華と鐡*万物の霊長(アルストロメリア)

不磨 百世

第1話


母さん。俺を産んでここまで育ててくれて沢山…沢山これから言うはずだった何千何万回分のの気持ちを込める。

ありがとう。さようなら。

2020年5月10日。母の日の事だった。

俺の親父はロシアの軍人で俺が3歳の時に亡くなったそうだ。その後の16年間、母さんは女手一つで俺を育ててくれた。

母さんはよく俺に「みんなと少し違ところがあるくらいで下を向くような男に成ったらダメだ」と言っていた。


俺はそんなに強い母さんが大好きだったし尊敬していた。だから俺が5歳の時から毎年母の日には感謝の言葉と一緒にプレゼントを渡していた。


俺が死んだ日も感謝の手紙を書き、母さんの大好きなアルストロメリアの花を買って帰る道中の事だった。逃走中の銀行強盗にばったりと出くわしてしまい拳銃で胸に2発だった。

自分の身体がまるで他人のもののように思い通りに動かず冷たくなっていくのを感じる中、俺は母さんへの申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「母さん…ここまで育ててくれたのに先に死んじまうなんて母さん悲しむよな…せめてもっともっと沢山あひがとうって言いたかったな。」


自分を撃った犯人に警官が追いつき取り押さえているのを横目で見ながら俺の意識は途切れた。

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