二人の絆

今日は雲ひとつない快晴だった。


私とさくらは海岸についた。

初めてきたが、大阪湾を見渡すことができて、海が太陽に光反射して、すごく綺麗に輝いていた。


さくら「海だー!綺麗だね!あれが明石海峡大橋じゃない?」

私「すげー!本当に見えるんやな!しかも関西空港も見えるやん!」


左側には関西空港が見え、その隣にうっすらと明石海峡大橋が見えた。

横に長く伸びた防波堤には、釣りをしている人が二人いるだけでほとんど人がいない。

今日は平日だから、一般の大人の人は仕事をしていて、釣りをしたり、遊びに来ている人がいないのだろう。



さくら「海を見てると須磨の海を思い出すな。よく遊びに行ったっけ。」

私「海が近いっていいな。泳ぐのうまいもんね!須磨に住んでる人はみんな泳ぐのうまいの?」

さくら「そんなことないよ!私は水泳教室に行ってたから、泳げるようになっただけだから。」

私「そうなんだ。ぼくカナヅチやから、全く泳げんよ。」

さくら「海行って泳げないの寂しいね。溺れそうになったら、わたしが助けないと!」


さくらは泳げない私を小馬鹿にして笑った。

さくらは水泳の授業になると、誰よりも早く一番でゴールしていた。

今も水泳の練習していたら、学校代表で大会にも出れたと思う。




さくら「こんないいところ知ってるなんてじゅんくんすごいね!」

私「兄が釣りするからたまたまこの場所を聞いただけや。」


私の次男は釣りが好きで、よく友達や父親と釣りに行くことがあった。

私は釣りの良さが全くわからなかったし、とにかく朝が早くて起きれなかったから

ついていくこともなかった。

いつもどこまで行っているのか、父親に聞いて見たら、この場所を教えてくれた。

自転車でもそんなに遠くないと思ったから、さくらと一緒に行こうと決めた。





さくら「お兄さん、釣りするんだね。もう一人のお兄さんは何してるの?」

私「長男はラグビーをしてるよ。中学に入ってからやってて、朝6時前からもう学校に向かってるよ。」


私の長男は、小学校時代はブラスバンド部で練習して、全国で金賞を取るほどすごいところで練習していたけど、

何を思ったか、中学からラグビー部に入って、高校生に入ってからもラグビー一筋で、部活を楽しんでいた。

小学校から私立に行っていたせいか、朝に登校時間が被ったことがない。

身体中が筋肉の塊のようにムキムキだったからか、兄に逆らうようなことは一度もなかった。

ただスポーツができる兄を尊敬していたのは事実だ。




さくら「すごいお兄ちゃんだね!私もお兄ちゃんに会いたいな。」

私「お兄ちゃんと会ってないの?」


不意に兄について聞いてしまった。

家族のことは手紙の中でしか聞いたことがなく、直接聞くのは暗黙の了解で、聞いたことがなかった。

林間学校の時に兄の存在を知った。名門の学校に行き、名門のサッカークラブに入団している秀才だったことを思い出した。


さくら「お兄ちゃんとは会っていないよ。会いたいけど、お母さんはあんなんだし、お父さんとも会う機会がないし、今どうしているのかわからない。」

私「そうなんや…」


さくらのお兄さんは、5歳離れていたから、今頃は高校生1年生になる頃だ

さくらは、海の向こうの方まで目線を伸ばし、何かを探しているように目を細めていた。

あの方角はもしかしたら須磨の海岸の方を見ていたのかもしれない。

少し寂しそうな表情を見せていたけど、すぐに笑顔に戻った。



私「なぁ〜さくら、聞きたいことあるんだけど。」

さくら「なぁ〜に?」


さくらの少し寂しそうな表情を見て、

恋しい気持ちになって、ついに聞いてしまった。


さくらと出会ってもう3年になる。

出会った頃は小学2年生で、幼くただただ可哀想なさくらを見て、登下校や手紙のやりとりを始めた。

いつも一緒にいるうちに、さくら自身がどんどん強くて、気丈になっていく姿を見てきた。

私がさくらの為に何かをするんだと思って、接してきたけど、

徐々にさくらから私を支えてくれる場面が増えてきた。

そんなさくらに対して、友達以上の感情が芽生えてしまった。

そう、私は彼女に恋をしている。



私「さくらはサァ〜。ぼくのことどう思ってるの?」



手が微かに揺れていて、足の血が抜けていくのを感じた。

尋常じゃないほど緊張している。



さくらは真顔で私の目を見ている。そしてすぐに下を見て、私に背中を見せて、後ろに手を組みだした。

若干体を横に揺らしているのがわかる。

私は自分の緊張のあまり、さくらの一連の行動をただ見ているだけが限界だった。



さくら「わたしはじゅんくんのこと大切な人だと思ってるよ。」

さくらは私に背中を向けながら、話し始めた。


私「え・・・・・・・・大切って?」


さくら「大切っていうのはね。わたしが学校に転校して初めて出来た友達で、

わたしの家のことを初めて話した友達で、

毎日のように登下校してくれて、わたしがしんどいことを知って、手紙を書き合おうって言ってくれて、

今もわたしが悩んだり、悲しい時に手紙でいつも色々助けてくれる友達で。」






さくらはずっと背中に組んでいる手をクネクネ動かしながら、ずっと体を揺らしている。

そしてさくらは急にわたしの目の前まできた手を握りしめた。


わたしは急に手を握りしめて、目の前にさくらが来たことに、一気にドキドキが爆発しそうになった。

男なのに情けないと一瞬思った。








さくら「わたしの大好きな人だよ。」






太陽が赤く染まってきた。

もう夕方になっていたようだ。

真っ赤な光の筋は、うっすらと広がってきた雲の隙間を差し、幻想的な鮮やかな海を彩っていた。

無数に広がる光の筋が、さくらの横顔にあたり、頬を少し赤く染めていた。

黒髪は赤く染まった光を浴び、少し染めたかのように若干赤くなり、外国人のように見えた。

その表情は満面の笑みを浮かべ、笑っているのに、少し泣いているようだった。


なんで泣いてるのかなって思った。

おそらく涙が自然と出るほど、感情が高ぶり、握った手が震えるほど、緊張して、

身体が震えるほど、嬉しかったんだと私は思ったんだ。




この日から私とさくらは友達以上の関係になっていた。

中学生以上の男女の関係だったら、カップルとか付き合ってると

シンプルな表現になるのかもしれない。

けど私たちはシンプルな表現で例えられない絆で結ばれたような気がした。


私の人生で一番記憶に残っている最高の瞬間だった。

私とさくらの関係は、この日が始まりに過ぎなかった。


人生って一本道では進まないいろんな枝分けが必ず起きる。

それでも私はさくらとともに生きていける夢をずっと描いてた。

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