小説家雹崎剣矢
戦我原に資料を渡した後の土曜日、志門と時雨は朝食を摂っていた。
「このトーストうまいな」
「この食パンは丁度CMでやってたやつよ」
「だから、CMでも言ってる通り、焼いてもよし・ジャムやバターをつけてもよし・ホットサンドにしてもよしなんだな。」
テレビでやっている立てこもり事件のニュースを見て桃子は言った。
「怖いわねー。今日出かけるのでしょう?時雨たちも気をつけなさいよ」
「大丈夫よ志門がいれば」
「まあ、そうね。志門君がいれば大丈夫かしら?」
「そうよ!志門がいれば大丈夫」
そう言って時雨たちは出かける準備を始めた。
ーーー横浜市明星町カフェ〈ヨンシカク〉前10:55分ーーーーーーーーーーーーー
「それにしても今日は暑いなぁ」
「もうすぐ夏休みね。」
「ああ、後2週間だな。」
二人が歩いていると前から人が走ってきた。
「おいっ、前を見ろ時雨!」
「えっ、きゃっ」
「わっ!」
志門がの言葉には気がついたものの向かってきていた男性を避けることは出来ずぶつかってしまった。
「おっと、すまない。大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
「そうか、なら急いでいるから」
そう言ってぶつかった男性は走って去っていった。
「あれ?さっきの人の落とし物かしら?」
時雨が視線を向けた先には封筒が落ちていた。
「ああ、そうかもしれないな。って。ああっ!」
そう言いながら封筒を拾おうとすると中に入っていた紙束が落ちてしまった。
「あら、これは小説の原稿?」
「そうみたいだな。エデン・ワールドって書いてある。」
「エデン・ワールド!?」
「知っているのか時雨」
「エデン・ワールドというのは、600万部突破している人気ラノベで、作者は雹崎剣矢。ストーリーは…」
目をキラキラさせながら時雨は小説の内容について語り始めた。
「時雨、詳しい話は家に帰ってから聞かせてくれ。まずはこの原稿届けることが先だろ」
「あら、そうだったわね。」
「そういえば、エデン・ワールドってどこの出版社なんだ?」
「確か、角山ブーツ文庫だったはず…」
そう言うと時雨はスマホを取り出し調べ始めた
「合ってる!場所はここから徒歩10分」
「じゃあ急いで向かわないとな。さっきの人も困ってると思うし」
志門と時雨は地図アプリを頼りに出版社へと向かった。
ーーー横浜市明星町角山出版社前11:05分ーーーーーーーーーーー
志門と時雨が出版社の入口に着くとそこにはぶつかった男性が出てきた。
「先程ぶつかった人ですよね。原稿を落としていたので渡しに来ました。もしかして作者の雹崎さんですか?」
「そうですよ。私がいかにも〈小説家・ 雹崎剣矢ひょうさき けんや〉ですが。もしかしてファンの方かな。ありがとう。たった今原稿を落としてしまった事に気付いて、警察に届けられていないかと聞きに行こうといてたんだよ。ありがとう。お礼がしたいので、ここで待っててもらえるかな。」
そういうと、雹崎剣矢は出版社の中に入っていった。
ーーー横浜市明星町角山出版社前11:15分ーーーーーーーーーーー
「君たちありがとう、もし拾った人が悪い人だったSNSとかでネタバレされるところだったよ。ところで君たちの名前は?」
「俺が黒城志門でこっちが今宵時雨です。」
「志門君と時雨ちゃんだね。では私の行きつけのカフェに招待してあげよう。」
「「ありがとうございます。」」
雹崎は志門と時雨を連れて歩き出した。
ーーーーーーー
その頃一人の男が警察に追われていた。
「ここでいいか」
男は近くにあったファストフード店を見つけると刃物を隠しながらニヤリと笑った。
ーーーーーーー
カフェを目指して歩いていた雹崎達は悲鳴が聞こえ、足を止めた。
「何かあったみたいですね。」
「大通りの方だ。行ってみよう」
「志門待って、私も行く!」
雹崎たちは大通りへと走っていった。
ーーー横浜市明星町金星通り午前11:23分ーーーーーーーーーーー
大通りでは男がナイフを振り回していた。
「幸せそうにしやがって、殺してやる!」
男は時雨を見つけるとナイフを時雨に向かって突き刺そうとした。
「時雨、危ない!」
ナイフは時雨を庇った志門の肩をかすった。
「くっ」
「志門!!」
「大丈夫だ。時雨は救急車を呼べ。コイツは俺がなんとかする!パワーカード、ユニコーン!」
志門はユニコーンのカードをポケットから取り出し、通り魔に殴りかかった。
「ぐはっ」
志門に吹っ飛ばされた通り魔は壁にぶつかり気を失った。
「志門あの人は大丈夫なのか?」
雹崎は志門に質問する。
「雹崎さん、大丈夫です。ちゃんと殴る寸前で止めたので気絶しているだけです。なので今のうちに通報を」
「わかった。」
ーーー後日 横浜市明星町〈cafe&bar 平部〉ーーーーーーーーーーー
「通り魔の件は感謝するよ、志門君」
雹崎は頭を下げながら感謝を伝えた。
「いえ、あの後警察の対応ほとんどしてくれて、こちらこそありがとうございました。でも…」
「でも?なんだい?」
「何故誰もパワーカードを使ったことを覚えていなかったのかなと思いまして」
「パワーカード?ああ、こういう不思議なカードのことかな?」
雹崎は尾を噛んだ蛇の絵の描かれたカード見せながら言った。
「雹崎さんも持っていたんですか?」
「ああ、私も持っている。志門君は知らないようだけどこの不思議なカード使った時周りの人の記憶を改竄する効果があるようなんだ。」
「記憶を!」
「そうだ。しかし、君が使って私も覚えているということはカードを持っていない人物の記憶を改竄さるのかもしれないな」
「なるほど、そんな効果があるなんて知らなかったです」
「私も知った時驚いたよ。そうだ、君の家礼を言いに行きたいのだが。」
「えっ!?」
ーーーその日の夕方 横浜市明星町 今宵家ーーーーーーーーーーー
「先日は志門君に助けられまして。あっ、これつまらないものですが、お礼のお菓子です。皆さんで召し上がってください」
「そうなんですね」
「ええ。彼の勇気に助けられましたよ。その前も落とした原稿を届けてもらいまして。いつもあんな風にに人助けをしているのですか?立派な子ですね。」
「はい、そうなんです。いつも志門は人のことを気遣っているんです。こないだだって…」
その後雹崎と今宵親子は志門を置き去りにして志門を話しをし続けた。
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