。……は?なんで俺の手掴んでんの?
「おい、なんで手を掴んでんだ?」
「だって、デートだよ?それに、掴んでるんじゃなくて繋いでるっていうの!」
デート?これが?お買い物だろ?何を言い出しているんだ?
「顔に出すぎだよ……あのね、女の子とお買い物とかしてるのは全部デートにはいるからね?例えば、クラスの男子が女子と並んでお出かけとかしてるところ見たらどう思う?」
想像してみる。山崎が菊池さんと並んで仲良く話しながら歩いている姿を。……デートにしか見えない。
「あ、あぁ。デートだな」
「でしょ?だから手を繋ぐよ!」
別に繋がなくてもいいんじゃないか?と言おうとして口を閉じた。なんだかんだで離したくない俺が心の中にいた。
ため息をつきながら、「あぁ……わかったよ」と言うと翠はニンマリしていた。……やっぱり夢に出てくるあの子にそっくりだった。
「じゃあ、まずはお買い物に行きますか!」
隣で元気そうに歩く翠を見て、俺は苦笑した。今日ずっとこの調子か……
まだまだデートは始まったばかりだ。
読んで頂きありがとうございます。
前回何にもなかったので、今回はデート回にしよう!……と決めたのですがまだ始まることすらないとは……笑
あと二回分はデート回にしようと思っています!(もしかしたら短くなるかも)
誤字脱字等ありましたら報告してもらえると助かります。
ついでで、いいので、フォローと応援も……!
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