第5話
「じゃあ、俺は見張りしとくから好きなだけ居たらいいよー」
私の肩をポンッと叩いて外に出ていく由藍さん。
カーテンを少し開けて中に入るとスヤスヤと眠ってる藍ちゃんが居た。
「藍ちゃん、もう私なんかに会いたくないかもしれないけど……会いに来たよ。
いつも…藍ちゃんが私を迎えに来てくれてたから
勇気を出すのに時間がかかってごめんね」
少しやつれた頬をするりと撫でる。
「まだ話したい事が沢山あるよ。
まだ、話し合ってない事が沢山あるよ…
今度は逃げないから…とことん話し合うから、だから…お願い。
死なないで……?」
ポロリと涙がこぼれ落ちる。
死んでほしくない。それだけは絶対に嫌だ。
「………ら……ん……?
あれ?何で蘭が此処に……聡は?
……あぁ、夢か。俺夢の中まで蘭を泣かせちゃうんだなぁ」
悲しげに私の頬から流れ落ちる涙を拭う藍ちゃん
目を開けた藍ちゃんに驚いて私は何も言えなくなった。
「ごめんな。泣かせてごめんな。
離してやれなくてごめん。だけど、好きだ。
どうしようないほど好きなんだ。
お願いだ。泣かないでくれ。蘭が泣くとどうしていいか分からなくなる。」
どうして、こんな状態になっても私に謝るのか
違う、悪いのは藍ちゃんじゃない。
「…っ違うよ、違う。
悪いのは藍ちゃんじゃない。
私が、藍ちゃんとちゃんと向き合わなかったから全部おかしくなった。
怖かった…私怖かったの。
藍ちゃんに捨てられるのが、周りの目が怖かった。
自分に藍ちゃんに愛される価値がない事自分が一番良く分かってるからっ……だからっ…いつか藍ちゃんに捨てられるのが怖かった…
それならっ…向き合わなければ…藍ちゃんを好きにならなければ傷つかないって……そう思ったの」
涙で前がぼやけて藍ちゃんがどういう顔をしてるのか分からない。
自分の気持ちを伝えるのは今も怖い。
只でさえ言う事も伝えたい事も纏まってない。
「俺が蘭を捨てるなんて俺が死ぬまであり得ないよ。
蘭が泣いたって俺を憎んだって……俺は手放してやれなかったんだから。
それに、蘭は蘭が言う程価値が無い人間じゃないよ。
蘭は俺に光をくれる。
蘭がそばに居るだけで幸せな気持ちになるし
蘭の事を思い浮かべると自然と笑顔になる。
全部蘭に出会う前には俺が持ってなかったものだ。
それに、蘭が居なかったらここまで生きる事も無かったと思う。
蘭が居たから、頑張って生きてきた。
そば居たかったし、何より……またあの笑顔が見たかった。」
目をゴシゴシと擦ると今にも泣きそうな藍ちゃんの顔があった。
「わ、私ね…藍ちゃんが好きだよ。
だけど、藍ちゃんと私の好きの重さが違うの。追いつけないの…
そ、それに、私…汚いし…っ…不細工だしっ…面倒くさい性格してるっ」
「……まだ俺の事好きって…言ってくれるんだな。
ハハッ……何て幸せな夢なんだろ。もう覚めなくていいや。」
驚いたような顔をして顔の上に腕を乗せる藍ちゃん。
藍ちゃんの頬に涙が伝うのが見えた。
好き その言葉を自分の意志で最後に言ったのは何時だっただろう。
言葉1つで彼はこんなにも泣いてしまう事を私は知らなかった。
「藍ちゃん、私今まで藍ちゃんからも藍ちゃんの気持ちからも…自分の気持ちからも逃げてきた。
傷つくのが怖かった。傷つけるのが…怖かった。
だけど、もう逃げないから…ちゃんと、ちゃんとっ…向き合うから……だから、私に藍ちゃんの時間を下さい」
頭を下げた私には藍ちゃんがどんな表情をしてるのかわからない。
ここまできてとても自分勝手なお願いだとは思う。
だけど、私は無知である事も罪だと知った。
知らなかったで済まされないこともあると知った。
だから、知りたい。それでどういう結果になったとしても…私は逃げずに受け止める。
「………もう……手放す事出来ないよ…?
また、俺馬鹿な事して蘭に辛い想いさせちゃうかもしれないよ……?」
「……その時は、ちゃんと話し合おう。
私達は、話を全然して来なかった。
きっと、話しても納得いかない事だってあると思う。
だけど、ちゃんとお互いが納得できる所まで話して二人で決めてこうよ。」
顔を上げて藍ちゃんの手を握ると、涙に濡れた目で私を見つめる藍ちゃん。
「……うん。もっともっと蘭と話していたい。
俺も…一人で勝手に決めない様にする。」
「その代わりに、お願いだから……もう俺の前から消えようとしないで…」
今にも消えてしまいそうな声で呟く藍ちゃんを見て胸が締め付けられる。
「もう、置いていかない。
ごめんね……本当にごめんね……っ」
藍ちゃんを抱きしめると静かに私の胸の中で泣く藍ちゃん。
私の頬からも絶え間なく涙がこぼれ落ちる。
I 愛 哀。 葉叶 @ht_25
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。I 愛 哀。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます