letter over ~一期一会~

@chrisbenjamin

序章

手紙~回顧~

大阪市内に住之江区というところがある。

大阪の中でも下町と呼ばれるにふさわしい場所だ。

今はホームセンターか大きなショッピングセンターがたくさんでき、交通整備もされて、住みやすい街並みになっているが、平成の始まったころはまだ駄菓子屋や銭湯があって、一階建ての木造建築が並ぶ『映画・三丁目の夕日』に出てきそうな昔ながらの町並みがいくつかあった。


住之江区の近くには、ホームレスが多い西成区があり、いまでは見かけなくなったが、金髪で学ランの前ボタンを2つ開けて、自転車の後ろに女の子を乗せたかっこいいつもりでいるヤンキーがたくさんいて、治安がいい場所ではない。


私も小学生の時に、信号待ちをしていたら、女の子を後ろに乗せたヤンキーが私に絡んできた。


「おい、なにみてんねん!」

「ちょっとかわいそうやん!やめたりぃや!」


昭和時代の映画にありそうなシーンだが、リアルに起きていた。

私はビクビクしながら、下を向いた。

ヤンキーを見ると、やはり恐くて、ただじっと硬直したまま立っているだけだった。

絡むことがかっこいいと思っているんだろう。

このような輩は日常茶飯事によく起きた。

がらの悪い地域ではあったが、友人には恵まれていた。


幼少期は泣き虫だった。

できないこと、嫌いなことがあれば、ワンワン泣いた。

野菜のキャベツが嫌いで、幼稚園の給食に出てくると、食べれなくてよく泣いた。

泣くだけ泣いて、結局食べなかった。

「がまんして食べなさい」

よく先生に怒られた。


私には兄が2人いる。つまり私は三男坊である。

三男坊はわがままで、甘えん坊というが、

まさに典型的に三男坊だったと私は思う。


ある日、家でファミコンをしていた。

任天堂が開発した革命的なゲーム機で、

マリオブラザーズ3をしていたら、次男が学校から帰ってきて、

「ゲーム交代しろ」と兄に言われた。

「いやだぁ」と私は言っても、もちろん兄弟あるあるとして、兄に逆らえる訳がなく、

無理やり電源を消されて、ファミコンを取り上げられた。

泣き虫のおれは泣き叫び、抵抗する。

あまりにうるさくて、母さんによく怒られたのを覚えている。

もちろん兄も怒られたけど。


自分の過去を振り返るのは恥ずかしいものだ。

特にかっこいいところもなく、ヤンキーに絡まれても抵抗できない臆病者で、よく泣いてしまう子供だったが、友達にはいつも優しいとか、楽しいとかよく言われた。

いくら過去を振りかえっても、なぜそのように言われたのかわからなかったが、友達と遊ぶときは、私から電話で友達をよく誘ったのを覚えている。


小学生のころ、二年毎にクラス替えがあった。

クラスが代わる度にそのクラスの友達とはほとんど一緒に遊んだ。

大勢で遊ぶときもあれば、二人だけで遊ぶこともあった。

ほとんど毎日外の公園や友達の家で、あそんでいたのを覚えている。

純粋に楽しかったのもあるが、嫌な顔せず、門限の5時までずっと一緒の人と遊んでいた。

おれと遊んだことのない人はいないと思う。

人を選んだり、偏見を持ったことがない。

すごいことやかっこいいこと、楽しいことを口にして、素直に言っていたと思う。


だけど、ダメなことはダメと言った記憶がある。

だから私の純粋さに周りの友達から好かれ、優しいという子供ながらのリスペクトでみんなが言ってくれたのだと思う。

臆病ではあるが、素直な子供だったのだろう。


だからこそ思う。

大人になるとなんで曲がった心を持ってしまうのだろう。

なんで否定的な考えを持ってしまうのだろう。

なんで純粋な気持ちで人はいれないのだろう。


昔の自分の心に戻りたいと切に願いたい。

こんな今の自分が嫌になる。


大阪の心斎橋は今日もきらびやかなネオンで彩られていた。

ちょうどハロウィーンの時期辺りからだろうか、青や赤、黄色など多くの色で御堂筋が輝いている。

このネオンは、本町からなんばにある百貨店、高島屋の前まで続く。


『あぁ~もうすぐ冬やなぁ』


毎年のことだが、いつも季節変わりを感じれる大阪のシチュエーションだ。

だが、このネオンが始まったのはここ十数年であって、それまでは、いや今もそうだが、御堂筋にはいちょうの木が並び、木から落ちた銀杏の香りが、秋や冬を感じさせてくれる。

大阪と言えば、道頓堀や通天閣が印象づくが、黄色に輝くいちょうの木や銀杏の香りは、大阪を四季を感じる風物である。


仕事帰りにネオンの輝きに心を打たれながら、赤色電車マークの地下鉄に乗り、家に帰った。


今は大阪市西区に住んでいる。

ここはベッドタウンとなっており、地価がつり上げっていくほど人気の地域だ。

京セラドームと言えば、みんなもわかるのでないか。

ここは木津川と尻無川に囲まれていて、ショッピングモールも出来て、ベッドタウンとしては最適な場所だ。

ちなみにここ西区には木津川を隔てて、西側に九条と呼ばれる場所があり、大阪で有名な天神橋商店街に匹敵するほど長い商店街があり、いまでも玩具屋や床屋さん、八百屋さんや個人書店など昔ながらの風景が残っている下町だ。


一方、木津川の東側には高級車を扱うディーラーや40階建て以上のタワーマンションなど、富裕層が好む整った街並みが連なっている。

まさに心斎橋も歩きや自転車にで行ける距離だ。東京なら渋谷から原宿、福岡なら中洲から天神、名古屋なら栄から伏見、

他にも例えれるが、ほぼ一駅ぐらいの距離だと伝えたい。


最寄りの駅から降り、帰り道のセブンイレブンによった。

毎週月曜日は少年ジャンプを見るのが習慣になっている。


漫画を読みはじめたきっかけは、昔連載していたBLEACHを見たのがきっかけだ。

たまたま高校の学校帰りに、ジャンプを読んでみようと雑誌を取った。

そこでBLEACHを見てみると、尸魂界編で主人公の黒崎一護が、死神の隊長たちに捕まった朽木ルキアを助けるシーンだった。

具体的なストーリーは伝えないが、ルキアを助けるシーンがカッコよくて、一気に漫画の世界に入り込んでしまった。


漫画を読んで、ドリンクとお菓子を買い、歩いて5分ほどでマンションの玄関についた。


上記でタワーマンションの話をしたが、私はそのようないいところではなく、築30年の何回塗装工事をしたのわからない見た目きれい目のマンションに住んでいる。

ちなみに1LDKだが、炊事場が狭く、シャワーの出が悪いのが難点だが、それ以外は四季問わず、住みやすい室温を保たれ、部屋もそこそこ広いので、一人で暮らすには問題ない。


玄関に入り、ずらっと並ぶ郵便ポストから自分の部屋のポストを見つけ、暗証番号に合わせ、鍵を回した。

【新築3500万円…】【新商品発売日!ピザ…】

本当にチラシが多い。

6枚もあって、チラシを配る業者は本当に意味があると思っているのか。

『他のところに広告費使えばいいのに』

と思いながら、チラシの中から白い横型の手紙が出てきた。

なにか通知の手紙かなと思ったが、

手書きだったので、個人宛の手紙だとわかった。

『今時手紙が来るとかすごいな』と思った。


わかると思うが、今まさに現代の時を画いている。

つまり、連絡手段はSNSが主流であり、だれもが携帯を持っているので、手紙や葉書を連絡手段に使うなど皆無に等しい。

だからこそ、手紙を送られてきたことが不思議で仕方なかった。


誰からの手紙なのだろうか。

白い横型の手紙の裏を見て、私は心から驚きと懐疑心の狭間で、身動きができなくなった。

だんだん胸が浮くような感覚に陥り、血の気が抜けたように、手が冷たくなり、震えた。

息が若干荒くなった。


手紙の裏に住所と小さい字で名前が書かれていた。

【大阪市住之江区………咲良】


私が一生忘れることのない、そして恩人であり、2度と出会うことのない



恋した人の名前だった。

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