陰謀論者

陰謀論者

休憩室にて

「ねえ山田さん、ちょっと面白い話があるんですけど」

「何です？」

「地球立方体説って知ってます？」

田中のいたずらっぽい笑み

「……いいえ。何ですかそれ」

「それが、世間一般には地球は丸いと言われてるけど、本当は地球は四角なんだっていう説なんですよ。すっごいバカバカしいでしょ？」

「ふーん、まあまあ確かに」

「こんな説誰も信じっこないって思うんでしょ？ところが信じてる人が居るんですよ。彼らは地球を宇宙から撮った写真とか、人工衛星とか、そういう地球が丸い証拠全部、地球は丸いと信じ込ませたい人達が捏造してるって考えてるんですって！笑っちゃいますよねえ〜」

「ハッハッハ、そうですね。そんなの信じてる人居るんですね。ははは……」

数時間後　山田家にて

「ただいま」

「おかえりなさい。あなた、今日はどうだった？」

「今日か……」

山田のため息

「今日は田中さんから変な話をされたよ」

「何？」

「地球立方体説は間違ってるんだって言ってきたんだ」

「まあ！」

「あいつはきっとスパイだよ。休憩室で二人きりになる時を狙ってあんな話をするなんて……うまくやり過ごせて良かったよ。バレたら再教育施設に送られるらしい……」

「それは大変だったわね」

「ああ……田中がスパイだとすると奴らは少なくとも二年前から僕に目を付けてたのか……ちょうど真実を知った頃だな。気を付けないと。奴らの目は思わぬところにまで広がっている。これからは田中とあまり付き合わない方が良いだろうな」

「そうね、あなたの言う通りだわ」

後日　道端にて

「あら山田さん！」

「あ〜らま田中さん！」

二人の奥さんは走り寄る

「聞いてくださいよ田中さん。先日うちの夫がね？そちらのご主人に地球は丸いって言われて帰ってきて、そちらのご主人とはもう付き合わない方が良いって！」

「まあ！」

「きっと夫はスパイよ！地球球体説の信者に成り下がって、地球立方体説が孤立してるように見せかけようとしてるんだわ！バレたら再教育施設に送られるとかなんとか言って……情けない」

「そうねえ」

「おまけにそちらのご主人をおとしめようとして。あ〜まったくほんとに情けない。奴らは近しい人を使って地球球体説を広めようとしているんですよ、卑劣ですよ卑劣！」

「そうねえほんとに……あらごめんなさい。そろそろ息子を迎えに行かないと……」

「あらそう、分かりました、じゃあこれで。田中さんもくれぐれも気をつけて下さいね〜！」

数分後　道端

「……あの慌てよう……あの人もスパイね」

数秒後　自転車

「山田家とは付き合わない方が良いかしらね……地球は円盤なのに……」