第1話

物心ついた時から俺は何処かおかしかった。

俺を殴る両親を嘲笑って反撃した事もある。

いつからか両親は俺に関わらなくなった。

せっかく楽しかったのに遊んでくれなくなった。


そんなある日、新しい学校で気になる女の子を見つけた。

1人ポツンとしてるのにイキイキとしていて俺とは違うナニカに惹かれた。

それが何なのか知りたくて彼女の事を調べた。

名前 家 趣味何から何まで調べた。

そして、彼女が散歩が趣味だという事がわかった。

だけど彼女との距離を縮める事が俺には出来なかった。


だからあの日俺は賭けをした。

彼女が通れば俺の勝ち。通らなければ彼女を諦める。

その日両親の神経を逆撫でしてワザとキレさせてワザと蹴られた。

痛み?そんなのもう対して感じない。


「…大丈夫?私絆創膏持ってるからあげる。

君の方が必要そうだから」


あぁ、賭けは俺の勝ちだ。

嬉しくて震える俺に何を勘違いしたのか彼女は絆創膏を置いて距離を取った。

どうやって話せば一番違和感がないんだろうか。

ここで失敗を犯す訳にはいかなかった。


「い、生きてる……?」


彼女は俺の顔を覗き込んできた。

キラキラしたビー玉みたいに綺麗な目。

俺の怪我を見て悲しそうに眉を下げてせっせと手当てする彼女がとても可愛くて堪らなかった。

包帯なんてグチャグチャで殆ど巻けてなかったけど

彼女が俺の為にやってくれた。それだけで俺の胸は温かった。


「…花田…蘭……さんだよね…?」


勇気を出して声をかけると何故かキョトンとした顔で俺を見た。


「う、うん。御影君大丈夫…?」


あぁ、彼女の視界に俺が入ってる。

それに俺の名前を知ってくれていた。

その事がどれだけ俺の心を踊らせるか彼女は知らない。


「大丈夫だよ。こんなの慣れっこだから」


今更痛いとか思わない。ただ折れてたら面倒だなと思うだけで。


「変な所見せてごめんね。

この事他の人には内緒にしてくれるかな?」


二人の秘密。秘密は人の心を掌握するのにもってこいだ。


「言わない。

だから、だから私には無理して笑わなくていいよ

慣れっこっていうけど痛いよ…っ?こんなの…悲しいよっ…」


突然俺の手を握ってボロポロと泣き始める蘭。

俺には何で蘭が泣くのか分からなかった。

痛い?そんなの感じたのいつだろう。覚えてない。


俺は蘭に泣きやんで欲しくて蘭が好きそうな花畑へ連れてった。

蘭は目をキラキラさせて嬉しそうに笑ってくれた。

花畑でクルクルと回る蘭は綺麗で今にも何処かへ飛んでいってしまいそうだった。


彼女はきっと磨けば光る原石だ。

だけど、誰にも気付かれたくない。

気付かなくていい。

早く………早く俺の元まで堕ちてきてよ。




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