2度あることは3度ある

時はきた。


時刻は15時20分。


2つ目のバスが来るまであと10分。


僕は絶対に運転手に気付いてもらえるように

両手いっぱいに手を振って


なんなら


寒くなって着たパーカーを片手に持って

ライブ会場みたいにブルンブルン回して盛り上げる準備も出来ている


時刻は15時27分、定刻まであと3分、決戦の時は近い


必ずバスに乗る。けど


一応、次のバスの時刻表をちらっと見た

goggle(ゴーグル)マップは言っている。


次は18時30分と


15時30分の便を、逃すと3時間もの時間を

あのベンチに腰をかけなければいけない。


必ず、必ずこのバスに乗らなければ


時計をまた見てみると時刻は15時33分

定刻を若干過ぎていた。


ニュージーはやっぱり適当な国だ


電車も待ち合わせも遅れない方が珍しい


走っている車やバスに目を凝らしながらゆっくり待つ。


何台かバスが通り過ぎていったが

いずれもintercity(インターシティ)では無い。


時刻は15時37分


いい加減、遅くない?もしかして見逃した?と

不安になっていた頃に奴は来た。


Intercity(インターシティ)と緑色で書かれたバスだ。


僕は目一杯、両手で万歳をした。


おーい気づいてくれー!おーれを乗せてくれー!!


バスは70メートル先、まだ遠くだが減速する気配はない


僕は目一杯、両足でジャンプをした。


ぴょこぴょこと跳ねて跳ねて


バスは40メートル先、もう近くだがまだ減速をしない


僕は目一杯、パーカーを回した。


ブルンブルン、400ccを超えるバイクの心臓の様に

震わせて、回して、熱くなった。


バスは目と鼻の先、それでもバスは走り続けている


そしてついには通り過ぎていった。


なぜだ!?何故なんだ!!


僕の何が悪かったっていうんだ!!!


携帯のバッテリーは20パーセント、赤く表示されて、僕の胸のバッテリーもピコンピコンと赤く鳴り始めている。


この胸のランプの光が消えた時

二度と立ち上がる力を失ってしまうだろう


次の18時30分のバスを待つ他なかった。


しかし、もうすでに2台のバスに乗れなった僕


どうせまた待っても乗れない自信しかない。

ここには宿なんて無いし屋根があるのは

ガソスタとその中のコンビニだけ


ゴルフ場は赤く染まりつつある空を写している。


Te puke(テプーケ)までは120km超

歩いてはとても行けない。


それでも18時30分のバスを待つ以外の手立てはない。


ちょっと迎えに来てくんね?

1万渡すし、ご飯もおごるからさ?ね?

なんていう友達もいない。


いや、いる、親方が..!


こういう時の親分や!


携帯の充電はないが親方に電話を入れる。


...


トゥルル...トゥルル...


三文字の機械音が鳴るだけ


この時間で親方が電話に出ないということは、街に向かっているのか


となるとしばらくは携帯を見られない。


親方に「帰る手立てがありません。迎えに来て

下さい、なんなら再雇用して下さい...」とメールを送った


外は黒く包まれ、気温が下がりお腹は空いてきた


コンビ二で軽いお菓子を買って3台目のバスを待つ。


外は寒いのでコンビ二の中で待たせてもらおう


レジのおばさんとよく目が合うけど、喋れないので

にこっとだけ笑って、ひたすらバスを待ち続けてる。


コンビ二の中で待っていて、1時間を過ぎた頃


おばさんが話しかけてくれた。Are you okay? と

僕はbus bus と二回連呼してバスを待ってることを伝える。


するとおばさんは顔をしかめながらもレジへ戻っていった


ついにやっと、3時間の時間が経った。

3度目、今日最後のバスに乗るべくバス停へ向かう。


今の成績は二打席連続三振


ここで特大ホームランを打ち出せばI am okayだ。


バスはおよそ5分から10分遅れてくるので


現在時刻、18時35分


ちょうどいい時間にバス停に着いた。


外はだいぶ暗いが目を凝らしてまたバスを探す


が...なかなか来ない。通り過ぎるバス自体も少ない


時計を見ると18時50分


さらに少し待ち、いよいよ19時になってしまった


ここまでバスが遅いことなんて今まで無い。


嫌な予感が胸をよぎる。


まさか...


定刻通りにバスがきた...?


思い返せば18時30分にコンビニを出た時、

1台のバスを見た気がする。


あれがintercity(インターシティ)のバスだったのだ


僕は既に通り過ぎたバスをひたすら待ち続けていた。


なぜおれはあんなムダな時間を...


胸のランプはとうとう消灯してしまった

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