54話 二つの浮島。想いを伝えろ!
ばたばたと右往左往するソラ。それに対して、ノインは冷静にその流星群の実存強度を測っていた。
実存強度
ノイン :1.370
ペルン :1.031
ユリ :2.015(X.XXX)
ソラ :0.714
すぐにノインは
連絡魔動器が設置されてある操舵室に向かう道中でノインは疑問を口にした。
「ソラさんのエーテル量ってココと同じように少ないみたいですけど、技術者のエーテル量はもともと少ないのでしょうか?」
天異界最下層の平均エーテル量は1.000前後のはずだ。だから辺境の浮島にいたココと違って、ソラの実存強度は平均値であるべきだ。ユリもその疑問に回答を与える。
「どうやらソラさんは、その体……いわゆる、器の維持に力を回しているようですね。ソラさんは現世界への下天を1巡以上はされていますか?」
「うぇえ?そ、そっスね。1巡はしてるっス」
「そうですか……。そうです! ノイン様。ソラさんを守って下さい。そうすればソラさんも安心ですよね」
ノインは器の維持という言葉が気になったが、実存強度が小さいソラに関しては守ればいい。それだけだ。
操舵室の扉を開け放つ。
ノインたちのいる浮島の宙域を黒針が流れたということは、ココのいる浮島にも必ず現れるはずだ。だから、今すぐにココに連絡をして、安全な場所に移動するようにいうべきだと叫びたい気持ちがノインを急かす。
「あー、こちら泣く子も黙る魔動人形、魔動器は動作中だべー。どーぞだ」
操舵室には既にペルンがいて、船長の帽子を目深にかぶりながら通信魔動器を操作していた。ノインが入室したことを知ると魔動器の受信音量を上げる。
『ペルンちゃん!やほ~、元気かなあー?』
『感度は良好じゃ。にしても、通信を入れてくるとは何事かあったのか?』
『浮島に着いたってことじゃない?みんな、ちゃんとご飯食べてる~?』
賑やかな声が通信機から響いてきている。その声にノインは安堵の一息をつく。そのままノインはペルンをどけて受信器を奪った。
「
『ノイン、心配するでない。この吾がいるのじゃ、黒針が何千万と来たところで大したことはない。だから、こっちは大丈夫じゃ。お主らは素材採取に励むことだな。よいか? 危険度でいえば、此方よりもお主らの方が危ないのじゃぞ? 黒針が出現したとなると、その浮島も黒針の餌食となるやもしれぬ。さっさと、素材採取して戻ってくることじゃ。くれぐれも気を付けるようにな。それに、もし黒針以外の『
「ええ。リヴィア様、お任せ下さい」
ユリが受信機に向かって礼をとる。ノインも「素材採取を頑張ります」と伝えた。ペルンはというと操舵室の床下に潜って何やら作業をしているようだった。
そこにソラが魔動炉の調整を終わらせ息を切らせて操舵室に入ってきた。
「帰るんスよねっ! 帰りの報告をしてるんスよねっ。魔動炉の準備は万全っス。黒針が現れたときから早く帰るべきだと思ってたんスよおお。さあ、自由都市に帰って黒針が討伐されるまで都市に籠ってましょうよおおおおお―――」
「いいえ、ソラさん。私たちはこのまま素材採取を続行します」
「は?……えーー!! マジで採取するんスかああ? 帰ったほうがいいでスってえ!」
『あー! ソラちゃんの声だー。ソラちゃんの開発した通信魔動器は、とっても感度良好ですぞ』
「ココッちだ! ココッちが褒めてくれるなんて、なあんて嬉しいんだああっ! これはっスね、ココッちの通信魔動器をオイラなりに解釈して製作してみたんス。自由都市エーベまでの距離ぐらいまでは通信可能範囲っスよおおおお!!」
先ほどまで逃げ腰だったが、魔動器の話になると俄然に目を輝かせてココとの魔動器談義に花を咲かせている。やはりソラも技術者であることに違いはなかった。
『ノイン、素材採取を短時間で済ませて戻ってこい。黒針はどこにいるとも限らぬからな。吾のいる場所が一番安全なのだから』
「はい」
ノインの返事をもって通信は終了した。善は急げともいうし素材採取の予定は3日間だけど、状況が状況だけにできれは2日のうちに終わらせたい。そう心に決めてソラを見やった。
ソラは帰りたい気持ちで瞳の端が揺らいでいる。その気持ちを捉えたのか、ユリが今後の行動指針を呈示した。
「浮島に降りて素材を採取するのは、私とペルン、そしてノイン様の3人とします。ソラさんはこの飛空艇『舟羽』にて待機をしていて下さい。目的の素材採取が終わりましたら連絡いたしますので、そうしたら自由都市に急いで帰還いたしましょう」
無意識にノインは自分の腰に提げてある打刀に触れた。黒針の実存強度は高い。まともに戦っては勝てないだろう。しかし、以前とは違って自分は剣術を学んだ。そして鍛え上げた打刀もある。だから、いくら相手が自分以上の実存強度であっても、打ち倒すことが出来るだろうと思う。いや、出来るはずだ。
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