第26話 仕事で沖縄とか最高
帰りは始発電車に乗って帰宅。
「里奈、ゴメンね。何か面倒な仕事になって。あ、今回の除霊費用は僕と里奈それぞれ100万だからね。はい、前金の20万円。いやー、最後がいまいちだったけど仕事自体は良かったよ。鉄道会社だと似たような踏切が沢山あると思うからもうちょっと売り込んでみようかな」
前金20万を封筒に入れて里奈に渡す。
まぁ、残りの80万も一ヵ月で入ってくるからいいか。僕たちの場合はそれが普通だし。
「あのお寺の人たちも何で手伝ってって言えなかったのかな?」
「変なプライドのせいだよ。自分たちは一流の除霊師だからお前たちの手は借りないって感じじゃない?僕たちはちゃんと手伝うつもりだったのに。除霊師の世界は結構せまいよ。今回の噂が広がるとお寺へのダメージは半端ないよ。僕たちも悪い噂が流れないようにしなきゃね。まぁ、今は適度に仕事をして、適度に稼げばいいや」
夜通しの作業だったから眠くなってきたよ。
いつものごとく里奈の手を握りながら目を瞑った。
夏休み明け。
夏休みの間はいいペースで仕事をしてかなりの稼ぎになった。
久しぶりの学校は体にキツイ。眠いし怠いしで体がいう事を聞かない。
「久しぶりだなぁ。月宮は元気にしてたか?沢木さんに告白した?」
「はぁ?本田君はいきなりだな。僕は充実した夏休みを過ごしていたよ。あと里奈とは付き合ってないから」
「おい、嘘だろ。旅行の時だってもうすでに付き合ってるような感じだったじゃないか。俺が言ったのは”付き合ってる”じゃなくて”突き合ってる”か聞いたんだけど。なんだよ、月宮は童貞のままか」
何を言ってるのだろうか。しかし残念ながら童貞だ。
「そうそう、俺はまた新しいイベントを考えたんだ」
「え、またBBQ?」
「まぁ、BBQもいいけど今度は遊園地だ。ベタだけど高校生らしいだろ?」
たしかにデートの基本だ。
「俺は考えた。デートっぽい事をして、相手を錯覚させるんだ。”私、この人とデートしてる。恋人みたい。幸せ!”ってさ」
「本田君はそんな事を考えていたんだ。でも女の子は錯覚しないと思うよ」
一緒に遊園地に行って惚れてくれるなら世の中はカップルだらけだ。
「そんなわけで夜にでも皆にグループチャットで報告するよ。
本田君はやる気満々である。そんなの行きたくないよ。面倒くせ~。
その晩。
本田君から旅行のチャットグループに新たな遊園地計画が発表された。
とにかく面倒な気持ちでいっぱいだった僕は、グループチャンネルを開くことなくスルーした。
その後、里奈から個別にメッセージがきてたようだが、早々にベッドに横になっていたので気がつかなかった。
翌日。
昨夜、里奈からきていたメッセージに返信する。寝てましたと。
教室では本田君と神崎君に、グループチャット未参加を問われ寝ていたと返答する。
「お前起きてろよー。んで、どうだ?遊園地の件。おっと、今は遊園地とか言わないよな。テーマパークだよ」
「そうそう、月宮君も参加しようよ。また、皆で楽しく遊ぼうぜ」
んー、あんまり乗り気じゃないんだよな。
「月宮以外は全員参加OKみたいなんだよ。一応、日程のすり合わせは必要だがな」
予定は10日後の土曜日かぁ。やっぱり気が乗らないなぁ。テーマパークとかデートならいいけど、大人数で行きたくないなぁ。やっぱ断ろう。
「あ、僕はその日に予定が入ってるや。僕抜きか誰か他の人誘ってあげて。あの女性陣の豪華メンツだったら参加したい人が沢山いるんじゃない?」
「えー、そうなのか。まぁ、予定が入ってるならしょうがないか。おっし、一応みんなの意見を聞いて他に人を誘うか考えるか。じゃ、月宮はまた次の機会な」
本田君と神崎君は僕の席から離れて行った。
昼休み。
里奈と弁当を食べている時にテーマパークの事を聞かれた。
「忍は遊園地行かないの?用事がどうとか聞いたけど」
「あぁ、ちょっと予定が合わないな。僕抜きで楽しんできてよ」
そっかぁ、と残念そうな顔を里奈がする。
「丁度予定が入っていたんだよね、親戚関係で。だから皆で楽しんできてよ」
里奈と2人なら出かけてた。今回は大人数でのお出かけには気が乗らない。
「本田君と神崎君が別の人を誘うかもって言ってたよ」
「うん、津山君の友達くるかもって。3組の子」
「僕の分も楽しんできてね」
「えー、私も行くの止めようかな」
「せっかく誘われたんだし行ってくれば?ディズミーランドって女の子は大好きじゃないの?」
「忍が行かないんだったら無理してまで行くほどじゃないし」
「みんなも里奈が参加するの楽しみにしてると思うよ」
なんか少し微妙な空気になってきたので話題を変えてその場を濁した。
放課後。
特に用もない僕はまっすぐ帰宅する。今日は仕事関係も何もない。
晩御飯を食べて部屋でまったりとしているとスマホに着信があった。ディスプレイには”小暮夫人”と表示がある。
前に踏切除霊で一緒だった小暮さんだ。
「もしもし、月宮です」
「こんばんは、小暮です。お久しぶりです」
小暮夫人が僕に電話?
「突然ごめんなさいね。ちょっと相談があって連絡したんだけど。今、お話大丈夫かしら」
「ええ、大丈夫ですよ」
「実はね、国からの仕事の依頼を貰ったんだけど、その仕事に月宮さんも一緒にどうかと思って」
「国からの仕事ですか?」
「そう。まだ日程は決まってないのだけどね。場所は沖縄で4日間の予定。何人かの除霊師が合同で仕事にあたるのよ」
へぇ、国からの依頼なんていいじゃないか。
「時期は少し先で年末を予定してるの。お役所の休みもあるから、クリスマスから4日間だと思う。沖縄本島各地にグループごとに分かれて仕事をする感じよ。各グループに担当者がついてグループ毎に除霊をしていく。除霊代金は1人当たり400万で、交通費や宿もクライアントが負担してくれるわ」
「めっちゃくちゃいい条件ですね。でも、何で僕を誘おうと?」
「だって月宮さんは有能な除霊師ですし。グループで行動するから見知った人のほうが安心できるでしょ?」
「小暮さんも旦那さんも有能じゃないですか」
「私の旦那は丁度別件で出張予定なのよ。でも国の仕事はこなしていきたい。今後も贔屓にして貰う為にもね。でも私は霊の発見は得意だけど、除霊作業はそんなに得意じゃないのよ。私たち夫婦の除霊は、私が探して旦那が除霊するスタイルだからね」
なるほど。だから祓う力に特化した僕を誘うのか。
「それは僕のみの参加ですか?里奈も参加ですか?」
国からの仕事はありがたいが里奈が参加できないならば無理する必要もないかな。
「当然彼女さんも参加で構わないわ。仕事を受けてくれるなら私たち3人とナビゲーターの4人で除霊巡りね。車1台で丁度いい人数かしら」
「分かりました。クリスマス後なら学校も休みになっているでしょうから参加できます。里奈に確認とってみます。一応、僕たちは未成年なので親の許可を貰わないといけないですし」
「そうね。では話をして連絡貰えるかしら」
「はい。連絡入れます」
面白そうな仕事だな。あとで里奈に確認しよう。
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