第14話 暗黒騎士アガレス

「どこに着陸するんだ?」

 俺の質問に目をつぶり、さらに集中力を高めたアイネが答える。

「直接にグリモア城へ行きます。着陸時にこの球体を解除しまから、地上に放り出されるので覚悟願います」


 おーーーい、と俺が文句を言おうとした瞬間、移動の魔法は解かれ三メートルほど落とされた。

 一回転して獣王は地面に立ち、アイネは魔法で減速してから地上に降り立った。

 俺は尻から落ちて、痛みに臀部を撫でていた。


「牛乳を飲まないからだぞ! バアル!」

 獣王アスタルトの言葉に「関係ないだろう」と反論するが臀部が痛い。

「さあ、ここからは走ります。付いてきてください」

 アイネが走り出し、音もたてずに獣王はついていく、俺はケツを押さえながら走る。

 

 走っている間にアイネが話した事。

 三十年前にマスティマ女王が、ゴース騎士団を率いて大陸を平定した事により平和が訪れた。

 調和を重んじる女王の方針により、現在の大陸は種族毎に七つの国が建国された、

 国は各々の方針により統治されていて、小競り合いはあったが大きな戦乱ではなかったということ。


 純白の城の正面へ向かう俺たちに争う声が聞こえてきた。

 立ち止まった俺の目の前で戦いが始まろうとしていた。


 ゴース大陸の統治者である、マスティマ女王の居城のグリモア城の正門で、ゴース守備隊と反乱軍レベリオンが対峙していた。


 一人の剣士を大勢で取り囲む守備兵、その中で一番位が高そうな兵士が問う。


「どう言うことだアガレス!? この国の守り人たるおまえが、こんな暴挙に出るとは!」

 マスティマ軍の守備軍の隊長がアガレスへ剣先をむけた。


 漆黒の鎧から陽炎のように、黒い闘気が放出されていて、俺にも暗黒騎士が識別できた。

 女王に反乱を起こした、この国の大将軍であった者は笑い出す。


「ハハ、忘れたのはおまえらだ。守りびとだと? この偽りの世界に守るものなど有るのか」

「黙れアガレス! 女王の寵愛を受けながらその言い様。グリモア城を攻めるなどおまえは常軌を逸している!」


「フフ」黒い兜の中から笑い声が続く。


「常軌だと? すでに世界は既に狂っている。本来のあるべき姿など、おまえらには思い出せない。だがこれは思い出してもらおう……暗黒騎士アガレスの恐怖。味方ではなく敵として身体と魂にな!」


 アガレスが背中の大剣ソウルイータを引き抜くと、漆黒の剣は腕の中で叫び声をあげ始める。


 ウォォーン。魂を喰らう剣ソウルイータは固有スキル「呪縛」を発現させた。

 この剣で殺された人々の呪いの叫びで、アガレスを囲んだ全員の動きが止まる。

 止まった空間でアガレスは左手で、ソウルイータ持つと、腰に密着させ、そのままを居合いの構えを取る


 オッッッッォオオン。壮大にソウルイータが吠えた。

 今までアガレスに切られた者達の魂を圧縮していく。

 漆黒の闘気が全てが吸い込まれて消えた瞬間。

 アガレスは超大型剣のソウルイータを右手で居合い抜く。

 暗黒の闘気を一点に集中し、高速で技を打ち出すアガレスの必殺奥義。

『アルカナ・ソニックウェーブ』


 居合の速度と大剣の重さに、漆黒のエナジィを乗せた技は、普通なら片手剣で行う居合い抜きを、両手剣で撃ちだす。アガレスの奥義の凄まじい速さとパワーに直前の地面には亀裂が入り、黒い衝撃波が鋭い刃となって周りの空間を一瞬で切り裂く。


 両軍の血と肉とが飛び散り、絶命する者ども叫びが城の中に反響した。


「これが暗黒剣……どうだ思い出したか? フフ、俺の言葉はもう届かないかな」

 自分を中心に転がる死体を踏み越えてアガレスが叫ぶ。


「殺せ! 女も子供も容赦するな。全て殺すのだ」

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