初めての大病院
大きな病院に通うのは初めてのことで、自動受付機を見て感動したり、自動支払機を見てまた感動したり、きょろきょろと落ち着かない。病院もハイテクだなぁって。
初めてだったので人のいる受け付けに行って、まずは耳鼻科に行くことに。その後で婦人科。
紹介状を見て、咽喉の腫れを見て、先生は「甲状腺が何かで腫れてるんだと思う」と、とりあえず見てみましょうなんて軽く言った。
そうしてあれよという間に鼻からカメラを入れられた。
鼻の奥から咽喉へとカメラの下りていく感覚が気持ち悪い。えずくことはなかったけど、咳をしたい感じになる。
食道の方に異常は無し。
次の時にエコーの予約入れましょうってことになった。
カメラの管に塗られた薬品で咽喉がイガッとして、鼻水が止まらなくなりつつ、次は婦人科の診察へ。
先にレントゲンを撮りに地下に下りて、その後産婦人科のあるフロアに戻る。大きな病院なので、採血などの処置は独立して専門の部署があったりする。きょろきょろと見学しながら移動したものだ。
紹介状を見た先生はまず、
「12cm? 12mmじゃなくて?」
と二度見して、
「貧血ひどいね。具合悪くない?」
と、心配してくれた。ヘモグロビンの量が通常12〜16gの間が正常値のところ、その時私は7gしかなかったようだ。
自覚症状が薄かったので、大丈夫ですと伝えると、ちょっと首を捻って不思議そうな顔をされた。
内診に移ると「嚢胞もあるね」とのことだった。
「まずは貧血を治しましょう。生理を止める注射をしばらく続けて、そうしたら筋腫も小さくなりますから。この大きさだと開腹になるけど、上手くいけば腹腔鏡で出来る大きさまで小さくなるかもしれない」
そう説明を受けて、そのまま注射。鉄剤を処方されて初日は終わり。
次の時はMRI検査をすることになった。大きな機械に入って、輪切り画像が撮れるあれである。
まず、狭いところが大丈夫か聞かれる。私は以前に腰を痛めた時に他の病院で入ったことがあるので、それも含めて大丈夫ですと答えた。
拘束されて狭いところに入るので、ダメな人が一定数いるのだとか。
時間は20分程度。ベルトで固定されて筒状の機械に入っていくと、ゴンゴンゴンゴンという音と軽い振動が伝わってくる。カンカンカンという少し高い音に変わったり、耳鳴りのようなキーンという音もひっきりなしにしていて、結構うるさい。
でも、その音が「何かを照射されてる!」という気になって、撮影されてる気分を明確にする。
結論的に12cm大の子宮筋腫とバルトリン腺嚢胞が2つくっきりと写っていた。筋腫は手術になるから、一緒に嚢胞も取っちゃいましょうと方針を決めて、まずは月1の注射に通うことになったのだった。
§ § §
婦人科の方はしばらく月1通いになったけど、耳鼻科の方へはその間も何度か通って、エコーを撮ったり、細胞診を受けたりした。
この細胞診検査、細い針を刺して細胞を取るのだが、先生は「細い針だからあんまり痛くないよ」なんて言っていた。検査なんだから嫌ですとも言えない。
針を刺す前に手術同意書にサインを求められる。注射と同じ程度かと思っていたら、そうでもないらしい。
「3回くらい刺すかも」
なんて言ってた先生は、2回で済ませてくれたけど……注射くらいには痛かった! 我慢できない程じゃないけど、痛いものは痛い。
エコーで画像を見ながら施術するのだけれど、腫瘍の中に、どうやら水が溜まっていたようで、ついでという感じでその水も抜きましたから、と明るく告げられる。
検査結果はその日にはでないということで、また次回。
結果を聞きに行くと、鑑定不能とのこと。腫瘍は腫瘍だけど、良性か悪性かは周りの血管や大事な組織を巻き込んでるかどうかで判断するタイプ。と言われた。
「まあ、悪い感じはしないけどね」
との軽いお言葉つき。自分でも悪い感じはしてなかったので、そうかな、という感じ。
中の溶液も一応検査したけど水だったから、大丈夫とのこと。
その時で腫瘍の大きさは5cm程度。3cmを越えると手術対象とのことで、取っちゃいましょうという雰囲気だった。
日取りどうします? ということになって、婦人科の絡みを説明したら、
「あ、じゃ、そちらが先で! こっちは急がないから!」
と、そのまま婦人科の手術が終わる頃に次の診察予約を入れて終わりとなった。
そのまましばらくは貧血治療――といっても、月1で注射するだけ。筋肉注射なので結構痛いのだけれど、それさえ我慢すれば、鉄剤は最初の時だけで後は出なかったし、食事制限も無かったので楽なものだった。
次の生理は来るかもしれない、と言われていて、次の月、確かに少な目に生理は来た。そしてそのまま少量がずるずると1ヶ月近く終わらなかった……診察の時そう言うと、
「注射してるからね」
と、そういうものだというお墨付きをもらった。
確かにだらだらしていたものが終わった後は、もう生理は来なかった。
生理を止めて2ヶ月目くらいだっただろうか。筋腫も順調に小さくなって、7cmちょっとくらいの大きさに。この位になれば、腹腔鏡での手術も可能だろうと、そちらでの手術で話しを進めることに。
そこで提示されたのが、筋腫だけを取る手術と子宮ごと取ってしまう手術。希望は聞きますけど、どうします? と問われて、ちょっとだけ考えた。
もう次の子供を考えてはいないし、となると生理は面倒臭い。
あっさりと後々楽な方を選んで、全摘してもらうことにした。若ければまた話は違ったのだろうけど、そろそろ更年期の症状を心配する年齢なので、未練も不安も全然なかった。
余談だが、私は臓器提供とかにも忌避感とかないので、自分の臓器が誰かの役に立つなら、いくらでも使ってくれて構わないと思ってる。ただし、痛いのは嫌いなので死んだあとなら、の話だが。その時は使える臓器全部持って行ってもらっても構わない。どうせ焼いて無くなってしまうのだから、使えるなら使う方が効率的じゃないか。生きてるうちなら、身内に分けてあげる時くらいしか決心できないだろうけど……
もういい歳だから、使える臓器も少なくなってるんだろうなとは思いつつ。
生理を止めて筋腫を小さくして良かったことがひとつ。
体重が落ちた。
むくみでも酷かったのか、貧血が良くなって代謝が上がったのか、3kgくらいするすると落ちた。出ていた下腹も少しへっこんだ。これは、ちゃんと治ってからダイエットしたら、もうちょっと落とせるかもしれない! と、密かに野望を持っている。(笑)
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