オタクな私たちは異世界で戸惑いません

red-panda

第1話 よくある異世界転移

 帰宅部の俺たちは、しっかりと部活に励んでいた。

 隣に歩いているのは、幼少期からの腐れ縁の鈴木ななみ。クラスのあだ名は、オタ子。言っておくが、腐っているわけではない。ここ重要。

 容姿は、中の中だろう。

 ブサイクではない、と思う。

 かわいくはない、と思う。

 まあ、そんな感じだ。

 

 小学校から高校1年の今まで、ずっとクラスが同じだ。何か謎の力が働いているのかもしれない。


「今日も私の家寄っていく?」


「あー、そうするわ。借りたい漫画あるし」


「そういえばそんなこと言ってたね。忘れてた」

 

 腐れ縁だからと言って仲が悪いわけではない。こうして漫画の貸し借りは当たり前。貸し借りでトラブったことはほとんどない。例外は、ななみが俺の貸した漫画にオレンジジュースこぼしたくらいだ。


「そういえばこの前の中間どうだった?」


「うっ」


 ななみは顔をしかめる。この様子だと絶対に赤点あるな。


「あんたは?」


「完璧だな」


 俺はどや顔で言う。


「どうせ、全部40点代でしょ。そんな、どや顔すんな」


「赤点あるやつにいわれたくねぇよ」


「でも、62点取ったものもあるし」


 ななみもどや顔をする。

 

「やめよう。そんな低レベルな話をするのは。」


「お前が話振ったんじゃん」


 ぺらぺらとしゃべりながら歩いていく。

 ななみの家を行くためにいつもより手前の横断歩道を渡った。これが悪かった。

 プッーーー

 車のクラクションの音か聞こえる。

 俺たちは音ののする方を向く。

 トラックが俺たちのほうへと猛スピードで向かってきていた。今思えば、典型のパターンだった。日本では暴走トラック=異世界転移装置は常識だ。まあ、こんなこと考える余裕はなかった。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


俺たちは異世界転移した。

 

 

 

 

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