第十一段 長崎駅前
長崎が外部より人を迎える際、その玄関となるのは長崎駅周辺である。
以前はやや南側に位置していたそうであるが、現在は浦上と浜町という二大繁華街の中心に位置しており、交通の要所として確固たる地位を築いている。
また、複合商業が隣接するようになってからは若者も集うようになり、長崎の中で最も活気のあるの一つ場所になっている。
ただ、異文化を売りにしているにもかかわらず、消費者金融とパチンコ屋の看板が出迎えているという現状はいかがなものかと思われるが。
また、長崎駅周辺の路地に回れば複数の料理屋が軒を連ねており、それぞれに趣向を凝らしている。
チェーンの居酒屋やファーストフード店も見られはするが、完全な侵攻を防ぐかのようにゲリラ戦を展開している。
昔は今よりも細々とした店が多かったが、最近は少し名を出す店も増えており、抵抗は大きくなりつつあるのかも知れない。
こうした細々とした抵抗する店の中で、私は幼少の多くを過ごした。
そのため、この周辺は私を形作ったものの一つとして、避けて通ることができない。
西坂公園にある二十六聖人像は子供の頃には謎の遺跡であったし、大黒町といえば自分の庭であった。
また、近くにある大黒市場は品揃えがよく、安価ながらもいい「仕事」が並んでいた。
今では、そのようなことを望むことなどはできず、閑古鳥がシャッターの合間で鳴くのをただ眺めるより他にない。
最近、牛肉や豚の三枚肉を口にすることがめっきり少なくなったが、こうした品は量販店では手に入らないのである。
そして、変わったものといえば『我が家』である。
今では移転したがためにそこには無いが、どことなく、愛着だけは残っている。
そのため、一度だけ跡地の飲み屋に入った際には、思わず何かが込み上げてきた。
杯の 底で見詰める 幼き目 どこか嬉しさ どこか寂しさ
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