プロジェクトチーム全員で殺しあう中、俺はのんびり過ごします
ゆに
第1話 退屈な会議が始まると思ったら……
フナバシステム株式会社、所在地は大田区の武蔵丸子駅から徒歩7分。
IT系と呼ばれる企業で、自社製品とアウトソーシング部門を並行して行っているが、利益のほとんどはアウトソーシングで、自社開発ははっきり言って飾りのようなもののようだ。
自社開発なんてやめてしまえばもっと経営が楽になるだろうに、続けているのはクリエイティブなものへ挑戦すると言うプライドか?
フフフ、そんなこと私にはどうでもいいことだがな。
まあ割とどこにでもある中小企業だ、今回のゲーム参加者はここの自社開発チームに決定だな。
さて、参加メンバーは……
[マネージャー]
井上 洋一 男性 42歳
[開発第一チーム]
寺田 朋和 男性 33歳(リーダー)
副島 政彦 男性 28歳
大島 伸明 男性 24歳
箕輪 祐 男性 24歳
河合 潤 男性 23歳
中村 かな 女性 19歳
[開発第二チーム]
竹内 浩二 男性 30歳(リーダー)
若井 優希 男性 27歳
上田 耕助 男性 26歳
沖田 暁 男性 26歳
丹澤 春香 女性 25歳
渡辺 哲治 男性 26歳
[品質評価チーム]
小島 豪 男性 29歳(リーダー)
金子 愛 女性 27歳
菅原 繭 女性 22歳
杉原 輝樹 男性 26歳
山田 瑠璃 女性 23歳
黒沢 香耶 女性 23歳
全員で19名、まずまずな人数じゃないか。
ここは毎週水曜の昼休み明けに集まって会議をしているようだ、そこを利用してゲーム開始だ。
フフフ……この者達がどう行動するのか、楽しみに観させてもらうとしよう……
◆
ふぁぁぁぁ……眠い……
昼休み明けすぐに会議なんて引続き寝てくださいって言っているようなものだ。
無駄な会議は削減していこうっていう現代の社会の流れに逆行してるんだよなうちの会社は、だから経営も傾いてるんだ……
「でな、その時隣にいたじいさんが最高でさぁ……」
開発第二チームの竹内リーダー達がワイワイと騒いでる。
このくだらないミーティングも第二チームだけはみんな仲良く時間前に会議室に入って嬉しそうに雑談している。
竹内リーダーは他のリーダーやそれを超えて井上マネージャー以外のマネージャー達とも気さくに話したりしてる人だ、出世する人ってこういう人なんだろうなぁ。
こんな会社どうでもいいと思ってる俺にとっては無駄な労力としか思えないけど……
それでも、チーム内で和気藹々とやっているのは悪いことでないと俺でさえ思う、このミーティング用に席を移動させてくれているのも第二チームの人達だし、最低限感謝はしているつもりだ、そんな第二チームにと比べて俺の所属する開発第一チームは……
リーダーの寺田だけ第二チームの話に入りたそうに顔を向けて愛想笑いしてるだけで他はほおづえついて寝たり、スマホをいじったりだ。
「箕輪さん、俺今日起きてられる自信ないです」
後輩の河合がヒソヒソ声で話しかけてきた、こいつだけは第一チーム内で話のできるまともな奴。
「寝てていいだろこんな会議」
「ほんとですね、ってか箕輪さんいつも開始前から寝てますよね?」
「俺にとってこの時間は休み時間の延長なんだよ、この後の仕事に向けて温存してるんだ」
いっそこれをみんなで仮眠の時間にでもした方がよっぽど有意義なんじゃないか?
河合は苦笑しながら、スマホをいじりだした。
残る一つは品質評価チーム、要は開発チームの作ったものがまともに動作するか確認するチームだ。
品質評価チームは大半が女性で、リーダーの小島よりも、女性のトップ金子の方が発言力を持っている。
ここのお姉様方もこの会議には不満そうで井上マネージャーにも食ってかかっていき流石のマネージャーもタジタジだ……自社製品部門で一番権力を持ってるのはここの女性達のドン、金子と言っても過言ではないのかもしれない……
ともかくだ、こんなしょうもないメンバーばかり集まってくだらない話をするこの空間が俺は大嫌いだ。
終わった後のマネージャーの満足そうな表情も虫唾が走る。
仕事だからこの場にいるが、俺はさっさと家に帰ってゲームがしたいんだ。
定時退社の箕輪様の力を今日も存分に発揮してやる!
そのためにもこの無駄な会議は温存、それに尽きる!
「さて、じゃあ始めるとしようか」
マネージャーのいつものセリフで会議室が静かになった。
長椅子で作られた会議場は、全員が向き合うように四角に机長机が整列され、それぞれの辺に各チームが並び、マネージャーだけは一人で一つの辺に位置取るように席についた。
と言うわけで進捗会議が始まった。
ふぁぁぁぁ……始まる瞬間からすでに眠さのピークだ……
◆
あれ……? ここはどこだ?
白い……
まっしろな空間に一人で立っている。
机も椅子も無い、会議室にいたはずなのになんでこんな場所に?
他のみんなは?
「うわっ!?」
突然目の前に大きな両開きの扉が現れた。
10メートルくらいあるんじゃないだろうか、まるで大きい鳥居のようにどっしりと構えられている。
「なんだこのデザイン……?」
突然の環境に対する感情よりも真っ先に気になったのは扉の色だった。
幾何学な模様に虹色、って言えばいいのか? 扉が何色にも発光して派手にチカチカと光っている、気味の悪い扉だ……
夢、だよな?
なんなんだこの扉?
扉以外は白い空間で何ひとつ見当たらない、どう見てもこの扉を開けって言ってるようにしか思えない。
ははーん、わかったぞ! これは心理テスト的なやつだな、きっとさっきネットサーフィンしてる時(仕事中)に見た占いのせいでこんな夢を見てしまったんだ。
なんでもいいか、、この扉を開いてみよう。
重厚さを感じさせる扉は手を触れようとすると自動で開き始めた。
うわっ、なんだこの光、まぶしっ……
すごい光とともに祝福されているかのように、白い鳥や、羽の生えた子供達が俺の前を舞い上がっていった。
「えっ? なんだなんだ?」
俺なにかやったのか?
まさか突然死んでしまったって訳じゃないよな……?
ムリムリムリ! まだやりたいことが沢山あるんだぞ、健康診断だっていつも何も問題ないし、まだ24歳だぞ、突然死なんてしたら社会問題だろ!
積みゲーだって沢山あるんだ、このまま消化できずに死んでまたるか!
そんな俺の心とはうらはらにファンファーレが鳴り響いている、意味がわからないが俺は確実に祝われている……
『デバッグルーム』
は?
頭の中で変な声が聞こえてきた。
デバッグルーム? なんじゃそれ?
『それが箕輪祐さんに与えられたスキルです』
声が続けてそう告げた。
俺の名前を呼んだ? もしも夢じゃないとしたら、なんで俺の名前を? ギブギブ、わからなすぎ! この頭に響いてくる声は誰で、何なんだよ。
それにスキル? 与えられた?
なんだかゲームみたいな話だな。
夢にしたって酷すぎだ、クエスチョンマークが溢れすぎて溺れそうだぞ……
「意味わからない、なんだよスキルって? ここはどこだ? 職場じゃないの?」
頭の中から聞こえた声に質問したが、返事は帰ってこなかった。
『このスキルを生かすも殺すもあなた次第です、祝福のあらんことを……』
頭の中の声がまた一方的に話掛けてきた。
「ちょっとちょっとちょっと! これは何なんですか? いきなりスキルって言われても」
いくら待ってもそれ以降頭の中から声はしなくなった。
なんだこの淡白な話は!
たった2、3言話しかけられただけでもう終わり?
なんだよデバッグルームって……?
まさか俺、二次元の世界にでも迷い込んでしまったのか?
スキルって、ゲームとかでいうあのスキルのこと……なのか……?
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