ポプリ学園恋物語
@NurseShop
第1話 学園の日常
20XX年、人々は生まれながらにしてポプリをその身に宿すようになっていた。ポプリは人々の暮らしを豊かにする反面、そのポプリの能力によって明確な上下関係が構築されていった。
「ポプげんよう」
「あら、ポプげんよう」
ポプリ並木の坂を、華やかな学生たちが挨拶を交わしながら笑顔で登っていく。
「……」
そんな中、とある少女は誰とも挨拶を交わすこともなく、重い足取りで登っていた。
ドスンッ
不意に後ろから思いっきり突き飛ばされ、少女は思わず右肩から地面に着地し、そのまま回転して衝撃を受け流す。毎日のことなのでもう慣れたものである。
そんな少女の背後から、突き飛ばしたであろう犯人が堂々と声を掛けてきた。
「あら、ポめんあそばせ。人がいることに気が付きませんでしたわ!」
「……」
「ちょっとあんた、ポ華様が声を掛けているんだから無視するんじゃないわよ‼」
「まぁまぁ、ポし子さん、おやめになってあげて。彼女は悪気はないのよ。だって、無臭のポプリしか持たない人間の失敗作ですもの‼きっと私たちの言葉が理解できないのよ‼」
「なるほど、流石、2つの香りを宿すポプリの持ち主ポ華様です‼」
「いえいえ、おーほっほっほっほ」
そのまま、ポ華とポし子は少女の脇を通り抜ける。少女が首を左に傾けると、右横1㎝すれすれを鞄が音速で通り抜けていく。チッとポ華は舌打ちをしつつ、そのまま坂の上の校舎へ入っていった。
ポ華の姿が見えなくなると、ようやく少女は立ち上がり再び歩き出す。その足取りは先ほどよりも更に重くなっていた。本当はこんな所に行きたくなんてなかったのにと、ため息を溢しつつ上を見上げる。
そこには、天まで届きそうなほどの巨大な三角錐のビルがそびえ立っていた。
ここは全生徒数1万人を超える中高一貫のマンモス校、ポプリ学園。数ある学院の中でもトップポプリの学校である。カリキュラムも高度なポプリであり、一流のポプリ使いもこの学園から数多く輩出されている。
その代わり、他の学校と比べて差別は一際酷かった。そして、この少女はそんな学園のカースト最下位に位置していた。
無視をされる程度ならまだマシなほうであり、殴る蹴る突き飛ばすは日常茶飯事、ポられる、プられる、リられるなんてこともあった。
少女が門を抜けると、背後から一際大きな歓声が聞こえてきた。
「キャー、ポプ4の方々よ‼」
「こんなに離れているのに柑橘系の爽やかな香りがするわ!これは蜜柑ね‼流石ポプメン様だわ~!」
「ポプケル様を見ていると涎が溢れ出るわ‼ポプリ出汁の神童とはまさに彼に相応しい言葉ね‼」
「ポプティン様が歩くたびに耳が犯されるわ‼耳が幸せすぎて昇天しそうだわ」
「まぁまぁ、今日はポプノルド様の背後に滝が流れる大森林が見えるわ‼」
ポプ4、それはこの学園に通う御曹司4名を差す名称だ。彼らは只の御曹司ではない、そのポプリも歴代の学生の中から一つも二つも飛びぬけていた。
7つの香りポプリを持つポプメン、5つの出汁が取れるポプリをもつポプケル、7色の音色ポプリを持つポプティン、そして無数の幻覚を見せるポプリを持つポプノルド。
彼らは、既に世界で活躍しているポプリ使いを超えているとも言われている。勿論カースト上位も上位。このビルの最上階を与えられている、将来を約束された彼らに憧れない学生など存在しない——少女以外は。
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