部屋?いいえ、結構です。

「なあ美裂、確かに俺はお前の事が好きだ。…まあ美裂が何と思うかは自由だが…」

そう言ってから、叶都は腕を上げ…自分と美裂繋ぐ手錠を改めて見て言った。

「こりゃ流石にやり過ぎじゃねぇ?…いややり過ぎどころじゃない。回りの人に例外無く二度見されてるし。」

「…じゃあ、辞める?」

「ああ。(即答)」

「うぅ~…(泣)」

「演技下手か。まあ下手な方が有り難いけど。」

恐らくメガホンを使っても普通の人は聞こえない音量で美裂が話しているため、端から見れば叶都の独り言のように聞こえ…る。

「よっと。」

「…あ。」

美裂が嘘泣きをしている間に、叶都が手錠の鍵を取り、解いた。

「…盗られちゃった。」

「ンなもん無くても良いだろが。まさか束縛系だったりしないよな?」

「…私はそんなつもり無いけどね。ただずっと傍に居たいだけ…」

「普通は喜ぶ所だが美裂が言うと何か危なく聞こえる不思議。」

「危なくなんて無いから安心して…フフフっ。」

「その『フフフっ』で怖くなってンの気付かんのかおのれは。」

そんな事を言いながら、二人は家に着いた。

「なあ、ここって美裂の家だよな?」

「うん。」

「なんで俺を連れて来たんだ?」

顔を少し赤らめて、美裂がボソッと答えた。

「…ぅ。」

「ふ~ん…

え?」

いつもより更に小さい声だが、叶都には聞こえたらしい。叶都、思考停止。

「…ほら…早く入って。」

「もう良いやお邪魔します(思考放棄)」

美裂家は普通の家だった。

「他人の家入るの久しぶりだわ。」

「そう…?誰の家に入ったことあるの?」

「言うかよそんなん。」

「…じゃ、私の部屋に案内するね…」

「何だ?無視か?無視なんだな?」

「ここ。私の部屋。」


美裂の部屋は、他人の家に入る事が久しぶり

な叶都でも分かる位、よく言えば個性的で、悪く言えば…

「悪さするタイプのストーカーの部屋じゃん」

「ひっど!?」

聞きようによっては…と言うかあからさまな悪口に、珍しく美裂が叫んだ。といっても、その声すら普通の人なら聞き取れるかどうか解らない位の小ささだが。


「いやいやいや…酷くはねえだろ。と言うか誰だってこんな反応するわ。」

そう言って叶都が見上げた天井には、所狭しと叶都の写真が張ってあった。

…流石に引く。

まだ、写真がアイドルとかゲームの推しとかなら叶都も引きはしなかっただろう。

いや、ゲームキャラならむしろ尊敬すら覚えただろう。

だがその写真が自分だったら?

十中八九この反応だろうが。


「もうこれ逮捕できるだろ。」

主に盗撮で。

「んぇ…?」

「自分の凶悪さ理解できない系チート能力者かお前は。」

「今までで一番長いツッコミされた!?」

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