30話 すべては無。在るものは散れ!
「良く口の回る人形よな」
制御式なしの水撃がペルンを射貫く。だが、ユリの防御魔術がペルンを守った。リヴィアは、ユリに対して得心したような笑みを投げかけた。
「ほう、さすがはユリじゃ。先ほどよりも速度を上げたのだが、やはり防ぐものじゃな」
「偶然でございます。私は巨樹の守り目でありますれば、それ以上でも以下でもございません」
頭を下げて応えるユリの態度に余裕が見えている。リヴィアに抱かれていたココが足をばたつかせて地面に降りようとしていた。そっと地面に降ろされたココはリヴィアを見上げて声を張る。
「みんな、仲良く!だから、リヴィアちゃんも、ケンカ腰じゃなくてみんなと仲良くしてください!」
ちゃん付けをされたリヴィアはしばしココを見下ろしていたが、少女の真剣な表情に折れる。
「そうじゃな。ココがそう言うのであれば、
そこまでの会話を聞いてノインがリヴィアに尋ねた。
「リヴィアさん、いま制御式なしで魔術を使いましたよね?」
「そうじゃ。制御式なしの魔術は原始術法というもの。ただ制御式がある場合と比べて繊細さに欠けるがな」
「その・・・実は、僕は制御式が使えないんです。リヴィアさんとの聖霊契約で魔術を行使してもらうことも良いのですが。できれば、僕自身が魔術を行使したいと思っています。だからリヴィアさんが使った原始術法なら僕でも可能じゃないのかなって思うんです。その原始術法はエーテルを直接操作をすることで発現させていたんですよね?」
「ふむ、そうじゃ。しかし、お主は制御式が使えないのではなく、お主の持つ特性で魔術情報を壊しているといったところであろう?」
リヴィアは淡々と続ける。
「そうじゃな。確かに原始術法であれば、お主のような者であっても魔術の行使が可能やもしれぬ。原始術法を使いたいのであれば魔術の効果をイメージして、そうなるように情報をエーテルに直接書き込み、演算処理すればいいだけじゃ。容易かろう?」
ノインが魔術を使用できないのを既に分かっているかのような口ぶりで話すリヴィアにノインは戸惑う。僕が魔術を使えないのは連樹子が在るからだ。ならば、リヴィアはその連樹子の存在を知っているということなのだろうか?古き聖霊であるリヴィアにとって、僕のような存在を知っていて当然ということか。
ノインは疑問を胸に閉じ込め、原始術法の効果をイメージする。
「原始術法っていうのをやってみます。」
彼が思い描くそれは全てを焼き尽くすエーテルの砲弾だ。ノインは意識を集中させ自分の手の内に体内のエーテルを凝縮させていく。手のひらに形成されていく赤黒色の球。それは破壊の種子。もっと巨大な塊に練り上げようとノインが魔術情報を書き込み続けようとしたとき、連樹子もまた自動起動していた。ノインは連樹子自体も魔術情報の演算処理が可能なのかと思い、その連樹子に演算処理をさせるべく手のひらの赤黒色の球体に向かわせる。
が、突如としてその連樹子がノインの人形体がもつ演算処理を遥かに超えた処理を開始し始めた。「っ!」自分の制御下を離れようとする連樹子を無理やりに押さえつける。けれども一度始まってしまった演算処理は止まらない。「まさか、僕以外の何者かと・・・いや、『僕のいた世界』に繋がろうとしてるのか?」そう思った瞬間、するどい声が浴びせられた。
「ノイン!原始術法を止めるのじゃ。このままでは、系譜原典が持たんぞっ!」
その声を発するリヴィアを見やると、そこにはココが血だまりのなかに倒れていた。ココの体が裂かれ続け、血が噴水のように噴き出していたのだ。
リヴィアは領域魔法の最終形態である
「六律系譜をして、
リヴィアの眼前に水属を司る蒼鍵が現出し、その形を変容させて黄色と青色の光子となった。その光は頭上に八百万に重なる自在式の制御式を構築し、天上の宙に天之神如則を浮かび上がらせ領域魔法の土台として発動を開始する。
「六律系譜をわが手に、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます