第41話 次に行くところ
「……それで、どこに行こう?」
「うーん……どうしようかなぁ……」
僕と楓さんは、今からどこに行くべきなのかを考えていた。……いや、というよりは、どこに行きたいかを考えているのほうが正しいんだろう。
やっぱり、義務より自由を大事にしないと。行かなきゃっていうよりも、行きたいっていうところを考えるのは当然である。
「一応、僕と楓さんの家族に会いに行くのはまぁ一つの選択肢として当然だよね」
「うん、まぁだね」
「それで……この街になにか未練とかある?」
「別にないかな」
「だよねー……」
「家族に会いに行く。あと……、」
「あと……」
「さぁ……?」
「…………」
そう、考えがまとまらないでいた。二人で頭を悩ませるも、思いつく案がこれといってない。
……全然決まらないんだけど。家族に会いに行くとか、もう義務に近いんだよね。自由っていうのもあるから、行きたいのは行きたいんだけど。
「デェズニーランドとかに遊びに行く?」
「でも、今停電状態でしょ? だから、ほとんどの機械が動かないんじゃない?」
デェズニーランドとは、ウォルト・デェズニーっていう人が考えたキャラクターの集まった、いわゆる遊園地のようなもの。
いろんな遊び……遊具? があって、結構人気の公共施設だ。
「そうだよね。でも、もしかしたら千尋くんなら自力で生活魔法? で出来そうな気がするんだけど」
「いや、それは……でき…………そう」
「ほらぁ……」
「いや、できないと信じよう」
もしかしたら……本当にできるのかも。生活魔法は静電気くらいとかナビゲーターが言っていたけど……嘘でしょ。
《嘘じゃない……予定だったんですよ。っていうか、普通はあんなのおかしいんですから。多分、職業の裏スキルとかであるんでしょうね。》
へえー。……って、裏スキル?
《はい、ステータス状にかかれていなくても、なにか裏としてなにかの力が与えられている場合があります。それが、裏スキルですね。》
そうなんだ、裏スキル……か。となると、僕の中にあるのは、《レベルアップ時のスキル効果上昇》とか?
《それは、私にも分かりません。すみません、私の力不足です》
いや、別にいいよ。それが分かっただけでもありがたいし。
《どうも。》
「……って、どんどん話題から離れていってるじゃん……」
「ん?」
「あっ…いや、なんでもない」
「……そ、そう?」
それで、本当にどうしようか。何も決まらないし……それなら。
「それなら……僕たちの家族に会いに行く?」
「……そうだね。何も決まらないし。それに、その間に見つければいいよね。ここで留まっているわけにも行かないし」
「そうしよう」
「うん!」
そして、次に行く場所が決まった。目指せ、僕と楓さんの家だ。
「それで、まずはどっちにいくかとかある? 楓さんは、先に楓さんの親のところに行きたい?」
「うーん……じゃあ、いい?」
「いいよ。いつも僕の意見がまず先って感じだった気がするから」
「ありがとう」
「ん、どういたしまして」
これで、向かう予定は決まった。まずは、楓さんの家まで行き、楓さんの両親に会いに行く。そして、その後に僕の家に行き、僕の両親と幼馴染に会いに行く。
それでいて、なにか予定ができたら、そのたびにどっちに行くかを考える。
よしっ、完璧。
「それにしても……これ、結婚しにいくときに挨拶するじゃない? なんか互いの家に行くって、そんな感じしない?」
「……言わないで。それ聞くと、多分、おそらく、ってか絶対にすっごい緊張するから」
「うん、わかる……。今言って、すっごい後悔した……。めっちゃ恥ずかしい……」
最後の最後で締まらない、僕と楓さんだった。
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