想い続けてた女の子は隣の席の子だった

ゆうま

俺が彼女と付き合うまで

第1話 プロローグ

 誰だって『初恋』は経験したことはあるだろう。たとえば、幼稚園の頃に保育士の先生、小学生の頃にクラスの可愛い女の子、中学、高校の時に学校の先輩、はたまた大人になってから職場の人に……などたくさんの『初恋』はある。

 ほろ苦かったり、すっごく甘かったり……そんな誰もが経験のある初恋。


 その初恋相手を高校生となった今でも俺は想い続けている。


 相手は幼稚園の仲が良かった子だ。よく一緒に遊んだり、一緒に帰ったり……。


 明るく元気なあの子に俺は恋をした。


 あの子が引っ越して、関わりがなくなっても今この時もずっと一途に恋をしている。

 顔も覚えておらず、名前すら思い出せない今でも……。









「おい、陽輝ひろき!説明しろやぁ!」

 教室に入ろうとし、ドアを開けた途端に聞こえてきた声を聞いて反射的に扉を閉め廊下を駆け抜けた。


「待てや陽輝!」

 そんな声が後ろから飛んでくる。何故こうなったかというと遡ること10分前……


「おはよう。今日から授業が始まるね!」

「おう。頑張らないとな。」


 俺の名前は紅島陽輝くしまひろき。一昨日に行われた入学式を経て高校一年生になったばかりだ。運動神経が良い以外に取り柄がない、平凡な高校生だ。話している相手は幼馴染の黒木悠真くろきゆうまだ。幼稚園からの付き合いで小中高と同じだ。

 整った顔に切り揃えられた茶髪、なんか爽やかオーラでも出てる気がするな……。


「二人は同じクラスで羨ましいです……私も同じだったらよかったのですが……」


 そう呟いたのは悠真の彼女である佐藤小珀さとうこはくさんだ。中三の時に悠真と同じクラスになって悠真に一目惚れし去年の十月頃に付き合ったと悠真から聞いた。中学の時は学校一、二を争う美人とよく話題になっていたが高校に入ったばかりでも相変わらず人気のようだ。背中の中盤あたりまで伸びたストレートの茶色の長い髪に、綺麗な瞳。ほんのりとだが女性らしさも現れ始めている。悠真と並んでいるところを見れば美男美女でお似合いだ。



「クラスが違うのはちょっと残念だけどさ、登下校は一緒にできるじゃないか」


「……私不安なんです。悠真くんが他の人に取られるんじゃないかって……私たちの学年には可愛い子が多いって話ですし……」


「そうだとしても、僕は君しか見てないし周りには興味もないな」


「本当ですかー?」

「本当だよ。心配症だな」


 そういって悠真は佐藤さんの頭を撫でた。俺、忘れられてる気がするな……。こんな甘々な空気出されたらこっちが辛いわ。


「あ……ごめんね。」

「気にしねぇよ!俺をほっといていちゃついていいですよー!」


 軽くじゃれて、後は世間話などをしているうちに高校についた。靴を履き替え教室に向かおうとしたとき、


「あっ、忘れてました。陽輝さん!今日の放課後って時間ありますか?」


「特にはないかな。どうかしたか?」


「ちょっとお話がありまして……私に付き合ってくれませんか?」


「おう、いいぞ。詳細はメッセージ送ってくれ」


「はい!」



 と、こんなやりとりをしてしまった。

 それをクラスの男子が目撃していたようで……まだクラス内に悠真と佐藤さんが付き合ってることは広がっておらず、クラス内でも人気の佐藤さんと登校した(悠真は先に幼馴染と嘘をついて許された)俺は追いかけられているというわけだ。


「陽輝があの場にいた説明をしてもらおうか???」

「佐藤さんと登校なんて……許さねぇぜ……」

「そして放課後に二人きりでデートだと?殺すしかないな。殺そう殺そう」


 こいつらのこと俺はまだ知らないのに何故か名前を覚えられているのは怖い。おい、最後のやつ。佐藤さんには彼氏いるからデートにはならねぇよ。


「お前ら!刃物こっちに向けてる時点でおかしいし佐藤さん彼氏いるぞ?!」


「「「えぇ?!嘘だろ?!」」」


 あ、止まった。今がチャンスだな。


「聞いてくれ。佐藤さんには彼氏がいて、その彼氏は黒木なんだ!で、俺は黒木の幼馴染だ!だから朝は三人で登校してきたんだよ!」


 俺の言ったことを理解出来ず間抜けずらして立ちすくむクラスメイト。俺がその隙を見て教室に戻ろうとした途端、


「だからって放課後二人きりで会うことに変わりはない……ギルティ!」

「デートじゃなくても会うことに変わりはない!殺るぞ!」

「「「おうっ!」」」


 ちっ!気づかれた。さっきの情報で悠真の方に意識が向けばよかったのに!こいつらに捕まったら……俺は生きていけねぇ!逃げ切ってやる!







「はぁ、なんかやけに疲れた」

「お疲れ様、ご飯食べに食堂に行こっか」



 俺はなんとかホームルームの時間まで逃げ切った。クラスメイトの何人かは先生に捕まっていた。刃物振り回してたもんな。あいつらまじでやべぇよ。


 悠真と二人で食堂に向かおうとすると、


「悠真くん!一緒にお昼ご飯食べませんか?」


 と、声を佐藤さんに声をかけられた。


「陽輝もいるんだけどいい?」

「大丈夫ですよ!」

「じゃあ行くか」






「人がいっぱいいんな。想像以上だ。」


 食堂の広さは確か生徒四百人は軽く入れる広さと聞いていたが、席はほぼ満席のようだ。


「俺が席とっておくから、二人は先に食券買ってこいよ。悠真、俺の分頼むわ。」

「わかったよ。カレーでいいよね?」

「あぁ。頼んだ」

「ありがとうございます!紅島さん!」


 ここの学食はカレーが美味しいと有名だからな……楽しみだ。

 なんとか四人用テーブルを見つけることができ、待つこと十五分。二人がやってきた……と思ったら一人増えてる?


「あの、紅島さん!私の友達が一人だったので連れてきてしまったのですが問題ないですか?」

「一人なら大丈夫だ。……そいつ、俺の席の隣の子だぞ。名前は……なんだっけ?」


 俺が思い出せずにいると、


「うちの名前は谷口翠たにぐちみどりだよ!隣の席の私の名前ぐらいは覚えてよ!」


「すまん。谷口さん。覚えたから」


「これからよろしくね!お昼食べよっか!」


 谷口さんの一言で、俺たちはお昼を食べ始めた。


 この時関わりを持った谷口さんとこれから仲良くなる……そんな未来は俺は予想などできるはずがなかった。


 余談だが、俺はお昼を食べ終えた後にクラスメイトにまたも追いかけられた。谷口さん、俺と悠真のクラス内で1番の人気者だったらしい……。

 かなり酷い目にあった……。












 —————————————————


 初めまして。

 作者のゆうまです。

 まずは読んでいただきありがとうございます!

 前々から小説を書きたいと思っており、コロナで自粛が続いたため書いてみました。

 最初の方はヒロインとの関わりがあんまりないと思います。そこを期待していた人がいたらすみません。

 初めて書いたので文がおかしかったり表現が違うかもしれませんので、おかしな点があったらどんどん指摘してもらえればと思っております。


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