第2話 ソーニャ、部活を検討する

 放課後。

 僕は一年二組の教室で、銀髪美少女ソーニャと話していた。

 ソーニャは手に瓶ジュース『オロロミンC』を持っている。ほぼ毎日これを飲んでいる。

「お前『オロロミンC』好きなんだな」

「イイエ、別に」

 ソーニャは首を横に振り、

「こういうビタミンたっぷりのものを飲んでおけば、私が凌辱されて失禁したときに、しっかり黄色いおしっこが出せるでしょう?」

「しっかりの意味がわからん」

 ソーニャはあどけなく首をかしげて、

「どうしてデスか? 私がしてきた凌辱エロゲーでは、ヒロインのおしっこは皆、黄色かったデスよ?」

 ――ソーニャは、日本の凌辱エロゲーのみで日本語と日本文化を覚えた。

 そのため『日本の高校は全て、肉便器を育成するための学園』と思いこんでいるキ●ガイだ。

 ゆえにヨーロッパから来日する前、凌辱に供えて様々な準備をしてきたという。

 黄色いおしっこもその一つなのか?

「まあ確かに、エロゲでヒロインが漏らすおしっこって、黄色いけど……なんでだろうな?」

「おそらく尿と、潮の差別化をはかるかと思われマス」

 潮て。

 なんか疲れてきた僕は、頬杖をついて窓の外を見た。

 部活中の男子が手を止めて、ソーニャに見とれている。まさかこの妖精みたいな美少女が、尿とか潮とかの会話をしてるとは思うまい。

「ところで、ソーニャは部活入らないのか?」

 ソーニャが転校してきて一ヶ月ほどだが、どこの部にも所属していない。

「部活、デスか。興味はありマスね」

「なんか特技とかないの?」

 ありマス、とソーニャは僕の手を引いて、立ち上がらせた。

 そして連れてこられたのは、音楽室。ソーニャはピアノに向かって座る。

 瞬間。

 空気がピシッと張り詰めた。

 そしてソーニャの細い指が、それぞれ別の生き物のように動き、荒々しく――だが精緻せいちきわまりなくメロディーを奏でていく。

 ぞわっ、と全身が震えた。

 僕のような素人でも、すさまじい演奏だとわかる。

(合唱部とかがこれを聞いたら、絶対『入部してくれ』というだろうな)

 三分ほどの演奏をソーニャが終える。僕はおもわず拍手した。

「凄いな。ソーニャ、見直したよ」

「私、ずっと一生懸命、ピアノを練習してきまシタ……」

 ソーニャは己の両手を見つめ、

「複数人に凌辱されても、両手で別のチ●ポをしごけるように」

「動機!!」

 見直したどころか、評価が更に下がった。

「私、欧州ピアノ界の最高峰といわれる『モーツァルト・ピアノコンクール』の優勝者デス」

「お前に負けたピアニストが浮かばれない……」

 神は何故こんな奴に、音楽の才能を与えたもうたか。

 まあモーツァルトも女性に『うんこ! うんこ! あぁ、なんたる甘美な言葉だ、うんこ!』とかいう手紙を送っていたらしいけどな。

 ソーニャはピアノを適当に鳴らしながら、 

「あと気になる部活は、放送部デスかねー」

「放送部っていうと……」

 このまえ体育祭のリレーで『さあ、1組の田中君、先頭です!』とか実況してたな。

「なんで放送部に?」

「そんなの、きまってるじゃないですか」

 ソーニャは鼻で笑い、

「実況の力を鍛えて、凌辱中『膣内なかで……わたしの膣内なかで! すっごく濃いのが出てるぅうううううう!! イキましゅうううう!!』とか解説できるようにするためデス」

「キマってるのはお前の頭だな」

 しかしなぜエロゲーのエロシーンで、ヒロインは己の状況を解説するんだろうな?

「または料理部デスかね。サラダオイルを持ち出しても不自然に思われまセンから」

「どうせ凌辱関連なんだろうけど、言ってみろ」

「肉便器にされた際、太股に『正」の文字を油性マジックで書かれても、サラダオイルを濡れば消せるんデスよ。インクが油に溶けるんデス」

「いらない豆知識をありがとう」

 ソーニャは豊かな胸を張り、

「どうですか、私の凌辱対策の数々。完璧デス」

「うむ……」

 僕は頷いた。

 そして――全力で突っ込む。

「なんでお前の『凌辱対策』って、全部凌辱されてからの話なんだよ!!」

 凌辱される前になんとかしようよ。

「両手でしごくのが上手いとか、『膣内なかで出てるぅ!』と解説するとか、その時点で凌辱されてるじゃん」

 ソーニャは驚きに目を見ひらいている。いま気付いたの?

 しゅんと肩を落として、

「そんな……では、ピアノで欧州一になったのは無駄だったのですね……」

「いやそれは無駄ではないかも……め、めんどくさいな……」

 普通に、ピアニストとして生きていけばいいと思うが。

 僕は頭をかいて、

「つうか心配しすぎ。凌辱なんて起きないよ。学校生活、極めて平和じゃん」

「それは今が『日常パート』だからデス」

「なにそれ?」

「日常が穏やかであればあるほど、後の凌辱が際立つ……そのための平和な期間デスね」

 ああ、そういう日常パートは、抜きゲーで確かにあるな。ちなみに僕は、エロシーンまで全部スキップするけど。

「ですが油断はできまセン。抜きゲーで日常パートをスキップする貴方のように、私もすぐに凌辱される恐れもありマス」

「僕がスキップすること、なんで知ってんだ!」

 この子怖い……と震える僕を、ソーニャが指さして、

「ダメですよ。18歳未満のうちにエロゲーをやると、精神の発達に悪影響をおよぼすかもしれまセンよ?」

「君が言うと説得力がすさまじいな……」

 精神の発達に、悪影響を及ぼしまくっている。

 ソーニャは「うーん」と伸びをして、

「さて、そろそろ帰りましょうか。凌辱エロゲの日常パートのように、普通の会話をシテ」

「へいへい」

「ところで日本の文化祭って、壁に無数にあけた穴からチ●ポをつっこんで、それを女子生徒が性処理するんデスよね?」

「お前にとっての、普通の会話かよ!」







後書き:モチベーションにつながるので、

面白かったら作品の目次ページの、レビュー欄から

☆、レビュー等での評価お願いいたします


あと、ファミ通文庫から発売中のラノベ

『朝日奈さんクエスト〜センパイ、私を一つだけ褒めてみてください〜』

原作を担当した漫画

『香好さんはかぎまわる』

も、よろしくお願いします




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