長夏

外並由歌

第一部 つどい

1. 辿りつく陸


 僕は、先に。



 未だ土に抱かれながらも


 ずいぶん前の翅をたよりにして


 真っ直ぐにあなたのもとへ



 覚えのある庭先


 木々の容


 風の温度


 影の角度は


 この胸にもなつかしく鮮やかに咲きほころぶ花



 屋根の下は少し空気の色が違うのを知っている


 その清かな淀みで


 懸命に息をしていた




「ナナ」




 探すために呼んだ声は 一度であなたにとどく


 振り返る


 すこし大人びた顔かたち


 泣いてしまいそうなかおをしていた


 多分、僕も。



 果楽から、と 僕を呼ぶ声


 あなたがいたからその夏は


 春よりも はるめいて



「また、戻ってきてしまいました、」



 あなたがいるから


 この夏も




 ああ、


 今度こそ


 わらってくれた。




「———おかえりなさいっ……!」



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