京都の老舗和菓子屋の跡取り娘は俺の許嫁である!
上井真実(かみいまみ)
第1章
第1話 転校生は京の女神である!
高校2年生になる俺、源田優気は新学期を迎える前日の夜に頭を抱え悩んでいる。
頭を抱えて悩む理由とはホテルの後継者問題と許嫁問題である。
ホテルの後継者問題とは、意味そのままで源田ホテルの後継者を決めようとしている。ちなみにこのホテルは、北海道で最も古く300年以上前にできた青森の旅館から北海道に移り有名ホテルになった。
俺の両親は俺が小さい頃に事故でこの世を去り父にも祖父にも兄弟がいなく、祖父の孫で父の息子である俺が自然に後を継ぐことになる。
それが1つの問題だ。俺は後を継ぎたくない。理由は単純にこのホテルを経営する自身がないからだ。300年の歴史は重すぎるし、高卒では若すぎる。
もう1つの許嫁問題は祖父が勝手に決めた迷惑な約束だ。
京都の老舗和菓子屋の跡取り娘だぁ?
何故に北海道の有名なホテルの経営者の孫が京都の老舗和菓子屋の跡取り娘と結婚しなければいけないんだ!
祖父の考えがよくわからない。
そんな人生に関わる大問題が頭の中でぐるぐると回転している。
スマホの電源をつければいつのまにか深夜1時を過ぎていた。
「はぁ、考えても無駄か…すぐ寝よう」
すぐ寝ようと1人呟いても寝られる訳じゃないが横になり目を瞑った。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
腹ただしく鳴る目覚まし時計のボタンを蚊を叩く様に強く叩いた。
時刻は6時30分。
俺は大きく口を開けてあくびをして脳を働かせる準備をした。
その後階段を降りてリビングに行き、祖母が作ったバランスの取れた朝食をとった。
祖母の料理は少し薄めだ。
母の手料理の味を覚えていない俺は祖母の味付けが薄いと感じるということは母の味付けはきっと濃かったのだろう。
しばらくして朝食を終えた俺は歩きで高校へ向かった。
そんな規則正しい生活を送っている。
目覚めた後は不思議なくらいに昨日の問題が冷静に受け止められた。
教室に入れば挨拶をされる事なく自分の席に座った。
挨拶を自分からしなければ挨拶してこないのはあたりまえか。
「おい、今日転校生来るらしいぜ!」
「え?マジで!」
「しかも美人らしいぜ!」
アニメでもよくある転校生は美人だった説。
別にアニメじゃなくても転校生と言えば美男美女が転校してくる事が多い気がする。
あくまで自論だが。
いかにも学校のアニメオタク達の変な理想を夢見る会話を耳にして、若干同感することがあり俺もオタクじゃね?ってショックを受けた。
ショックを受けながらもくSHRが始まった。
先生が教卓の前に立つと号令係がお決まりの起立・礼と号令をかけた。
号令係はそれしか仕事がないため楽である。
着席と声をかけた後先生が荒々しく咳をした。
「えーもう知ってる人もいるかもしれませんが転校生がうちのクラスに来ます」
先に知っていた為、特別驚く人はいなく逆にどんな人か早く知りたいらしくそわそわした教室内。
「では紹介します」
先生はそう言うと扉に向かい手で合図をとる。
「ごめんやすーうちの名前は和泉甘奈どすーよろしくお願いいたしますー」
透き通るほど綺麗な肌、鮮やかに光に反射して輝く髪、仏様のような優しい眼差し。
和服を着ていなくとも和を感じる雰囲気。
彼女が教室に入った瞬間の出来事、教室には太陽の光が眩しい程に窓を通り抜ける。
教室は静まりかえる。
辺りを見渡すと教室のみんなが何故か合掌をしていた。
平常なのは俺だけらしい。
まるで神を崇めるような教室の雰囲気が嫌に感じた。
「先生、もう席に着いてよろしいでしょうか?」
死んでもいないのに成仏されかけた先生は我に戻り
「あら、ごめんなさい、じゃあ席は…」
先生は空いてる席に指を指そうとしたその時。
「源田優気様の隣がいいどす」
爽やかな声で彼女、甘奈は俺の席の隣を指した。甘い声をしているため魅了されてしまう先生。(甘奈だけに)
俺は軽くダジャレを心の中で作って1人でにやけた。
本来ならダメと言うだろうが、甘奈の美しさにより許されたものだ。
そんなことより…
「は?」
甘奈の発言にみんなが目をまんまるくしている。当然俺も。
甘奈は一体何を考えている。
突然俺の名前を呼びさらには隣がいいと言い出す。迷惑な奴だ。ただでさえ目立たない俺の毎日が甘奈の発言により不幸の毎日をおくることになるだろうと予測した。
まだ俺は知らない、源田家と和泉家の深い関係性が後に分かる事と、甘奈が許嫁である事を。
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