宇宙漂流記

７

またコローニー内は地球の２分の１ほどの

重力が確保（かくほ）されているので、

宇宙飛行士のように、

生徒達が飛び回っているといった事もない。

始めに支給されたブーツには磁力があり、

金属の床に程（ほど）よく張（は）り付いているし、

コロニーは回転する事によって遠心力で

重力をつくっている。

バケツに水を入れ勢（いきお）いよく回転させても、

逆（さか）さになった時に水がこぼれないのと

原理は同じである。

つまりは壁沿（かべぞ）いに生徒は飛ばされ、

張（は）り付いているのである。

実際（じっさい）には立っているが、

遠心力＝《イコール》重力となって|、

壁沿（かべぞ）いに立っているのである。

生徒達にはブーツの他（ほか）にも、

バイタルチェッカーと呼ばれる、

モニターつきの腕輪が配（くば）られていた。

スマホの画面のようなものに、

色々な情報が表示され、

操作出来るようになっている。

この腕輪は認識表（にんしきひょう）にもなっていて、

まあ生徒手帳のようなものでもある。

例（たと）えば図書館で本を借りれば、

自動的に誰がどの本を借りたか、

メモリアルされる。

また生徒しか利用できない施設（しせつ）などに入る時も

、この自動認識機能（じどうにんしききのう）を持つ腕輪が必要である。

それはさておき、

いきなり自由時間を与（あた）えられた生徒一同は、

早くも同じ国出身の生徒を見つけ、

固まり始めていた。

この時代、世界共通語の

アグリット語と言うものが出来ており、

(世界主要都市３０ヶ国の標準語をベースに

似（に）た発音や言い回し言語を統一し出来た、

世界共通言語 )

そしてこの時代、

それを喋（しゃべ）れない生徒はいなかったが、

それでも同じ文化を共にした仲間と固まるのは

ある意味心理であり、真理だろう。

そう言った意味では、

このとき派閥（はばつ）がはっきり|目に見えて、

認識（にんしき）できた瞬間でもあった。

入学式の学生一覧表では、

確（たし）か日本人は三人だった。

不和（ふわ） 和真（かずま）に、

彩切（あやぎり） 音羽（おとは）。

ハーフという意味では双子のアマテラス兄妹も

半分は日本人とも言えるのだが、

声をかけるには奥手の日本人としては、

あまりに敷居（しきい）が高い。

それにもう１つ、

すでに血縁（けつえん）のアメリカ人に囲（かこ）まれていた。