初めての告白

親方は特別に驚いた表情はしなかった。ただの質問するように、いつものように聞き返した


「ん、いきなりどうしたんじゃ?」


誰も傷つけない言い訳をもう考えてあった。


「色々と理由はあるんですけど...」


僕は言い訳ではなく良い訳を話す。


「まず、廃墟が怖いです。

壁のdying message(ダイニング(死の)メッセージ)が恐すぎる。

このままでは僕のliving message(リビング(生の)メッセージ)を刻み...」


「それだけの理由か!!」


ボクのボケをスルーして、警察に捕まった。

と言って怒られた時と同じくらいの声量でツッコまれた。


「それだけシリアスなんです!!」


「この仕事が終わったら、新しい家に移動する

それなら問題ないじゃろ。全く、何を言いだすと思えば...」


「え、そうなの!新しい家住めるの!?」


それなら、悪くもない...なんてちょっと思ったけど少し考えたら分かる。


「でも親方その家、また廃墟なんでしょ?」


「そうじゃ」


満面の笑みだった。


今回の「廃墟」というセリフにツッコミはない。


それじゃ根本的解説にならないじゃん!


「もちろん、それだけではないですよ。親方」


プロローグを終え、本編を始める。


「海外に来た理由は、大学に軟禁されている状況から現実逃避したい

英語を話せるようになりたいからでした。でもここにいたら後者は満たされません。」


僕の言い訳を親方は黙ったまま聞いている。


「ここの生活は楽しい。しかもお金かからないんでお金作れる

でも、人生経験において良いものは作れるのか?と言われたらそれは難しいと考えます。」


親方は黙ったまま聴いてくれている。


「それに警察沙汰になったこの町で住んでいくのは恐いです。

ナイフ持ってた奴らにいつ逆恨みされるかとか、英語を話せないままでいるのも嫌で

この警察沙汰が新しい行動をするきっかけになったと考えました。」


一呼吸、おいて言う。


「なので親方、仕事を辞めさせてください」


親方は僕が言いたいことを全部聞いてくれてから閉ざしてた口を開いた。


「本当に辞めたいのか?」


「本当に辞めたいです。」


「ここでの生活はお米は儂が買ってきておるから食べ物に困らん。

儂は日本人じゃ。コミュニケーションも困らん。」


親方は続けて言う


「お主の想像以上に海外での生活は辛いぞ。大丈夫か?」


覚悟は固まっている。僕は迷わず「覚悟しています。」と言った


「そうか...」


少しの沈黙が流れた。


「分かった。覚悟があるなら何も言わん。儂からも1つお願いをしてもええか?」


「な、なんでしょうか?」


手汗が出て、心拍数が少し高くなる。


「今夜は一緒にビールをどうじゃ?やから今からつまみを買いに行きたいんだが行かんか?」


親方からの要求は僕の要求と比べて、優しい、優しすぎるものだった。


「はい、行きます。親方、ごめんなさい...」


親方の優しさに胸から暖かいものを感じる。


「かっかっかっ、行くのに謝るのはおかしいやつじゃ」


僕らはまた、親方の車に乗った。

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