第12話 僕たちの三角関係
初恋の相手が男の娘でした! てへ!
流石に笑えない黒歴史だ。
この件、音無鳴が悪いわけではない。
僕が勝手に一目惚れして勝手に恋しただけなのだから。
女装の件の拡散は勘弁してやろう。
……1度は惚れた相手だし。
それはそれとして、僕は今の3人の関係にそこはかとない不安を感じている。
というのも僕がルナちゃんに好意があることをほのめかした時、2人は明らかに不機嫌な態度をとったからだ。これはやはり僕の好意への裏返しだと思う。
ぶっちゃけ僕の勘違いならそれが1番いいと思っている。
傷付くのは僕だけですむ。
でも……もし2人が本当に僕のことを好きだった場合、僕たちはいずれ悲しい結末を迎える。
それは僕が2人のうちの1人を選んでも、別の第三者を選んだとしてもだ。
僕が一生誰とも付き合わないって選択肢もある。
……僕が一生誰とも付き合えないって可能性もある。
ルナちゃんに一目惚れした僕が言えた義理ではないが、田淵さん、五十嵐さんが悲しむ顔は見たくない。
この三角関係。
遅かれ早かれ終わるのなら早く終わってしまった方がいい。
これまでの僕だったら確実にこう考えていた。
でも、2人と仲良くなってからの僕は真逆だ。
たとえ傷が深くなるような結果になっても、この関係は崩したくない。
本当に2人が僕のことを好きだった場合、この考え方はすごく最低だ。悲しむ顔は見たくないと言いながら傷が深くなってもいいって……かなりの自己矛盾だ。
でも、それでも100パーセントじゃない。
これが僕の器の小ささだ。
「ねえ奏、明日暇なら買い物に付き合ってくれない?」
明日は土曜日。特になんの予定もない。
「ああ、別に大丈夫だけど……」
「私も大丈夫です!」
りょ……両手に花でデートですか? でもちょっと田淵さんは困った顔をしている。
2人っきりがよかったのか?
「よーし! じゃあ! 10時に集合で!」
何処にだよ。
五十嵐さんも気が回っていないので、僕が確認した。
「場所は?」
「いっけなーい、忘れてた」
テヘペロポーズをとる田淵さん。
ナニコレ、可愛すぎなんですけど。
とまあ、明日の待ち合わせ場所を確認したところで、僕達は解散した。
これって……デートにカウントしてもいいのだろうか。
いや、でも2人きりじゃない時点で、ただのお出かけか。
はじめての女の子とのお出掛けが両手に花。
もうこれ、陰キャじゃないよ。
陰キャとしてのアイデンティティ崩壊もいいところだ。
ところで、買い物付き合うって、何すればいいんだろう。
どう振る舞うのが正解なのだろう。
もし、下着売り場とか2人で行かれたら、僕はもじもじ外で待っていなくてはならないのだろうか。
それとも試着に対して批評を……ヤバい。
興奮してきた。
思いっきり2人の下着姿を想像してしまった。
今もし2人が目の前にいたら、目も合わせられないところだった。
ラブコメものでもそこまでのイベントは中々用意されてないし、現実にそんな事をしたら確実に店員さんが引いてしまう。
気軽に大丈夫とか言ったけど、本当に大丈夫なのだろうか僕。
そうだ、こんな時は検索だ。
でも、なんて検索すればいいんだろう。
デートの前提って基本1対1の筈だ。
まさかハーレムデートって検索すればいいのか?
ハーレムデートで検索してみると、いかがわしい画像が並んでいて、結局なんの参考にもならなかった。
そうだ、SNSで相談しよう。
僕にはリア友は居ないが、多くの同志がいるじゃないか……って本人に聞くようなものじゃないか!
僕の馬鹿!
僕は考えた。持てる全ての知識を注ぎこみ、必死で考えた。でも考えても考えても答えが出なかったので、そのうち僕は考えるのをやめた。
あか————ん!
……分からない事は仕方ない、でもせめて2人に恥をかかせないために服だけでも。
そもそも、女の子とのお出かけに耐えられる服はあるのだろうか。
僕のセンスで選んで2人の腹筋を崩壊させてしまうことはないのだろうか。
……仕方ない、背に腹は変えられない。
結局僕は明日着ていく服を母さんにチョイスしてもらう事にした。
うちの母さんは僕がいうのもなんだが、イケてる方だ。
まさか高校2年にもなって、母さんにお出かけの服を選んでもらう事になるとは……。
流石の僕も想定外だった。
————————
【あとがき】
まさかのオカン!
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