第47話 無限の殺傷力
嫌そうな、というか不安そうな顔をして河合はデバッグルームの外に出た。
申し訳ないけど、この先のためにここは河合に頑張ってもらわないといけない……
外に出てすぐにマネージャーが立っていた。
急に現れた河合の姿を見て驚いている。
「バカ野郎! なんで出てきた! ここに来たらどうなるかわかってるんだろ!?」
怒られた……マネージャー自身はいつも一貫して殺すことを嫌がっている。
なのにチームメイトをしっかり殺して回ってはいる……
「本当は出たくなかったんですけど、これしかないらしいです……」
やっぱり不満そうだ……
「逃げてくれ、もう竹内も小島も寺田もいないんだ……どうしようもない、俺はもう誰も殺したくない……」
見るたびにマネージャーの顔は青ざめて言っていたが、今はやつれすぎて健康的で割腹のいいいつものマネージャーとはとても思えない見てくれになってしまっていた。
ひとり死んでいくごとに本当に辛かったのかんだろうな……
そんなマネージャーの思いに反して、肩口からジ・エンドが空に打ち上げられた。
来る……
ジ・エンドは河合の上空を漂ってから急降下してきた。
地響きがなり、ジ・エンドの落下した周辺のコンクリートがえぐれる。
相変わらずすごい破壊力だ……あんなのに巻き込まれたら絶対に死んでしまう……
だが河合は問題なく回避していた。
「すごい、これがレベルカンストの俺のスキル……」
ジ・エンドの真横に河合は立っていた、もともとの光スキルの高速移動にスキルレベルをカンストさせて磨きがかかったはず。
いくらジ・エンドに異常な破壊力があったとしても当たらなければ意味がない。
河合はジ・エンド本体を見て顔を引きつらせた。
「不気味な形だ……気持ち悪いな……」
不快感を露骨に出している、人を殺すためだけの能力ってやつを直にみてるからな……
「河合! 何やってる、止まってないでさっさと逃げろ……」
またマネージャーに怒られた。
「すいません、いくら井上マネージャーの命令でも今は聞けません」
おお、マネージャーに歯向かっていった、あいつ嫌そうな顔してたけど、俺の言ったことしっかりやってくれるつもりなんだな、さすが河合! 頼りになる男だ。
でも河合の言葉を受けてマネージャーは不機嫌そうだ。
「お前に死んで欲しくないから言ってるんだ、ジ・エンドの攻撃は一発で終わりじゃないぞ!」
「前はいいスキルを持ってるのなら殺してくれっていってたじゃないですか、今は言わないんですか?」
おいおい、河合……マネージャー相手に煽ってくなぁ……割と好戦的なやつだったのかなアイツ、今まで仕事で無茶振りしちゃってたけど腹立ってたのかな……
「わかったんだよ……殺せるなら殺して欲しいさ。 でもな俺のスキルはそんなヤワなもんじゃないんだよ……このゲームで俺を殺すことなんて無理なんだ」
そうなのかもな……
竹内がジ・エンドとマネージャーを繋いでる線を切断しようとした時のカウンターのジ・エンド、一発目を回避できるだけでもかなりのスキル練度が要求されるのに二発目まで用意されていた。
他にも何発かジ・エンドが用意されているかもしれないし単純にマネージャーを殺そうとすることは不可能なのかもしれない。
第二のジ・エンドが発射された。
竹内の時は時間差があったのに今回は一発目のあとすぐに二発目が来た。
なんか、一発目よりさらにスピードが速いような……
二発目は地面に留まらず、衰えぬ破壊力で地中深くまでえぐり込んでいった。
「やばっ……」
河合は難なく回避することはできたが、一発目を明らかに超える威力に脅威を感じたみたいだ。
「止まってる場合じゃないぞ、ジ・エンドはまだまだ終わらない、だから言ったろ! 俺を殺すことなんて無理なんだよ!」
泣いてる……マネージャー、心が苦しいんだ……
自分の意思に反して勝手に意思を持っているスキルに振り回されて、大切なチームメイトを目の前で殺されて言って。
このゲーム一番の被害者はどう考えてもマネージャーだ……
ジ・エンドの攻撃頻度はより早くなってきた。
即座に三発目も発射されるが河合はそれも難なく回避した。
その後も攻撃は何度も実行されて、もう何発打たれたのかわからなくなってきた。
河合に疲れは感じられない、もうちょっとだ、もうちょっと我慢してくれればなんとかなるかもしれないんだ。
「あの……すいません……」
中村さんが話しかけてきた。
「このままじゃ、私達が外にでた時の足場がなくなってしまいませんか?」
えっ?
ジ・エンドの攻撃は出すたびに威力を増していて、二発目以降の攻撃では地面をえぐり底が見えなくなるほど深く掘り下げられている。
河合のいる位置はデバッグルームの出入口付近だ、俺がそこの周りで回避するように言ったからそうしてくれているんだけど、そのせいで足場が……
副島はこの穴に落ちて死んだ……
これ以上やられて足場が無くなったら外に出た瞬間に死ぬ……
「箕輪ちゃん、ここは危険を承知で一度外に出るしかないんじゃ……」
上田だ、まだ気持ちの整理はついてないだろうけど状況を観察するくらいには落ち着けていたようで話しかけてきた。
確かにそれしかないか……
さっきのようにデバッグルームを少し開いて話しかけてもこんなドカドカ攻撃されている状態で話を聞き取れるかわからない、そんなことしてる間に足場を全部破壊されたらそれで終わりだし……
「考えてる時間はない、行こう!」
次のジ・エンドが打ち終わった瞬間に出てすぐ移動する。
かなり危険だけど、それしかない……
そんなことを考えている間にデバッグルームの直近をジ・エンドが通過していった。
よし、足場はまだ残ってる!
「今だ!」
ここしかない、中村さん、上田とともにデバッグルームを飛び出した。
「あっ! なんで今!」
河合が俺達を見て驚いている。
なんか慌ててこっちに向かって……
「戻って、ここはダメだ……」
まさか、連続してジ・エンドを撃たれた?
黒い影がデバッグルームの周辺に覆われて………
河合が俺達を押し込もうとするけど、間に合わない……
近づいて来……
死亡者
河合 潤
圧殺(井上 洋一)
上田 耕助
圧殺(井上 洋一)
中村 かな
圧殺(井上 洋一)
箕輪 祐
圧殺(井上 洋一)
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