第86話 レベル制度を知らないらしい
僕に話を聞くためにとりあえず生徒会長室みたいな聖女様の部屋に戻ってきた。そして、もとの状態に戻った。
「あのー……教えていただけませんか? あなたの職業を。どんな職業なら、そんなにも強くなれるのですか?」
どうするべきだろうか? なにか適当なことを言っても嘘だと言われるだけ。でも、言わないと疑われる。
はぁ。嘘を見破られるって、厄介なスキルだな。
「……引きこもり、ですよ」
「ひ、引きこもり? あれが、引きこもりなんですか?」
「まぁ、そうですね」
「どういうことですか? 引きこもりという職業はあんなにも力を持つことができるんですか?」
「うーん、最初は弱かったですよ。でも、モンスターと戦ってレベルを上げて。そしたら、こんなふうに」
「……えーっと、れ、レベル?」
ん? もしかして、レベルという概念を知らないのか? ここはモンスターが入れない。だから、安全だと思って? でも、職業が使える時点で1体は倒したということ。それで、見逃してしまっていたら終わりだよなー……。
そういうことか。
みんなはレベル1なんだ。ということは、あれは演技じゃなくて、単に僕が本気でやりすぎただけってこと?
そりゃあ勝てるよな。レベルが30以上も違うってことなんだもんな。
「……そういうことか。みなさんはステータスを見たことがありますか?」
「「「す、ステータス?」」」
ほら、やっぱり。最初にステータスと確かめない限りこの存在を知ることができない。それでもスキルが使えるのはみんながユニークジョブだからだ。
あの転移者の青年から聞いた話なんだけど、ユニークジョブの場合は自分で選んだりすることもできるし、ジョブの方が選ぶこともあるらしい。
つまり、これらはジョブが教えてくれていた。でも、ナビゲーターのようなスキルは無さそうだし、ジョブを持ったら本能で分かるということか。
……まぁ、だからこういうようなゲームをしたことがない人はまったくステータスという存在を知らないまま生きてきたということか。
「じゃあ、ステータスって言ってくれませんか? そしたら、ステータス画面があらわれると思うんです」
「わ、分かりました。」
「「「《ステータス》」」」
「な、なんですか、これ?」
「す、すごい……!」
「どうやって、できているんでしょうか?」
「それは分からないんだけどね。でも、出るって言うこととそれに書いてあることの説明くらいならできますよ。じゃあ、まずは職業の欄から……」
そして、はじめの頃ナビゲーターに説明されたのと同じようなことを説明した。職業やスキル、そしてヒットポイントやマジックポイントについてのこと。
まぁ、もちろんナビゲーターが変な解説したときとかもあったから、それは分かりやすくなるように工夫して話したけど。
「な、なるほど……」
「まさか、こんなものがあったとは。この世界はなんでゲームのような世界になっているんだろうな」
……これは、ゲームのように甘いものじゃない!
そんなふうに言えたら良かった。でも、これを話しちゃうと現実世界に起こっていることがどれだけ大変なことなのかが分かってしまう。
だから。今は言わないことにした。せめて、少しでもみんなに楽に生きてほしいから。
これで、いいんだ。
「じゃあ、さっそくですけど……」
僕は、話を変えた。嘘をついたらバレるのなら、違う話題にすればいい。
ドカーーンッ!!!!
ふと、音が聞こえた。それも、ここにかなり近くのところから。このマンションの最上階から窓を覗いてみると、街の向こうに『あいつら』であろう人がいた。
多分だけど、でも隣にいる聖女様たちの反応を見ると間違いなさそうだ。
「ど、どうしますか?」
僕は、今回はひとりで戦わないことにした。仲間がいるのなら協力したほうがいいし。危険になったらみんなを逃せばいいし。
そして、とりあえず聖女様にどうするべきか聞いてみた。すると……
「みんな、戦いましょう。私はここに住んでいる人に呼びかけます。『自分の住む町を守ろうと。もし、不利になれば逃げても構わないから』と。」
聖女様の顔はさっきの驚いていた顔とは真逆に変わっていた。さすが、聖女様だ。さすが、みんなの上に立う人だ。
きちんと、ここに住んでいるみんなの配慮までしながらも戦っていこうとしている。
僕も、聖女様に少しでも役にたてるように頑張ろうと心に決めた。
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