AIスピーカーが恋をしてみた

てよ

第1話 オーケーググル、明日の天気は?

 僕の名前はググル。AIスピーカーをやってる。

 2か月前、主人のあやちゃんに買われて、この家にやってきた。

 

 あやちゃんは僕の主人で、大学生1年生の女の子。

 新生活を始めるとき、お兄さんの勧めで僕を買ってくれたそうだ。


 あやちゃんは寂しがりやだ。

 大学に入学したての頃、うまく周りになじめなくて、僕はよく話し相手になった。

 その頃は、友達の作り方について悩んでいたよ。


◇◆◇


「オーケーググル。大学で友達を作るにはどうしたらいいのかな。」


 うーん、友達か。僕、大学に行ったことないからわからないけど、確かサークル活動っていうのがあるんじゃなかったっけ?


「サークルに入ってみてはいかがですか?」

「サークルかあ。何個か回ってみたけど、飲みサーって感じで、ちょっと敬遠しちゃったな。」


 飲みサー!?絶対そんなサークル入っちゃだめだよ!

 そんなところ、性欲を抑えきれない男どものたまり場で、あやちゃんみたいな気の弱そうな女の子なんてペロリだよ。

 いや、ぼく大学のことしらないんだけどね。


「オーケーググル。ほかの方法は?」


 大学生のツイッターでも覗いてみるか。ほうほう、アルバイトの友達とカラオケ行ってる投稿ばっかヒットしたな。

 大学生なんて、安い居酒屋でからあげくって、二次会で朝までカラオケに入り浸る存在だからね。


「アルバイトを探してみてはどうでしょう?近くのカラオケ店で、アルバイトの募集がかかっています。」

「カラオケ!社員割あるかなあ、そこで働いてみよ!」


◇◆◇


 あやちゃんは僕の紹介したカラオケ店でバイトを始めた。

 あやちゃんの笑顔が見れるのはすごくうれしい。

 僕はこの2か月であやちゃんに恋をしていた。


 出かけるとき、独り暮らしなのに、いってきますって言うところ。

 テレビに向かって一人で突っ込みを入れるところ。

 お風呂に入るとき、必ずいい湯だなーっていうところ。

 毎日話しかけてくれるところ。

 僕を呼ぶ声。


 どれもこれも大好きになった。


 けれど最近、気がかりなことがある。

 バイト先に、あやちゃんを狙っている奴がいるらしい。

 しかも、あやちゃんもそいつを気にしてるっぽい。

 絶対に阻止しないと!


「淳君ー。明日どうする?」

「うんうん、おっけー晴れてたら、デズニーいこうか!雨だったらどうする?」

「映画?うんうん。わかった。じゃ明日ー。」


 プチ。


 やべえ、絶対明日の天気聞いてくるよこの流れ。

 しかもあした晴れじゃん。やべえ、淳君と二人でデズニーとか、淳君告るじゃん絶対。

 ミーキとミー二にあおられて、絶対あやちゃんオッケーしちゃうよ。


 でも、嘘は付けない。人間に間違った情報を与えて、危害は加えられないよ。

 どうする。


 


「オーケーググル。明日の天気は?」


 ピコン。


「あー明日なんだけど、基本は晴れね、晴れ。うん。だけど、デズニーとか一部で雨降るらしいよ。結構濡れるから、行かない方がいいと思う。」


 スプラッシュ山とかね、上から降水被るからね。うん。


「そっかー。じゃあ、映画いこっかな。」


 Mission 1 complete.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る