滝田聡司の告白 3
……。
なんかもう、カッコわるすぎて言葉もねえよなオレ……。生きててすみませんって気がしてきたぞ。
……ああ、豊浦がああいうこと言うやつだったっていうのが意外か?
うるさいだけで音楽じゃないなんて、おまえが言うかって感じだよな、今から考えれば。
この半年後、千渡は豊浦のことを「陽気なチャルメラ」って言ったんだっけ? 変われば変わるもんだよな、ほんと。
まあ、そうだな。豊浦は、今でこそ派手で陽気なトランペット吹きで通ってるけど、昔はそうでもなかったんだよ。
あいつ意外と、神経質なところあってな。今もひょっとしたらそうなのかもしれないけど、この頃はそれが顕著だったんだ。
春日もこの頃はまだ、頼りなかったよな。
部長になるのが決まって、すごく不安な時期だったのもあるだろうな。みんなに嫌われないようにって気を遣って、でもそれが逆に相手に気を遣わせる結果になっていた。八方美人で気に食わないって言ってるやつもいたくらいだよ。
個性の強い部だし、そんなんだったから余計に、不安は強かったんだろう。でもあのときオレは自分のことしか考えてなかったから、あいつのフォローなんてしてやれなかったんだ。
……な? かっこ悪いだろ。
湊はオレたちのことをものすごい先輩たちだって思ってくれてたみたいだけど、絶対そんなもんじゃねーよ。あいつはこのときのオレたちを知らないから、そんな風に言えるんだ。
神経質で頼りなくて自分勝手で――やりたいことをやってたのは、軽音部もオレたちもある意味一緒だったんだろうな。
そのくせ、やりたいことなんてひとつもやれてないっていう不満があってさ。だからこそ、ロックな軽音部に憧れたっていうのはあったかな。
条理とか音楽的探究だとかそういう小難しい概念なんざ全部ぶっ壊して、「これだろ!」って存在で示すカッコイイやつに、オレはなりたかったんだ。
今だって、そうだよ。
ていうか元からオレ、吹奏楽部じゃなくて軽音部に入るつもりだったんだよなー。
入学したときに間違えて音楽室行っちまってさ。言いくるめられてなんだかよくわかんないうちにいろんな打楽器やらされて。それに不満はあったけど、でもなんとなく辞められなくて、ここまで来てたんだ。
そんなところにこの軽音部からのオファーだよ。飛びついちまったのも、無理はないと思う。
……ああ。吹奏楽部に入ったことを、後悔はしてねえよ?
豊浦とか春日とかに会えてよかったって、今は思ってるよ。……うわ、なに恥ずかしいこと言ってんのオレ。
……えーと。
ああ、うん。でもやっぱり、もしあのとき間違えずに軽音部のほうに行ってたら、どうなってたんだろうなっていうのは、今も考える。
どうだったんだろうなオレ。最初から軽音部に行ってたら。
それはそれで、今と大して変わらないオレができてたのかな。
それとも、今よりもっとロクでもないやつになってたのかな。
わかんねえけど、それはそれで楽しかったんだろうと思う。
だって軽音部にも、おもしろいやつらはいっぱいいたんだからな。
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