第17話
いつの日か友人と出かけた温泉旅行。旅先の人里離れた地に、新前の記者さんやアナウンサーさんが参拝する言葉を祀るという小さな神社があることを知りました。
友人は興味がないというので、朝方一人、宿泊先を出て、散歩がてら神社を参拝しに行きました。傷みが激しく、紅色の塗装の大部分がはげた鳥居をくぐり、砂利道を歩き、本堂へ向かうと絵馬が重なり合うようにぶら下がっているのを見つけました。
私はお爺が語ってくれた子供には難解で、不思議な世界の話を忘れたことはありません。以来、言葉への意識は高く、国語の成績は常に上位でした。本当は言葉に携わる仕事に就きたいのですが、お給金の事で母親と相談し、銀行員をしています。お客さんなどでお金をたくさん蓄えているのに、全く無教養な言葉を使う人間を相手にすることに嫌気がさし、転職を考える機会なのかなと、自分を見つめ直す時でもありました。
私の目に驚きの絵馬が飛び込んできました。
「言葉を大事に、言葉を使って人を幸せにしたい」という意思表示が書かれていたのです。
他の絵馬は就職祈願や出世祈願と、叶えて欲しい欲を書いているのがほとんどでした。絵馬に意思表示を書き、強い願いを抱く氏名は、菅田誠こと幼馴染のカンちゃんなのです。
嬉しさに体内に電流が走りました。離れたはずのカンちゃん、離れ離れになってわずかの間は文通をしましたが、受験や部活動で忙しくなった二人は疎遠になり、それっきりの関係となってしまいました。そのカンちゃんが同じ神社を訪れていたことと、私と同じくらい言葉への意識が高い事を知り感激したのです。
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