筋腫をすくすく育てていた話2018

ながる

人間ドックに行こう

※ これは自分用の備忘録です。読みやすいようにとか考えて書かれてません。

※ 基本事実を書いていますが、書いてはまずいようなことは一部フィクションが混じっていたり、ぼかして書いたりしています。

※ 既に忘れてしまったところは捏造されています。




 私は病院が嫌いだ。

 小さい頃通った歯医者の待合い室で聞いたキュイーンっていう機械音が嫌だったし、ただ単に注射が嫌い、という単純な理由もある。

 でも実は通い始めるまでが一番嫌なのであって、病院自体はそれほど嫌いではないのかもしれない。受け付けをして、待たされて、が面倒臭いのだ。


 そんな理由で毎年元気だからと延ばし延ばしにしていた人間ドックに、渋々ながら予約を入れようと思ったのは、冬が終わりかけている頃のことだったと思う。

 ある日、咽喉の奥が詰まっているような違和感を感じるようになったのだ。

 ちょうど鼻風邪をひいていたので、そのせいかなと思っていたけど、風邪が治っても咽喉の奥の違和感は治らなかった。


 あ、病院案件かもしれない。


 と、思いつつ、すぐに行こうと思わなかった。

 痛みもないし、飲み込むのに苦労することもない。食欲も体重も落ちてない。

 多分今年も人間ドックに行きませんかって、旦那の会社からお誘いが来る。助成金を出してくれるのだ。もういい歳だし、行かなきゃなって思ってはいたので、いいきっかけだからと、その人間ドックに行って、咽喉のことも相談しようと思うのに時間はかからなかった。


 春が来て、少しずつ薄着になって、ある朝歯を磨きながらぼんやり鏡を見ていて気が付いた。

 咽喉の付け根の辺りが腫れてる。ポッコリと直径5cm〜6cmくらい。家族に見せたら、やっぱり腫れてると言われた。それまで誰も気付かなかったけど。


「病院行っといで」


 って旦那に言われて、でも人間ドック行くから、そこで一緒に相談するよって伝えた。

 人間ドックは7月某日で予約してある。ほんの2〜3ヶ月先なのだから、今別の病院に行くのは面倒臭い。どこの病院がいいのかもわからないし、お医者さんがいいところを紹介してくれるかもしれないという思惑もあったから。




 さて、私は働いていた頃、健康診断で引っかかったことは1度も無かった。

 小さい頃に通ったのは歯医者と耳鼻科くらい。毎年冬には風邪をひいて1週間くらい寝込んだりもしたけど、入院することは無かった。


 初めての入院は小学生の時。ミニスキー(長靴に固定して滑って遊ぶ短いスキー)で遊んでいて、ジャンプ台を飛び出し、ぶつかりそうになった友達を避けて内側のくるぶしに罅を入れた時だ。毎日される太い注射が嫌で嫌で……確か、1週間くらいで退院したと思う。


 後は子供を産んだ時。2人産んでるので、計3回の入院体験しか持っていなかった。

 どうでもいい話だが、この時まで私は点滴というものを1度も受けたことが無かったので、ひとり目を産んだ時に点滴のバッグを見上げてなんとなくテンションが上がったのを覚えている。怖くて針の刺さった腕はあんまり動かせなかったけど。

 

 ひとり目は予定日から10日遅れてやっと陣痛が来て、それも微弱で丸1日経っても出て来なくて、結局帝王切開になったという面倒臭い経緯だった。手術でもなんでも、早く出してほしいと言うのが本音。

 術後、看護婦さんが「傷が痛かったら痛み止め出しますから言ってくださいね」って言ってくれたけど、陣痛の痛みが強烈過ぎたからか、痛み止めを飲むほどの痛みを感じなかったので、結局1度も出してもらわずにすんだ。


 と、話が逸れた。つまり、人間ドックでも引っかかるなんてこれっぽっちも思ってなかったのだ。

 階段を登ると息切れするのも、運動不足と年齢のせいだと思っていた。



 § § §



 私が予約した病院は、健康診断と人間ドック専門の病院だった。そこでは治療はしないで、紹介状を書いてくれる。予約するときに婦人科や乳がん検査はどうしますか、と聞かれたけどとりあえずいいですって断って、基本の検査だけ受けることにしていた。


 当日、受付に数名だったので空いてるのかと思っていたけど、病衣に着替えて中に進むと思ったよりも沢山の人がいた。流れ作業のように、ひとつ終わると次はあちら、という風に効率よく進んでいく。

 問診の時に咽喉のことを話して、採血もあっという間に終わる。骨密度測ったり、エコーで体の中をぐりぐり見られたり。エコーは妊娠中以来だったので、何だか懐かしい気分になったりもした。


 最後にバリウムを飲んで胃の検査。今のバリウムは飲みやすいよって旦那に聞いていたんだけど、先に飲む発泡剤が気持ち悪かった。お陰でバリウムの方がずっと飲みやすかったのは、良かったのかなぁ。

 機械でぐるぐる回されるイメージがあったのだけど、「自分で回って下さいね!」ってにこやかに言われて、何度も台の上でごろごろ転がる。ちょっと間抜けな感じ。深く考えちゃいけないんだろうと、笑いそうになる口元を頑張って引き締めていた。


 一通り終わって、先生のお話を聞くまでの間、体力測定をしてみた。

 負荷のかかる自転車を漕ぐのを最初にやらされて、最後はかなりぜいぜい言ってて、担当のお姉さんに心配されてしまった。握力とか、瞬発力とか、そっちのほうはまあ、平均値だったので、持久力ないなぁと運動の必要性を痛感したり。


 ようやく順番が来て、先生の前に座ると、開口一番「婦人科の検査は希望してないんだよね?」と確認された。はい、と頷くと先生は目の前の画像を見ながら続ける。


「本当は見るところじゃないんだけど、担当した人が他のとこ見てる時に見えちゃったから、ついでに見てくれたんだよね」

「はあ」

「子宮筋腫あるみたい。貧血も出てるから、これのせいだね。結構大きくて12cm〜13cmくらいあるんだよね」

「えっ。そんなに?」

「うん」


 全くの想定外。

 大きさが大きさなので無視する訳にもいかず、という感じだったみたいだ。

 「生理重くない?」とか聞かれたけど、自覚はなかった。貧血の方は確かに生理中とかはくらくらしたりもしてたけど、そんなもんかなって思ってたし。子供達に下っ腹をつんつんされて馬鹿にされるのも歳だから仕方なし、とか開き直ってたし。でも、12cmの筋腫なら、妊娠してるのと変わらない訳で。色々と納得がいく。


「階段登って息切れとかしない?」

「あー、します!」


 とか、その程度の感じで、運動不足だと思ってたものが貧血のせいもあったのかと初めて気が付いた。


 その後に気になってた咽喉の方は甲状腺が腫れてるんだろう、ということで、婦人科と耳鼻科の両方にかかれる病院をいくつかピックアップしてもらった。

 他の検査は要観察のものはあったけれど、だいたいは異常なし。結局、希望した検査項目以外のところで病院に通うことになったのだった。


 人間年取るとガタがきて当たり前。健康診断、人間ドック、機会があるなら、ちゃんと行った方がいい。解っちゃいるんですけどね……筋腫や腫瘍をすくすくと育てているなんて、思いませんものねぇ。




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