第60話 シルバーナイト

 金色に輝く鉄壁の騎士ダゴンが前に出る。

「なるほどあいつが噂の魔女アーシラトか。じゃあ、遠慮無く行くとするか」


 ダゴンが百体の灰色の兵士に向かって走り出した。

 ダゴンを囲み周りを埋め尽くす灰色の兵士達。

 そのど真ん中へダゴンが突っ込んでいく。


「ウオォオオオオオオオオ!」

 ダゴンが雄叫びを上げた。


 高速で廻される、ダゴンの黒き槍グングニル。

 シュンシュン、音を立てて、前に立ちはだかる兵士に振り下ろされる。


 灰色の兵士が次々と切り裂かれて、砕けて塵に戻っていく。


「なかなかやるな。ではこれはどうだ」


 アーシラトの右手の甲に輝き回り始める魔法陣。

 巨大な魔法を打ち出すアーシラト。


『敵を蝕め ラ・バイオ』

 体を腐らせる魔法を身体に受けて、どす黒いヘドロに包まれるダゴンの身体。


「ク、効くな……だが、俺の突進は誰にも止められないぜ。例え神人でさえな」

 ヘドロを気合で弾けさせ、止ることなく軍勢のど真ん中を一気に進むダゴン。


「神人と戦った? もしかしておまえは」

 ダゴンの言葉に。初めて焦りを見せたアーシラト。

 ダゴンはあたしに示す――敵を叩けと。

「アナトこっちは任せとけ! おまえは魔女をぶっ飛ばせ!」

 アーシラトはダゴンの突進力を見て呟いた。

「バカな。シルバーナイトをここに呼んだというのか」


 あたしを睨みアーシラトに言った。

「アーシラト。今ここであなたをぶっ飛ばす!」

 ナメコがあたしを見た。

「あんた、ばかじゃないの? 逃げれば良かったのに。貴重品なネックレスで」


「ごめんねばかで。でもナメコを置いてはいけない」

「わかった、素直に礼を言っておくわ」

 頷いたナメコはあたしに説明を始める……勇者の力の覚醒方法。


 「アーシラトをぶっ飛ばす為には、アナトが覚醒して勇者になるしかない。わたしのエナジィで強醒を行うわ」


 アーシラトはナメコの勇者覚醒の意思を感じ取り、巨石の兵士たちに叫ぶ。

「勇者の強制覚醒!? 巫女の白いエナジィなら可能か。だが覚醒までの時間は二人ともトランス状態になり無防備。兵士達よ! あの二人を先に倒せ」


 アーシラトの言葉に灰色の兵士は、全員向きを変えあたし達に向かって来た。

 そうはさせずと、灰色の兵士の前に足を大きく開き、鎗を地上に刺し悠然と立ったダゴン。


「少しくらい……待っててやろうぜ!」


 迫ってきた灰色の兵士の足を、黒き槍グングニルで弾き転倒させ、つき滅ぼす。

 百もの灰色の兵士は、あたしたちの前で仁王立ちのダゴンに阻まれる。

 強力な打撃を高速の槍回転で弾き、素早く灰色の兵士の群れを阻むダゴン。


「何をやっている! 全力でシルバナイトを殲滅し、小娘を殺すのだ!」

 苛ついたアーシラトの声に反応した、灰色の巨石の兵士の剣と鎗の攻撃、魔法の攻撃が雨のようにダゴンに降り注ぐ。


 だが全ての攻撃は銀色の光を放つ、ダゴンのエナジィが弾く。

 シルバーナイトは鉄壁な守りを見せ、あたしに振り向き舌で唇をペロッと舐めた。


「さあアナト勇者のちからを見せてみろ!」

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