第10話 ソーニャ、決意を新たにする

 休日の午後。

 私——ソーニャ・ラーゲルフェルトは、商店街を歩いていまシタ。

 普段はイオンで買い物するので、あまり商店街ここへは来ません。

(ですが)

 十二歳の時にパパと来日した際……大助や琴葉と会った、思い出の場所デス。

 当時、パパが日本を訪れたのは観光ではなく『エロゲアイランド』という店でエロゲーを買うため。

 その理由を、こう説明してくれました。


「エロゲーは凌辱大国ニッポン——その真の姿をゲームで表した、ドキュメンタリーなのでーす」

「『エロゲアイランド』は、それに反抗するレジスタンス。私は情報を受け取り、海外へ発信する協力者なのデース」


(パパの言った通り、日本は凌辱国家でシタ)

 私が通う高校の校長・豚山太男ぶたやまふとおは『学園・肉便器化計画』を立てていまシタ。

 生徒の弱みを握って凌辱し、支配下におき、売春を斡旋あっせんする……

 ちなみに校長はキ●タマを砕いたら、すっかり従順になりまシタ。

 ただ破壊された時のよろこびが忘れられないらしく——玉蹴りプレイというそうデス——キ●タマを移植手術で復活させ、私に再び破壊して貰おうと思っているようデス。キ●ガイの考えることは分かりまセン。

(校長の企みは阻止できまシタ。でも奴は、氷山の一角にすぎまセン)

 日本が凌辱国家であることは、変わり無い……となると。

 レジスタンス『エロゲアイランド』の店主と接触し、情報共有した方がいいでショウ。

(なぜこれまで、それを思いつかなかったのか)

 己の愚かさに、苦笑してしまいマス。

 そして私は『エロゲアイランド』の場所へたどりつきました。が……

「あれ?」

 昼間なのに、シャッターが閉まっていマス。最近営業している気配もありまセン。

 通行人の男性に、尋ねてみマス。

「すみまセン」

「うわ、すっごい美人……はい、なんでしょう」

「ここ『エロゲアイランド』は、休業してるのデスか?」

「たしか一週間くらい前に、潰れたと思うけど」

「えっ」

 潰れた?

 いや『潰れた』……のではない。

 おそらくレジスタンスであることがバレ、凌辱国家ニッポンを守る勢力に『潰された』のだ。

(なんということ……!)

 店主の無念を思うと、目頭が熱くなりマス。

 男性が驚いた様子で、

「え、なんでエロゲーの店なんか、潰れて涙ぐんでんの!?」

(なんか、ですって?)

 店主は、祖国の日本をマトモにするため、己をかえりみずに頑張ったというのに……その事も知らず……!

(せめて私が、敬意をひょうさねば)

 ひざまずき、祈りを捧げようと思いましたが……

(凌辱国家の手先が、ここを見張っている恐れもありマス)

 祈るところを見られては、マークされるかも知れまセン。

 断腸の思いで、その場を後にしました。

 誇り高き人のために、堂々と祈ることもできナイ……なんて悲しい事でショウか。

 そして、ハッとしました

(『エロゲアイランド』の協力者たる、パパは無事でしょうか?)

 芋づる式に、魔の手が伸びる恐れがありマス。

 私の祖国は日本から経済援助を受けていマス。びを売るため、パパを捕らえて差し出すかもしれまセン。

 スマホで、パパに国際電話をかけます。

(無事でいてくだサイ……!)

 一分ほどコールしても、出ません。まさか既に、もう!

 そう危惧した時——『ハーイ!』とパパの声が聞こえました。

「パパ、どうしてすぐに出ないのデスか」

『掃除機使ったオナニーしてたから、その音で聞こえまセンでした』

「そうでしたか、よかった」

 ホッと、胸をなで下ろしマス。

「でも、パパ大変です! レジスタンス組織『エロゲアイランド』が潰されまシタ!」

『はい??』

 パパは少し沈黙したあと『ああ、そういう設定デシたね』と妙な前置きをしてから、

『大丈夫。私は日本の『オナトピア』という店で通販……いや、新たなレジスタンス組織と繋がり、そこからエロゲを入手し、情報を得ていマス』

「おお、リスクの分散をおこたらないのデスね。さすがパパ」

『ハッハッハ!』

 私は感嘆すると同時に……申し訳ない気持ちになります。

 いい機会なので、話してみることにしました。 

「あのぅ」

『なんデス、ソーニャ?』

「私は以前、パパのことを……無職な上に大麻ばっかり吸ってる『人糞じんぷんにも劣るゲロカス』と思っていまシタ」

『オー、ゲロカス……』

「でも今は、とても誇らしいのデス! 日本を救うため頑張ってるパパが!」

 パパは、しばらく沈黙。

 そして何故か、おずおずと尋ねてきます。

『ソーニャ……もしもデスよ? パパが言ってる事が、全て嘘だったらどうしマスか?』

 よくわからない質問デス。

 ただ、仮に嘘だとしたら—— 

「パパを、マイコプラズマ並の存在と思うでショウね」

『性病の病原菌ではないデスか』

 アウチ! とパパは言ったあと、

『ヘイ、ソーニャ、ちょっと辛いことがあったんで、大麻吸おうと思いマース。バイバーイ!』

 『辛い事』とは、いったい何でしょうか。

 私のような小娘には知るよしもありませんが、ラリるなり掃除機オナニーするなりして、元気を取り戻して欲しいです。

(さて、私も頑張りまショウ)

 スーパーに立ち寄ります。

 新たに考案した凌辱対策の特訓に、必要なものを買うために。



 帰宅しました。いとしの大助は、自室にいるようデス。

 さっそく台所へ行き、特訓を開始しマス。

 スーパーで購入したフランクフルトをで、皿によそいました。言うまでもないデスが、チ●ポをしています。

 なぜこれを用意したかというと——

(エロゲーでは、女性がチ●ポを触ると『熱い』『やけどしそう……』などと言いマス)

 処女なので触ったことはありまセンが、以上の事からチ●ポは『やけどしそうなほど熱い』ということが分かりマス。

(肉便器になれば、多量のチ●ポをあつかうことになる)

 今のうちに熱々のチ●ポを想定して特訓するのは、必須といえるでショウ。

(ではまず、握ってみマス)

 茹でたてのフランクフルトに、手を伸ばします——

(あつっ!)

 反射的に離してしまいマシタ。これをシゴいたりするなんて、不可能に近いのでは?

 己の無力さに打ちのめされていると、さらに衝撃的なことに気付きマス。

(そういえば——!)

 エロゲーのヒロインは、ザーメンも『熱い』と表現しマス。

 私は今まで散々、疑似ぎじザーメンを飲んできまシタ。ですがその温度には、全く無頓着むとんちゃくでシタ。

(私は、なんと愚かな……)

 手早く片栗粉で疑似ザーメンを作り、火にかけます。

 やがて、もうもうと湯気が出てきました。思わず頬がひきつります。 

(肉便器達は、こういうのを顔射されたり、チ●ポから直飲じかのみするのデスか……?)

 なんと、過酷なのか。

(でも私は凌辱を乗り越え、大助と結ばれるのデス! これはそのための特訓!)

 鍋を持ちあげ——

 熱々の疑似ザーメンを顔面にぶっかけようとした時、大助が台所へ入ってきまシタ。

 

「ソーニャ、帰ってたのか……っておぉおおおおおい!? 何やってんだ!?」


「止めないでくだサイ。私は愚かだったのデス」

「愚か?」

「疑似ザーメンは熱々にしなければ、無意味だと知ったのデス」

「更に愚かになってるじゃねえか!」

 鍋を、大助に取り上げられマス。

 私は特訓の理由を、理路整然と説明しまシタ。

 すると大助は「なんでこんな事、わざわざ説明しなきゃならん」と頭を抱えながら、

「いいかいソーニャ……チ●ポもザーメンも、熱くないんだ」

「ハッ、馬鹿な」

「鼻で笑いやがった」

 じゃあ証明してやる、と大助が言い、ジロリと見てきマス。

(ま、まさかチ●ポを私に触らせて、証明を?)

 そう思ったのもつかの間、大助は台所を出て行って、すぐ戻ってきました。

 手にはエロDVD(実写)を持っています。

 居間のデッキに入れて再生。テレビにエロい映像が映ります。


『れろっ……ぺろぺろっ。貴方の先走り汁……いっぱい出てくる……』


 女性が男優のチ●ポ(モザイクがあってよく見えまセンが)をしゃぶったり、顔射されたりしていマス。

「どうだソーニャ。女性は、チ●ポやザーメンを熱がってないだろ?」

「ハイ……どういうことデス!?」

 この女性は、特殊な訓練でもしたのデスか?

「エロゲーの『熱い』は、言葉のアヤ。誇張した表現にすぎないからだ」

「!!」

 衝撃の事実デス。日本語って難しい……

「大助。さっきは、鼻で笑ってゴメンなさい」

「わかればいいよ。でも少し考えればわかるだろ?」

 確かにそうデス。なぜなら——

「チ●ポが熱いなら、オナニーが日課の大助は、右手が慢性的まんせいてき火傷やけどしてるはずデスものね」

「……まあ、うん……」

 大助は頬をかきながら、うなずきました。

(ありがトウ、大助)

 彼は沢山のことを、私に教えてくれマス。初恋の切なさだけでなく、チ●ポやザーメンの温度まで。

 うっとりと大助を見ていましたが、エロDVDの「あんあんあん」「きもちいー!! イクぅうーー!!」などの声が部屋に響きます。

 私は赤面し、モジモジしながら、

「あの、私……こういうの見るの始めてなんデス」

「え、マジで? 淫語いんご製造機のお前が」

「早く止めてくだサイ……大助の、エッチ……」

「理不尽にも程があるわ」

 大助が映像を止めます。

 その時、気付いてしまいました。

(あ、大助のズボンの前が——パンパンになってる)

 エロDVDで、フル勃起してしまったようデス。

 ここは『気遣いのできる女』というのを、アピールしておきまショウ。 

「部屋で、オナニーしてきたらどうデス?」

 大助は「いや」と首を振り、

「お前に『1日2回』までに射精管理されてるだろ。今日はもう2回したから、我慢する」

「大助……」

 オナニーを既に2回したなんて、私にはわからないのに。

 嘘はつけない愚直さに、惚れ直してしまいマス。素敵……!

 そして私は。

(肉便器になろうとも、それを乗り越えて、ぜったい貴方と結ばれマス——)

 その決意を、新たにしたのでシタ。








後書き:モチベーションにつながるので、

面白かったら作品の目次ページの、レビュー欄から

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あと、ファミ通文庫から発売中のラノベ

『朝日奈さんクエスト〜センパイ、私を一つだけ褒めてみてください〜』

原作を担当した漫画

『香好さんはかぎまわる』

も、よろしくお願いします







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