宇宙漂流記

A.D.２０８５

１

西暦２０８５年、

それは世界初のコロニーが誕生した年だった。

それは同時に世界初の、

宇宙居住型（うちゅうきょじゅうがた）コロニー学園の誕生でもあった。

世界初のコロニーは、

学園として誕生したのである。

宇宙飛行士養成訓練施設（ようせいくんれんしせつ）学校。

通称（つうしょう）アラモネ学園。

宇宙に浮かぶこの孤高（ここう）の学園は今日この日、

その記念すべき一期生を迎（むか）えようとしていた。

それは誰もが、

輝かしき新時代の幕開（まくあ）けを予感させる、

出来事だった。

そして今、

その記念すべき一期生を乗せた宇宙船が、

コロニーに到着（とうちゃく）した瞬間でもあった。

この出来事は世界同時配信で中継（ちゅうけい）され、

先にコロニー入りしていたマスコミが一斉（いっせい）に、

搭乗生（とうじょうせい）をフラッシュの嵐で迎（むか）えていた。

「ご覧下（らんくだ）さい。

　今、我々（われわれ）は歴史的瞬間を目撃（もくげき）しています。

　どうしましょう、震えが止まりません。

　おっと今ゲートが開き、

　搭乗生（とうじょうせい）がその記念すべき、

　一歩を踏み出します。

　最初に出て来たのはやはりこの二人。

　世界で初めて若干１６歳にして、

　宇宙非行を実現した伝説の双子の兄妹（きょうだい）、

　アマテラスコンビです。

　先を行くのが兄のカイト・ウォーカーさん。

　後ろを行くのが妹の、

　メアリー・ウォーカーさん」

そう紹介（しょうかい）された双子は正確（せいかく）には、

カイト・神（シン）・ウォーカーと、

メアリー・神（シン）・ウォーカーと言う名で、

日本人の血が混じっている。

そのため日本では親しみを込めて、

神（シン）カイトと、神（シン）メアリーの名で

親しまれている。

「この双子は世界でも珍（めずら）しい、

　一卵性双生児（いちらんせいそうせいじ）の男女の双子です。

　普通は一卵性双生児に男女は、

　産まれないとされてますが、

　極（ごく）まれにあらゆる条件が揃（そろ）ったときに、

　産まれるケースが報告されています。

　どれくらい珍（めずら）しいかと言えば、

　一卵性双生児が産まれる確率は、

　３００人に一人と言われ、

　その中でも男女の双子が産まれる確率は

　約１００人に一人だと言われています。

　つまり約３万人に一人しか、

　産まれないわけです。

　まさにその出生から奇跡（きせき）。

　その出生も奇跡なら、

　若干（じゃっかん）、僅（わず）か１６歳で宇宙飛行士に任命され、

　人類初の、双子で宇宙飛行を実現したのも

　奇跡です。

　まさに奇跡の体現者。

　その偉業（いぎょう）はすでに神話となっています」