オッド愛

狐火

一話目

 庄司桔平38歳、IT企業に勤め二児の父親である俺は、傍から見たらごく普通の一般男性であった。


 週末の休みは妻の代わりに家の掃除や買い物をし子供たちを公園に連れて行く、理想的な旦那であり父親だ。近所の人の俺の評価は上々で、妻の愛子はよくよく近所の奥さんに羨ましがられていた。


 そんな俺の子供は、上が10歳の男の子で名前を雪人と言った。雪人は生まれつき虹彩異色症を患っていた。右目が青く左目が茶色で、見え方には若干の世間とのずれはあったが生活には問題がない程度であった。


 俺が最初に雪人を抱いたとき、すぐにこの子は俺の子ではないのではないかという疑念を抱いた。俺の家系には目が青い人なんていなかった。けれどその後の医師の診断で病気であることを知らされた。妻は雪人の先を案じたが俺の思考には雪人のこの先の人生がどうなるのかなんて考えは全くもって起きなかった。医者の説明を受けてもなお俺は妻の浮気を疑っていたのだ。


 二番目の子は女の子で名前を琴という。とても可愛らしく妻に似ていた。俺は琴を劇愛していた。こんなにもかわいい子がこの世に存在するのかと天地がひっくり返ったような衝撃を、一番最初に琴を見たときに受けた。


 雪人と比べてはるかに愛着を持った俺は琴ばかりを可愛がり、愛子は少し気に入らないようだった。それでも俺は休日にはちゃんと雪人も公園に連れて行き、せがまれたゲームを買ってやったりしていた。自分が本当に雪人の父親なのか定かではないのにも関わらず俺はしっかり雪人の父親の役割を果たしていた。


 俺には人には言えない秘密があった。妻にも親にも誰にも話していないが性的嗜好が風変わりである。つまりは逸脱した性道徳を持っていたのだ。


 一般的にはしたがらないような性行為を俺は好む。しかし俺は妻にはそんな行為を要求したことはなかった。金を出して風俗でその欲求を解消していたが、それに物足りなさを感じなくなった俺は街で深夜までうろついている女の子を誘い、そう言った行為に至ることも歳を重ねるごとに増えてきた。


 勿論自分の非道さをわかっている俺はきちんとした額をその子たちにも払っていた。SNSなどで同じ趣味の奴を募り行為に至っても満足感はなかった。決して自分とは同じ性的嗜好を持っていない、言わば普通の人間と逸脱した行為をすることに俺は非常に興奮するのであった。


 最低だと言われればそれまでだが、自分の最低さに打ちひしがれながらも最低な行為を行う自分に俺は興奮している。俺は根っからの変態なのだ。俺が自分の異常さに気が付いたのは大学生の時であった。それまでは一般的な性的嗜好であったのだが、大学生になり親元を離れると俺は多くの娯楽を覚えた。


 きっかけは覚えていないが今の性の好みもそこで知り、最初は自分の趣味ではないと拒絶していたが段々とその行為に惹かれていく自分が居た。親からの仕送りもほとんど風俗に使うようになるまで堕ちた俺は自分の社会的体裁は何としても守ろうと、学業にはしっかりと取り組んでいた。


 そのおかげで今の有名なIT企業の会社に就職し出世コースを歩くことが出来ている。綺麗な奥さんをもらい長男も設け可愛い娘も出来た。傍から見ればなんて羨ましい人生だろうか。俺の欠点ともいえるこの性的嗜好も、自分の中では娯楽が他人よりも多いという長所と俺は捉えている。


 ただ残念なことに妻や子供に対して罪悪感を持っている。だから俺はいい父親であろうと努めていた。そんな俺の心境も知らず妻は幸せそうに専業主婦として暮らしている。地獄に堕ちるほどの秘密であるとは重々承知であったが、地獄に堕ちる覚悟をしてしまうほど俺は性行為が大好きであった。性行為を行わないならば生きていても仕方ないと思うほどであった。

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